« 2025年2月 | トップページ | 2025年4月 »

2025年3月

2025年3月30日 (日)

「リコーダーコンチェルトの楽しみ」:教会にご注意

250330 古楽器によるアンサンブル
演奏:柿原よりこほか
会場:日本ホーリネス教団東京中央教会
2025年3月20日

リコーダー奏者の柿原よりこを中心としたアンサンブル公演を聞きに行った。肝心の柿原氏についてはこれまで演奏を聞いたことがない(多分)のだけど、若松夏美など6人の豪華共演陣に引き寄せられ行ってしまった。

全6曲中4曲がリコーダーのための協奏曲で、合間に残り弦楽によるソナタ2曲を挟むという構成だった。
前半はバベル、ノードというよく知らない作曲家(二人とも1690年生まれ)の協奏曲だった。前者はリコーダーが明るく飛翔するような印象で、後者はややプレ古典派ぽかった。
後半は大御所登場。ヴィヴァルディはアルトリコーダーのための曲で、自作オペラのアリアを使った楽章もあるだけに劇的。ラストはブリュッヘンがバッハの幾つかの作品から編曲したというものだった。こちらも明朗な音の広がりを感じさせた。

リコーダー抜きのクープラン「スルタンの妃」、ヘンデルのトリオ・ソナタは録音は幾つも出ていて耳にしているが実演では聞く機会が結構少なくて、ナマで聞けて嬉しかった。
「スルタン」はかなり重たさを感じる演奏だったが、一方ヘンデルはチェロ(島根朋史、この日は二刀流だった)が躍動していた。
2曲とも名手たちの弦の響きに魅せられた。

会場は前回、行くのに迷って変なオヂサンに遭遇したので細心の注意を払って無事に到着できた。休憩時間に別の教会に行っちゃったと話している人がいて、教会が幾つもあるから要注意である。
壇上が狭くて7人乗ったらギチギチ状態に見えた。チェンバロあるならせいぜい5人が限界ですかね。
上尾直毅は開場から開演直前までずーっとチェンバロを調律し、休憩時間の大半も調律に費やしていた。お疲れさんです👍


新大久保駅経由で行ったのだが、階段や改札が混雑のため人でギュウ詰めになっていた。いつ事故になってもおかしくないくらい。コワッ(~O~;) 休日の新大久保なぞ近寄らないのが吉であろう。

| |

2025年3月26日 (水)

時代と政治と音楽ドキュメンタリー「Two Trains Runnin'」「ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?」

250324a ★「Two Trains Runnin'」
監督:サム・ポラード
米国2016年

ぴあフィルムフェスティバルにて鑑賞。P・バラカンの選定作品である。
ブルース(ズ)はについてはほとんど知識がないけど、極めて興味深いドキュメンタリーだった。

1964年6月のある日、ミシシッピーの同じ地区をたまたま3組の若者3人グループがおのおの車で移動していた。
そのうちの二組はブルース・オタクの若者たちだ。彼らは全く別々に数十年前に録音を残してそのまま消えてしまったミュージシャンの消息を求めていた。ニューヨークからのグループはサン・ハウスを、サンフランシスコからの一行はスキップ・ジェームスを、偶然にも同じ時期に現地で聞いて回って探そうとしていたのである。

残りの一組は公民権運動に参加・活動していた学生たちだ。州内で黒人の有権者登録を促進すために、何百人も派遣されていたらしい。この3人はそのまま行方不明となり、埋められた遺体で発見。映画『ミシシッピー・バーニング』のモデルとなった事件で犠牲となった。

全くもって運命の不思議さよ。KKK団行き交う険悪な土地で最悪の時期である。社会情勢なぞ全く気にかけず、ただブルース熱愛の一心でウロウロしていたのんきな音楽オタクたちも、一歩誤れば彼らにも何があったか分からない。しかし無事に幻のミュージシャンを発見し、新たに世間に紹介し復活の手助けをすることができたのだった。
それも二組が行方を探り当てた日と、学生たちが殺害された日が同じというのは驚き以外の何ものでもない。

