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2025年4月

2025年4月26日 (土)

「タイタン・ノワール」

250425 著者:ニック・ハーカウェイ(訳:酒井昭伸)
ハヤカワ文庫2025年

タイトルからなぜか土星(の衛星)を舞台にしたSFミステリかと思い込んでいたが違った。タイタンは神話の巨人のことだった。
舞台は恐らく欧州のどこかの都市(ギリシャ?)、近未来といってもテクノロジーが発達しているようには思えない。唯一異なるのが若返り医療が存在し、それを受ければ不老不死(少なくとも病気や怪我は克服)となることである。

それは薬剤の投与によるものなのだが、実は一気に若返るものの身体が巨大化してしまう。金がかかる上に都市を支配する一族の血統やコネも必要となる。かくして長身・長命の金持ちと、貧民は目に見えて分断される。

そんなSF設定であっても、主人公の私立探偵が事件を探って回るのはむしろ古めかしいまでの正調ハードボイルド世界なのだ。
富裕層が住む街に対して反体制派が集う下町、クラブでの乱闘、怪しい暗黒街の顔役、軽口をたたく探偵は必ずぶん殴られて失神する。定番が揃っていると言ってもよい。

そのアンバランスさが面白かったが、いかんせん長い。設定を説明するだけで長くなるのは仕方ないとはいってもなー。
続編書くつもりらしいと解説にあったが本気かな(^^?

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2025年4月25日 (金)

「ザ・バイクライダーズ」:男と男と女とバイクと

監督:ジェフ・ニコルズ
出演:ジョディ・カマー、オースティン・バトラー、トム・ハーディ
米国2023年

原作はシカゴのバイカー集団をエスノグラフィーの手法で捉えた写真集とのことである。バイクには全く縁がないけど見てきた。
カメラマンの前でメンバーの妻が回想する形式で、1960年代から70年代初めにかけてクラブの結成・拡大・変質の過程を描いていく。

そもそもは町のクラブの一つに陣取る一団が徐々に大きくなっていき、やがて評判を聞きつけた外部の者が加わって来て変質を遂げる。もはや元のままではいられない。その背景にはより暴力的なるものへと向かっていく時代の変化もあるだろう。
リーダーと一人の若い子分とその妻の関係から集団の「栄枯盛衰」が浮かび上がってくる。その描写は地道で着実だ。
ただ鉄拳👊&ナイフ🔪の切った張ったはやっぱり苦手じゃ~(>O<)

事前に「リーダー役トム・ハーディと若い子分の妻ジョディ・カマーがオースティン・バトラー(子分役)を取り合う話」と耳にして「そんなバカな」と思ったが、見てみると実際その通りであった💥
ハーディとカマーは演技で見せるが、バトラーは完全に美しい「お姫様」役。まさに色男、金も力もやる気もなかりけり、なのだった。そしてこの三角関係の勝者は……😶

中心はもっぱら人間の集団力学と三角関係で、バイクへのマテリアルな偏愛描写はほとんどない。そこら辺はマシン好きの人はどう思うだろうか。
思えば、同じ監督の『ラビング 愛という名前のふたり』でも白人と黒人が融和して暮らす町のあり様がテーマの一つだった。多分、人間の集団に興味があるのであってバイクというモノには視線が行かないのだろう。

マイケル・シャノンやはりここでも変な役。ノーマン・リーダス特出。彼がカリフォルニアから転がり込んできて仁義を切る場面は「日本のヤーさんと同じだ(!o!)」と思っちゃった。
バトラーに加え期待の若手・中堅男優たちが大挙出演ということで女性観客も多いかと思ったら、ほとんどが中高年男性だった。

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2025年4月18日 (金)

「タブラトゥーラ・リターンズ」:若者力も発揮

250417 会場:ハクジュホール
2025年3月21日

時の流れは速い💨 タブラの2年ぶりのコンサートであった。今回はタテ笛要員としてケーナの岩川光がゲスト参加。音だけ聞いているとリコーダーのようなリコーダーでないような--という不思議な境地へいざなってくれるのだった。

定番曲が粛々と演奏されるも、近藤郁夫のハンマーダルシマーはすぐに調弦が狂ってなかなか開始できなかったり。そしてつのだ団長の老人力はさらに強まっていて一曲飛ばそうとする、使う楽器を間違えるなど小ハプニングがあった。

