「エイレングラフ弁護士の事件簿」
著者:ローレンス・ブロック(田村義進 訳)
文春文庫2024年
弁護士の看板を掲げながら法廷には立ったことない男……いや正確に言えば、その男が扱うといつも裁判が開かれる前に事件はカタが付き依頼人が無罪放免になってしまうのである。
そんな事件が12件、約40年に渡りその「事件簿」に書き足されてきた。
中には自分が犯人なのを認めている者にさえ彼は「あなたは無罪です」と断言し、「無罪にならなかったら依頼料は不要」とさえ告げて、いつの間にか釈放に至ってしまうのだ。摩訶不思議とはこのことか。
しかし彼は金の取り立てには厳しい。いわゆる成功報酬というヤツである。彼の手腕を認めず金額の大きさゆえケチろうとするならば、また牢獄に逆戻りしてもおかしくない。
詩を愛し、頭のてっぺんからつま先まで徹底した洒落者のこの男は、カネはかかるが最強(恐?)弁護士として認めなければなるまい。
昨年末の各種ミステリベストテンにランクされた本書、ブロックの短編の名手ぶりがいかんなく発揮されている一冊だ。
| 固定リンク | 1