基本的にこの三者の関係者にそれぞれインタビューを行いつつ進んでいくが、存命の当事者が少ないせいかインタビュー対象も限られアニメで場面を再現する部分もあった。しかし形は異なるとはいえ、その時代に生きた若者たちの夢と希望が同じ時、同じ地に交錯する。時代、政治、音楽が絡み合う瞬間を確実にとらえていた。

それにしてもサン・ハウスの演奏場面は強烈の一言だ。監督は黒人の歴史ドキュメンタリーを撮ってる人らしい。


250324b ★「ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?」
監督:ジョン・シャインフェルド
米国2023年

BS&Tについては最初はアル・クーパーがいたとか、ヒット曲数曲を知っている程度。ブラス・ロックの代表バンドとしてチェイスと並んで人気があったけど、その後どうなったのかは不明という印象だった。(チェイスについては飛行機事故にあった記事をよく覚えている)

彼らが1970年に米国のロックバンドとして初めて共産圏でコンサートをやったとは知らなかった。米国国務省主催という「お仕着せ」なツァーをなぜやる羽目になったのか--それにはのっびきならぬ理由があったという。
コンサートの反応は様々で、国によってかなり違うのが面白い。そしてツァーを回るうちに、当時ある意味理想化されていた鉄のカーテンの向こう側で、民衆弾圧が起こっている実情を目撃してしまう。

帰国したバンドを左右双方向から非難と攻撃の嵐が襲う。左からは「体制側に転んだ」、右からは「下品な音楽」。記録されていた公演の映像は没収の憂き目になる。政治と時代の荒波はミュージシャンと言えど放っておいてはくれず。その後彼らの活動はパッとしないものになってしまった。
残っている映像からはライブの迫力と当時の空気が伝わってくる。カウンターカルチャーたるロックと社会の関係を新たな切り口でみせたドキュメンタリーだった。

しかしメンバー9人(さらに管楽器も4人)という大所帯ゆえ、この一件だけでバンドがガタガタしたと結論付けるのは強引ではないか。きっと他にも色々あったに違いない(あくまで推測)。
BS&Tが現在半ば忘れられているのは、ウッドストックに出たのに映像が残されていないため、という説が面白かった。映像がないと後々の記憶に残らない。当時ギャラが出ない可能性があったので撮影しなかったそうな。そして同様に好機を逃したバンドは幾つもあったということである。

取りあえず家に帰ってローラ・ニーロの「アンド・ホエン・アイ・ダイ」(彼らに取り上げられている)を聞きましたよ。

| |

2025年3月23日 (日)

つらい職場特集・産科病棟編「助産師たちの夜が明ける」

250323 監督:レア・フェネール
出演:カディジャ・クヤテ
フランス2023年

最初に予告を見た時てっきりドキュメンタリーと思ったのだがフィクションである。舞台はフランスの産科病棟、二人の新人助産師が過酷な現場にやってくる。医療ドラマ定番のオープニングである。

一人は自信なくウロウロ、もう一人はやる気満々で積極的に担当を引き受ける。彼女たちのその後の明暗が後半の展開の中心となる。機器の故障に慢性人手不足、様々な立場の妊婦--燃え尽き症候群にならない方が不思議な状況だ。
しかも待遇は良くない。こういう点ではフランスも日本も変わらないようで💢
出産シーンがやたら迫力あると思ったら、なんと実際の出産を許可を得て撮影したそうな。見終わった後はズッシリ来た。

ただ描かれた色々な問題事例が投げっぱなしのまま終わったのは気になった。
あと、青い医療着を着て「見学させてくれ」と頼み回る男がどういう立場なのか最後まで分からなかった。(外国の研修者かな?)