そんな中、若い岩川氏参加は平均年齢は押し下げ、大柄なので平均身長をグッと押し上げていた。
楽器説明コーナーで、ケーナって八千年も前からあったという話、本当かっ(!o!)ビックリである。小学6年生の時に初めて買ったCDがタブラの「蟹」であったという話には、ほぼ満員の会場から「おお」とどよめきが起こった。自分が「蟹」を聞いた時の年齢を比べてだろうか。
しかも「一人で2本同時演奏」までもケーナでやってくれたのであった。大活躍✨

コロナ禍で長いこと中断していた「ブラボー⚡」も再び飛ぶようになりまことにメデタイ限りである。昨年が結団40周年だったそうで、50周年まで頑張ってほしいところだ。


この日は電車がトラブルで遅れて止まっては動きで、本当は30分前に着くはずが開演時間になっていた。冷汗かきまくりで疲れたですよ(ーー;)

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2025年4月10日 (木)

映画落穂拾い・映画に続編はあるが人生にはない

続編を見るということは当然第一作目を見ていることが前提でしょう。しかし前作が面白くなくても続きを見るかというと、面白かったからこそ見る気になるものです。しかし、たまに詰まらなくても「今度こそ面白いに違いない!」とあえて意気込んで見ることがあります。そしてまたガッカリするという(-_-;)

こうなると賭けですな。チケット代返せ👊と叫ぶより「また詰まらぬものを見てしまった……」嘆くことになるかもしれません。
とはいえ、前作があるからこそ続編がある。何もないところからいきなり「続き」を作ることはできぬ。


250310a ★「マッドマックス:フュリオサ」
監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース
オーストラリア・米国2024年

前作『いかデス』からはや9年(!o!) 私もそれだけ歳を取りました。監督は元気なようだけどな。
時間を遡って子ども時代からいかにフュリオサが片手を失い警護隊長にまで成り上がったのか--という疑問に答えてくれるのかと思ったら、どうも主人公は名前が同じでも似て非なる人物のようだ。

それどころか、中心は滅亡世界の覇権を争って狂気vs狂気の闘い。よもやイモータン・ジョーの方がまだまともに思えるようなヤツが登場するとは想像もしなかった。
新登場のディメンタスはバイクつなげてローマ時代の戦士を気取り、スクリーン占有率はほぼ7割(当社推定比)。その内の1割は彼が腰にぶら下げてるクマちゃんである。観客の理解の埒外へと転がっていき、あまりに理解を超えているのでフュリオサの復讐譚を無化してしまうほどだ。一体何を見せられているのでありましょうか。

荒野を突っ走るタンクローリーやバイクのアクションは迫力&お見事。とはいえ前作は色んなシチュエーションで様々なアクションが繰り広げられたが、それに比べると変化と興奮度は少ないと思えた。

結局、フュリオサがどうやって成り上がったのかは分からずじまいだった。
米国では期待されていたほどのヒットにならず、第3作が作られるのか雲行きが怪しいらしい。がんばれ~\(-o-)/


250310b ★「インサイド・ヘッド2」(字幕版)
監督:ケルシー・マン
声の出演:エイミー・ポーラー
米国2024年

地上波放映の「1」を復習して鑑賞に臨む(かなり忘れてしまったため)。
前作では小学生だった少女ライリーもはや高校進学を考える年齢になっている。しかし思春期って色々ムズカシイ。もはや親の出る幕なし、彼女の脳内にあったお子ちゃま時代の素直な感情たちはお払い箱の憂き目にあう。そして新しい感情グループのリーダーは「シンパイ」である。(正確には「不安」らしい)

進路の悩みを発端に複雑・混乱・矛盾の嵐が襲い、友情か憧れの先輩かで引き裂かれる。もはやいい子じゃいられないのだ😑
思春期はすでに遠く、今や老後の「シンパイ」の方が大きな顔をしている私だが、最後は泣かされた(T^T)。よく出来ている。
脳内で繰り広げられるアクションと共に、現実のアイスホッケーの場面もお見事だった。特に氷の感触が鮮やか。で……結局キャンプの結果はどうなったのかな👀

ところで「1」の再見は吹替版だったが、やはり分かりやすかった(^^; 字幕で見た時にはよく分からなかった部分がよく理解できた。でも、これからは全て吹替で見ようという気にはならないのよなー。


250310d ★「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」
監督:リドリー・スコット
出演:ポール・メスカル
米国2024年

これこそ直前に「1」の再見が必須❗ というのも、完全に連続ドラマの「次週に続く」並みに直に話が繋がっているのである。前作公開から25年近く経過、それなのにこれはいかに。
前作をよく見ていればこの展開はありえないだろう😦なんて感慨を吹っ飛ばし、登場するはサメ、サル、サイ……と前作より手数が多い。しかしバラエティに富んでいるからといって面白くなったかというと難しいところだ。

