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2024年9月13日 (金)

「人間の境界」:観客の限界

監督:アグニェシュカ・ホランド
出演:ジャラル・アルタウィル
ポーランド・フランス・チェコ・ベルギー2023年

しばらく前にCS放送のニュースで、難民をトルコからベラルーシまで航空機に乗せて連れていき、わざと国境からポーランドに不法に送り込む。国境警備兵は彼らを探して捕らえる。しかし周辺の住民の一人は「難民が来たら助ける」と答えていた。
その時はそんなこともあるのかと流し見をしていたのだが、これはまさにその問題を描いた映画だった。

ベラルーシ側は混乱と嫌がらせのために国境の鉄条網を潜らせて難民を送り込む。ポーランドは彼らを発見したらまた鉄条網を通して戻してしまう。でまたベラルーシが……と、国境沿いでそんな人間のキャッチボール(「人間ピンポン」というらしい)を何回も繰り返すのだ(>O<)
その反復の間に、トランクを押してこぎれいな旅行者然とした彼らは持ち物や衣服をどんどん失っていく。あまりに容赦なく恐ろしい場面の連続で見ているだけでも生きた心地がしない。特に妊娠した女性が動けなくなった件りはあまりにひどくて大ショック⚡ 言葉を失うほどだった。

そのような状況をポーランド側の警備兵、支援活動家、住民の女性、そして難民の視点から描いている。それぞれに様々な立場があり、支援者にしても「順法派」と「過激派」がいるし、住民の多くは「関わらず」の立場である。難民も国や民族・立場によって異なる。
アフガニスタンから来た中年女性が主要な人物の一人になっていて、英語を話せるのだがここでは英語は共通語として機能しない。彼女が最後までメガネにこだわり探し回る姿は他人事ではなくてドキドキした。私もド近眼+乱視+老眼なのでメガネがなかったら生きていけなーい(>O<)ギャー
そんな中でも良心ある人々がいることが救いである。

緊張感がマックスのままなので見てるだけでくたびれ果てた。トシですのう(^_^メ) ウクライナ難民がらみのラストは皮肉がキツかった。
ホランド監督の求心力ある演出には感服した。本当はドキュメンタリーで撮りたかったらしいが、政府の妨害などあり無理だったらしい。代わりに実際の当事者を出演させて24日間で撮影したとか💨 めげずに作ったのはすごい。
さらに完成後も政府は上映を阻もうとしたとのこと。しかしそれをはねのけ年間第2位のヒットとなった。

今年最大の問題作の一つには違いない。
一方、このような状況で自分がもし住民の一人だったら何ができるだろうかなどと考えてしまった。ラスト近くの小さな町で、お母さんに連れられた子どもがやったような事さえできる自信がない……(~_~)

ついでに、捕まった活動家の女性が拘置所に入れられる時に全裸&全穴検査💥をされて、ポーランド警察はひどいという意見を散見したが、日本の警察でも昔からやってて少し前に緩和されたのがまた最近復活したらしいですぞ。

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