全くテーマに関係ない話だが、二人が借りてる(所有している?)アパートに予期せぬ客が来たので「私の部屋を使って。私は浴室で寝る」と言う場面があった。
その時「フランスの浴室、どんだけ広いんだ(?_?)」と思ってしまった。まあ日本の「浴室」と違うのだろうけど……。

| |

2025年3月19日 (水)

つらい職場特集・スポーツ界編「ボストン1947」

250319 監督:カン・ジェギュ
出演:ハ・ジョンウ
韓国2023年

1936年のベルリン五輪マラソン競技で不本意ながら日本国籍の「孫基禎」として金メダルを獲得したソン・ギジョン。その時、ユニフォームの日の丸を隠したという理由で引退させられてしまった。しかも記録は「日本代表」のものなのである。戦後、コーチとしてボストンマラソンで若手選手を韓国として優勝させるまでの彼の復活譚をドラマチックに描いている。監督は懐かしや『シュリ』の人だ。

戦前の部分は日本人からすると冷汗をかく場面が出てくるかと思ったが、導入部として短めに通り過ぎた。コーチとなって途中までは選手発掘や資金集めの苦労を中心に人情路線多めの感動話となっていて、やや下世話な感じの展開である。庶民の貧しさの描写が半端ない。
ボストンマラソンへの出場を目指したものの、当時の韓国は米国占領下であり、初めは占領軍の支援を得られず資金もなし、困難に見舞われる。

ようやくボストンにたどり着いたら、今度は占領下なのだから星条旗を付けろ、さもなければ出場できないと言われてしまう。クリアすべき壁が次から次へと現れる。
そもそも日本が植民地化したことが原因でこんなことになったわけだが……(> <)

終盤のマラソン本番場面は予期せぬほどの迫力だった。手に汗握る立派なスポーツものである。ロケ地にオーストラリアが上がっているけど、当時のボストンの街並みはCGかな? とはいえ多数の見物客などレース復元には金がかかっている。
学生役の若者にまじって走った「先輩」役のペ・ソンウ(役は35歳だが実際は51歳だったらしい)はご苦労さんでした。

見ていて、国家・国旗・国歌とスポーツの関係についてつらつら考えさせられた。
ジョージ・クルーニーが監督した、戦前の大学ボート部がベルリン五輪に出場する映画『ボーイズ・イン・ザ・ボート』では弱小大学なのでやはり資金が集められず、裕福な伝統校に妨害されるというエピソードがあった。スポーツもカネと権力次第なようだ。

| |

2025年3月18日 (火)

「コンセール・スピリチュエル パリに集った名手たち」:名演復活

250318 古楽21世紀シリーズ8
演奏:寺神戸亮ほか
会場:オペラシティリサイタルホール
2025年2月25日

昼の回に行った。18世紀パリで開かれていた人気コンサート・シリーズを再現。今、目の前に(耳の前に?)鮮やかに当時の響きが蘇る💖という趣向である。取り上げた作曲家はテレマンをはじめルベル、ギユマン、ラモー、ブラヴェという顔ぶれだった。

当時大人気だったテレマンは2曲(アンコールも)演奏。ルベルは寺神戸氏のビブラートのかけ方(?)のせいか妙にひずんで揺らいで聞こえる。そこが面白かった。ギユマンはフルートとヴァイオリンの掛け合いが蝶の如くヒラリヒラリと絡み合っていた。
個人的に気に入ったのはブラヴェのフルートソナタだった。

4人のアンサンブルは鉄壁でゆるぎなし。ベルサイユとは異なるパリの軽妙洒脱な雰囲気が伝わってきた。
曽根麻矢子のチェンバロはピカピカと光輝く陶器みたいな美しい装飾✨で目がくらんだ。曽根氏所有の特注品で愛称「白様」とのこと。

この「古楽21世紀シリーズ」は前回はラモーとルクレールでしたな。また次回もよろしく(^O^)/

| |

2025年3月15日 (土)

つらい職場特集・酒場編「ロイヤルホテル」

250315 監督:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー
オーストラリア2024年

昨今の映画にしては短い91分。しかしその3倍ぐらいに感じた。「まだ、この状況続くの? 耐えられねえ~😱」というぐらい。
同じ監督(主演も同じ)の前作『アシスタント』も相当イヤな話だったが、こちらはさらに上回るイヤさである。
楽しい女二人の観光旅行のはずが旅費が無くなって、オーストラリアの荒野でパブの住み込みバイト--したらそこは酔っ払い野郎どもの巣窟であった。

