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2024年12月16日 (月)

「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」:クリスマスに苦しみ増す人々

241216 監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ
米国2023年

内容は明らかにクリスマス・ストーリー。しかし日本ではなぜか初夏の時期に公開……もう少し何とかならなかったのか。一応、アカデミー賞5部門候補で助演女優賞を取ったんだからさ。

舞台は1970年ボストンの寄宿制の名門高校だ。12月のクリスマス休暇ともなれば皆家に帰るはずが、訳あり&成り行きで教師・学生・女性料理長各1名ずつがガランとした学校にとどまることになる。

イヤミと毒舌で教室に嵐を巻き起こす教師は、頭の中が全て西洋古代史だけで組み立てられている専門オタクのように融通が利かない。しかし同時に権威には絶対に妥協せず。一方、成績優秀でも素行不良の学生は衝突するしかない。共通項は嫌われ者か(;^_^A
それを脇から見ている料理長はなぜ学校に留まるのか。
学生の屈折した境遇、教師の驚きの過去、料理長の悲しみがやがて明らかになっていく。

基本的には人情味あふれるクリスマス・ストーリーといえる。しかも冒頭わざわざ古めかしいオープニングタイトルに画面や音にノイズを入れて、70年代映画を擬古的になぞっている。機内上映で予備知識なしに見て昔の作品だと思い込んだ人がいたのもおかしくはない。作中の挿入歌もそれっぽい選曲だ。
当時の作品にあまり思い入れのない私のような人間は、そこまでやる必要があるのか?などと思ったりして。それと障害や病気の扱いはどうよ🆖という部分があり、そこまで70年代並みにしなくてもいいのでは。

個人的には、いい話過ぎて私には身に余る。感動的だけどねーとしか言えない。
でも登場人物たちがうかつに変化しない点は好感だった。ただ教師の行く末は大いに不安である(~_~;)

P・ジアマッティの若い頃から学内に暮らして全人生が染みついているようなベテラン教師の演技から目を離せなかった。
学生役のドミニク・セッサはほぼ演技経験なしとは信じられない(!o!) よくぞ見つけてきたものよ。ロケした学校でオーディションしたって本当か。確かにルックスといい存在感といい、冒頭に出てくる他の学生役の若い男優たちとはかなり異なっている。
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフはこの年の助演女優賞を総なめした価値はあり。

A・ペイン監督作は初めて見た。手堅い演出だが今回の脚本は書いていない(過去に2回オスカーの脚本賞を取っているのだけど)。
邦題のサブタイトルは野暮ったいのでなんとかしてほしかった。

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