さらに主人公ルシアスや清廉な将軍アカシウスよりも目立っているのがデンゼル・ワシントン扮するマクリヌスである。目的・意図も明らかにしないまま彼は勝手に動き、策略をめぐらしているようだが手当たり次第でもある。あたかもトリックスターのよう。それによって物語は動いていくから彼が主人公に見えても仕方がない。
おまけに服装は皇帝たちよりファッショナブルだ(^^; ローマ市民のみならず映画の観客の目を引き付けまくっている。
結局、私には彼が何をしようとしていたのかよく分からなかった。

折角のポール・メスカルやペドロ・パスカルはパッとせず損な役回りだったようだ。
D・ジャコビは折角長生きして再度出演したのに、見せどころが全くなくて残念だった。前作とあまり変わっていないC・ニールセンにはぜひ美容法を教えてほしい。

なお、劇中には色々と変わった形(と音)の管楽器が登場。これは当時の絵や図版から復元したのだろうか。詳しい人に聞きたいもんである。
劇伴奏者のクレジットが流れるのを必死で見ていたら「ヴィオール・コンソート フレットワーク」というのがあった。これってあのフレットワークだよね?


250310c ★「デッドプール&ウルヴァリン」
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン
米国2024年

ウルヴァリンて狼男から来ているのかと思ったらどうも違うらしい。その程度の知識で二大ヒットシリーズ合体作を見た。
なるほど、レイティングがR15+だけのことはある血しぶき連発とお下品なギャグが満載だ。その展開に業界内輪ネタをまぶしていちいち突っ込むデッドプールである。

一見さんお断りの、熱心なファンのための熱心な作品だった。過去作を見たけど記憶が薄らいでいる私にはなかなかハードルが高かった。さらに加えて若い人は知らんだろう、このヒーロー(^^? みたいな過去のキャラクターたちが登場する。
細かいエピソードは忘れたまま気にしないで笑うところは大いに笑えた。ただそれだと同時に数少ない感動場面も効果が半減になってしまう。
コアなファンはともかく、MCUの将来がどうなろうとあまり気にしない人間にとってはそこまで言及されてもなーという面もあった。

ある意味これまでのシリーズを清算するような映画作って、また新しいシリーズ始めるつもりなのか。過去を一掃して心機一転で開始するのかもしれず、素直に大口開けて笑っていられない感じで終始したのであった。

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2025年4月 1日 (火)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年4月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ
事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。
小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。

*3日(木)東京・春・音楽祭「西洋絵画、どこから見るか?」展記念コンサート1(古橋潤一ほか):国立西洋美術館講堂
*4日(金)ヘンデル 時と悟りの勝利(ルネ・ヤーコプス&ビー・ロック・オーケストラ):東京オペラシティコンサートホール
*5日(土)聖母マリアのカンティガ集(メネストレッロ):番町教会
*  〃  光の庭プロムナード・コンサート 喜びの春(花澤絢子&小林瑞葉):彩の国さいたま芸術劇場光の庭
*6日(日)モンテヴェルディ マドリガーレ集第3巻(ドルチェアマーロ)):松明堂音楽ホール ♪横浜公演あり
*  〃  マラン・マレ 若き宮廷人のエレガンス(平尾雅子ほか):霞町音楽堂
*11日(金)ヨハン・ローゼミュラー トリオソナタとエレミアの哀歌(鈴木美登里ほか):五反田文化センター音楽ホール
*13日(日)渡邊順生チェンバロ音楽シリーズ2 チェンバロの最も美しい響き フローベルガー&ルイ・クープラン:今井館聖書講堂
*  〃   5種の古楽器 心躍る室内楽(荒井豪ほか):日本ホーリネス教団東京中央教会
*14日(月)サロンと宮廷の音楽シリーズ 春の宮廷 低音四人(新倉瞳ほか):南青山マンダラ
*15日(火)東京・春・音楽祭「西洋絵画、どこから見るか?」展記念コンサート2( 佐藤亜紀子):国立西洋美術館講堂
*18日(金)・19日(土)バッハ マタイ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール ♪埼玉公演あり
*20日(日)Amor mi fa cantar! 14~15世紀イタリアの世俗音楽(夏山美加恵ほか):今井館聖書講堂
*23日(水)西山まりえの歴女楽11 本当は怖いヴェルサイユ:王子ホール

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