セクハラ暴言当たり前、ひどい出来事が次々と起こる。果たして報酬をちゃんともらえるのかも不安だ。怪しい男も出没する。もっと恐ろしいのはこれが実話でドキュメンタリーを元にしているということである。
夢の豪州、広くて怖いぞ。さすが『マッドマックス』の舞台となっただけはある。グリーン監督はオーストラリア出身ということだ💦

この状況に対して一人は慣れようとし、もう一人は抵抗しようとする。その選択による顛末を彼女たちの責任に帰すわけには行くまい。いずれにしてもどうにかやり過ごすしかないのだ。

そのモヤモヤをラストシーンが吹き飛ばす。でも絵面が他の某映画と重なるような……よくある定番シーンなんですかね。偶然か(^^;
ヒューゴ・ウィーヴィングが酒場のオヤジ役で特出。エンドクレジットの曲がカッコよかったです。

| |

2025年3月 8日 (土)

「1690年代のローマ」:根に持つタイプ

マンッリ、ミガーリ、コレッリの作品を巡って
演奏:アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア
会場:今井館聖書講堂
2025年2月22日

4人のうち3人が海外在住のグループゆえ、コンサートは年に一回になってしまうのか。昨年2月に続き、今年もやってきました。
夕方の回はやや寂しい客の入りだった。2回公演なので昼間の方に皆行ったのか。それとも神奈川の『オルフェオ』と重なってしまったのが悪かったか。

前回はナポリの作曲家マルキテッリを日本初演し、そして今回はローマへ向かう。1690年代にローマでトリオ・ソナタ集を発表した3人の作曲家兼演奏家--すなわちコレッリ、マンッリ、ミガーリを取り上げた。
とはいえコレッリ以外の二人は名前も聞いたことがない(;^_^A その二人を3曲ずつ、コレッリを2曲というプログラムだった。

全体的に緩急のアクセントを強くつけた演奏で、目が覚めるような鋭角的な響きが特徴的だった。当時のローマの生き生きとした音楽シーンが蘇るようだ。
曲はマンッリ、ミガーリ共にコレッリと遜色ないものだが、断固とした硬質さを持っているのに対し、それに比べるとコレッリはなんとなく愛嬌があるなあという印象。そういうところが長年生き残ってきた理由だろうか。

渡邊孝はマンッリ押しということでラストは彼の作品だった。しかしここで驚きの事実が明らかにされたのである❗
配布されたプログラムでは3人の作曲家の解説が載っているが、ちょうど見開き2ページの相対する位置にマンッリとコレッリの肖像画が印字されている。な、なんとその2ページ分の「」の字が全て強調文字になって黒く浮き上がっているのだ(!o!)
作成した渡邊氏の語るところによるとなぜそうなったのか全く分からないとのこと。

しかし二人には因縁があった。当時のローマにおいて開催された演奏会において、当初は第一ヴァイオリンはマンッリで、若い後進のコレッリは第二を務めたという。それが途中から逆転--つまりマンッリは首席奏者の地位を奪われたのである💥
「おのれ、若造め~(~_~メ)」彼の恨みは数世紀後の演奏会にまで及んだのであろうか。二ページいっぱいに広がる「」の強調文字がその証左である。まさに根に持つタイプ。演奏家の恨み恐ろしや。

ん? よくよく見ればなんとこのブログ記事まで全ての「」が黒くなっているではないか⚡ で、出たーっ👻祟りじゃ~~(>O<)ギャー

| |

2025年3月 1日 (土)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年3月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ
事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。
小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。

