« 「大塚直哉レクチャー・コンサート 鍵盤の上で踊るバッハ!?」:舞曲演奏は体力勝負か | トップページ | 聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年3月編 »

2025年3月 1日 (土)

「ソウルの春」:勝つのはどちらだ?暁の死闘

250228 監督:キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン
韓国2023年

昨年12月の韓国大統領により戒厳令が出されるという事態の際に、盛んに引き合いに出されて広く知られるようになった本作。2024年に見た映画の中でも上位に来る面白さである。
タイトルから社会派政治劇なのかと思ってたら、ハードな軍事サスペンスだった。史実に基づいているが、登場する軍人・政治家たちの名前は微妙に変えている(が、韓国史を知っている人ならだれでもわかりそう)。見てて「本当にこんなことあったのか💦」と冷や汗が出てくるほどだ。

時は1976年朴大統領暗殺から一か月半、国民の民主化への期待が高まる中で公然と軍事クーデターが行なわれる。そして前線を離れた軍がソウルへ進攻開始。策謀を練り指揮をしたのはチョン・ドゥグァン司令官(モデルは全斗煥)で、背景には軍部内の長年に渡るネチネチとした派閥争いがあった。

迎え撃つは首都警備司令官をはじめとする鎮圧軍(対立する派閥)だがどうもタテヨコの連携共にうまくいかず、無能かつ日和見な将官が多く後手後手に回ってしまう。
もっとも反乱軍側も状況を見て不利になれば逃げだそうとするいい加減なヤツが多数。それをチョン・ドゥグァンがなんとか丸め込んだり……と結束が固いわけではない。

このような状態で戦況は時間ごとにオセロの駒のようにパタパタと何度もひっくり返り、先が読めずものすごい迫力で見ていて手に汗を握ってしまう。終盤はドキドキした。これが一日(一晩)の出来事なんだから驚きだ。
「史実に基づくフィクション」とはなっているが、監督は当時ソウルにいたそうで騒乱の一部を(目撃ではなく)音を聞いたそうだ。製作にあたっては証言や記録を集めたとのことである。

演出は盛り上げ方がうまい。142分の長さも気にならなかった。テンションの高さと熱い力業に感服である。
チョン司令官役のファン・ジョンミンの悪役ぶりがあまりにお見事だった。強面とハッタリといい加減さが絶妙にブレンドされている。特にトイレでのダンスがなんとも言い難い気分にさせてくれる。
こういう時は真っ当な正義のヒーロー役(チョン・ウソン)の方がいささか分が悪くなっちやうのは仕方がない。

銃撃戦にまで至っても結局新聞はほとんど報じず、市民は何が起こったか知らぬままに終わったそうだ。
客観的に見ればドンパチはあれど、要するに軍の内部抗争である。しかし、そこで権力を握った者が独裁者として国を左右する。そして〈ソウルの春〉も終了となるのだった(T^T)

| |

« 「大塚直哉レクチャー・コンサート 鍵盤の上で踊るバッハ!?」:舞曲演奏は体力勝負か | トップページ | 聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年3月編 »