「関心領域」:マイ・スイート・ホーム、お隣りさんは気にしない
監督:ジョナサン・グレイザー
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
米国・イギリス・ポーランド2023年
日本でも公開前から賛否両論・議論沸騰・毀誉褒貶で(一部が)かまびすしかった本作である。そのせいか「収容所もの」としては公開規模が大きく、ポップコーンとドリンク持って鑑賞する人たちも結構いた(一説によるとホラー映画と間違えた、とか?)。
こぎれいな邸宅と丹精込めた平和な庭園。見る前の予想だとそこに遠くから微かに音が聞こえてくる--みたいな設定かと思ったら全く違った。それどころか不審な音のド真ん中に住居があってガンガン響いて来るじゃないですか~(>O<)
職住接近も極まれり、ヘス所長宅からユダヤ人収容所まで通勤時間10秒である。しかし夫人はそんなことも気にせず美しい庭を造り、当然の権利として快適ライフを楽しんでいるのだった。
「何も起こらない」という意見があったがそんなことはないだろう。ずーっと何かが起こり続けているという話である。
そんな生活を楽しんでいるのは夫人だけだろうか。夫の所長も変な部分が徐々にチラ見せされてくる。長男が「歯」を眺めているところも恐ろしい。
赤ん坊は泣きっぱなし、子守り役はノイローゼ、夫人の母親が遊びに来たもののすぐ帰ってしまう。庭土には怪しい白い粉をまいている。なるほどこれはホラーに違いない💦
しかし告白せねばなるまい。「ルドルフ・ヘス」って二人いた!とは知りませんでしたっ。最初ヒトラーの側近かと思ったら別人で、正しくは綴りも発音も違うらしい。
密かにリンゴを作業地に置いていくレジスタンスの少女や、所長から異動になった先のベルリン生活も描かれるが、「家」を離れた場面は総じて冗長に思える。
部分的にあざとい、わざとらしい、これ見よがしな表現があり、これは各人の好みによってそれをどう評価するかは分かれるだろう。例えば終わり近くに突然挿入される(掃除している)場面。これは必要なのか。
また、階段でゲーゲーやってるから罪の意識を感じているというのも無理があるのでは。
しかし、賛否どちらでも色々と考えてしまうのは確かだ。
なお、アカデミー賞5部門ノミネートで国際映画賞と音響賞を獲得。イスラエル✖ハマスの戦闘継続する中、授賞した際にユダヤ人である監督が何をスピーチするのか一部注目を集めていた。イスラエルだけでなくガザの被害者にも言及したことで、結果として他のユダヤ系映画人から非難を受けたもよう。(『サウルの息子』のラースロー監督とか)
でも全世界に放送されるのが分かっているのだから相当に勇気がいったはずである。なおスピーチの最後に読み上げた女性の名前は、作中のリンゴ少女だったらしい。
なんの躊躇もなく庭づくりにいそしむ夫人役のザンドラ・ヒュラーが印象的。彼女は『落下の解剖学』でオスカーにノミネートされていてにわかに「ザンドラ祭り」となった。
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