*2日(日)バグパイプ三昧 近藤治夫バグパイプ・ソロライブ:音楽茶屋奏(国立)
*8日(土)レクチャーコンサート バロック音楽の魅力(太田光子ほか):横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール
*9日(日)宇治川朝政・芥川直子デュオリサイタル:今井館聖書講堂
*12日(水)ベーバー マルコ受難曲 ドイツ・プロテスタントの受難節(ベアータ・ムジカ・トキエンシス):日暮里サニーホールコンサートサロン
*16日(日)人はなぜデュファイの音楽を残したのか? 「ミサ断章」と3つのものがたり(プロジェクト・ムジカ・メンスラビリス):今井館聖書講堂
*  〃   コラールカンタータ300年5(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール
*20日(木)リコーダーコンチェルトの楽しみ(柿原よりこほか):東京中央教会
*21日(金)タブラトゥーラ・リターンズ:ハクジュホール
*22日(土)バッハ 種々の楽器のための協奏曲(アンサンブル山手バロッコ):横浜市神奈川区民文化センターかなっくホール
*22日(土)・23日(日)バッハからの“招待状”or“挑戦状”!?(大塚直哉、中田恵子):神奈川県民ホール小ホール
*27日(木)イタリアの香り フランス編3(向江昭雅&平井み帆):マリーコンツェルト
*29日(土)フランスバロック音楽の栄華1 ヴェルサイユ・ピッチで奏でるフランス・バロック音楽(白井美穂ほか):今井館聖書講堂
*  〃   ルソン・ド・テネブル(小林恵ほか): 日本キリスト教団聖ヶ丘教会
*30日(日)チェンバロ&ヴィオラ・ダ・ガンバ デュオリサイタル(中川岳&折口未桜):今井館聖書講堂


放映あり。NHKBS「クラシック倶楽部」14日(金)イル・ポモドーロ&フランチェスコ・コルティ、17日(月)ジュスタン・テイラー。
「プレミアムシアター」9日(日)ラモー歌劇《エベの祭典》。

| |

「ソウルの春」:勝つのはどちらだ?暁の死闘

250228 監督:キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン
韓国2023年

昨年12月の韓国大統領により戒厳令が出されるという事態の際に、盛んに引き合いに出されて広く知られるようになった本作。2024年に見た映画の中でも上位に来る面白さである。
タイトルから社会派政治劇なのかと思ってたら、ハードな軍事サスペンスだった。史実に基づいているが、登場する軍人・政治家たちの名前は微妙に変えている(が、韓国史を知っている人ならだれでもわかりそう)。見てて「本当にこんなことあったのか💦」と冷や汗が出てくるほどだ。

時は1976年朴大統領暗殺から一か月半、国民の民主化への期待が高まる中で公然と軍事クーデターが行なわれる。そして前線を離れた軍がソウルへ進攻開始。策謀を練り指揮をしたのはチョン・ドゥグァン司令官(モデルは全斗煥)で、背景には軍部内の長年に渡るネチネチとした派閥争いがあった。

迎え撃つは首都警備司令官をはじめとする鎮圧軍(対立する派閥)だがどうもタテヨコの連携共にうまくいかず、無能かつ日和見な将官が多く後手後手に回ってしまう。
もっとも反乱軍側も状況を見て不利になれば逃げだそうとするいい加減なヤツが多数。それをチョン・ドゥグァンがなんとか丸め込んだり……と結束が固いわけではない。

このような状態で戦況は時間ごとにオセロの駒のようにパタパタと何度もひっくり返り、先が読めずものすごい迫力で見ていて手に汗を握ってしまう。終盤はドキドキした。これが一日(一晩)の出来事なんだから驚きだ。
「史実に基づくフィクション」とはなっているが、監督は当時ソウルにいたそうで騒乱の一部を(目撃ではなく)音を聞いたそうだ。製作にあたっては証言や記録を集めたとのことである。

演出は盛り上げ方がうまい。142分の長さも気にならなかった。テンションの高さと熱い力業に感服である。
チョン司令官役のファン・ジョンミンの悪役ぶりがあまりにお見事だった。強面とハッタリといい加減さが絶妙にブレンドされている。特にトイレでのダンスがなんとも言い難い気分にさせてくれる。
こういう時は真っ当な正義のヒーロー役(チョン・ウソン)の方がいささか分が悪くなっちやうのは仕方がない。

銃撃戦にまで至っても結局新聞はほとんど報じず、市民は何が起こったか知らぬままに終わったそうだ。
客観的に見ればドンパチはあれど、要するに軍の内部抗争である。しかし、そこで権力を握った者が独裁者として国を左右する。そして〈ソウルの春〉も終了となるのだった(T^T)

| |

« 2025年2月 | トップページ | 2025年4月 »