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2025年6月

2025年6月29日 (日)

人間無用!海と島と動物アニメ・その2「Flow」

250708 監督:ギンツ・ジルバロディス
ラトビア・フランス・ベルギー2024年

事前の予想を覆してアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得したのはこれだ!
なぜか突然人間がいなくなったらしい世界。果たして舞台が地球なのかも曖昧だが、動物たちが廃墟の点在する森で暮らすうち洪水が突然訪れる。
逃げ惑う一匹の黒猫が絶体絶命の危機の中、帆掛け船の影を見つけるのだった。するとそこには先客がいて……。

船に乗り込んでくる動物たちの種類が意表をついて面白い。彼らは喋ったりせず、あくまで動物としての存在だ。いかにもそれらしい動作を入れてくる。
動物の毛並みはCGアニメによくあるような毛皮のモフモフ感はなく、やや荒っぽい画像なのだが(無料のソフトを使ったとか)、一方水の感触や植物の緑、正体不明の建築物に見入ってしまう。カメラの動きが動物視点で、自由自在で滑らかなのにも感心する。

一体この世界に何が起こったのだろうか。最初は温暖化で海水面が上昇したのかと考えた。話が進むうちに、地球の地軸がずれたのかもと思った。(SFにはよくある設定)
しかし途中で登場するクジラみたいな動物は明らかに地球のものとは異なるし、廃墟は神殿なのか高層ビルなのかもわからない。
そこら辺は最初から明確に設定していないようである。

いずれにしろ人間とは無縁の美しい世界が続くのだろう。黒猫の金色の瞳がそれが映す。
そんな中でも爪とぎだけは忘れぬネコチャンである。

愛猫家必見(一応、愛犬家も🐶)の上映時間85分⌚ 短くても豊かなイメージを堪能した。ただ15分以上も予告があって(映画だけでなく普通のCMもあり)長くて疲れた。

監督はまだ30歳(~o~)とのこと。若い!
オスカーについてはアニメ賞だけでなく国際映画賞にもノミネートされていて、母国のラトビアでは史上初の快挙だったらしい。多分お祭り騒ぎ状態になったに違いない。

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2025年6月26日 (木)

人間無用!海と島と動物アニメ・その1「野生の島のロズ」(字幕版)

250626 監督:クリス・サンダース
声の出演:ルピタ・ニョンゴ
米国2024年

なぜか共通項が多いアニメ作品が続けて公開された。流行なのでしょうか。
第1弾はあまりの大好評なので見に行った大手ドリームワークス作品。

名も知らぬ~🎵遠き島に流れ着くロボット一体あり。人間の与えるタスクを達成するのが役目のロズが、人間のいない島でようやく見つけた仕事は雁のヒナの「子育て」であった。
まだ小さいうちはピーチクとまとわりついていたのに、思春期ともなるとふてくされて反抗的。やがて立派に成長して渡り鳥として自立……。
ロボットは性別ないはずなのになぜ「母親」になるのか--などと文句を付けるのは野暮。
お子様を映画館に連れてきたお母さんお父さんが怒涛のように涙を流す(T^T)のは必至だろう。

島の光景、植物、動物全てが美しく鮮やかな色彩で生き生きと動く。憎たらしいはずの回収役ロボさえ魅惑的だ。
キツネのしっぽのモフモフ感はたまらない💖 モフモフしたいぞっ。

子育てや周囲の動物たちと付き合う中でロズの内部にも芽生えてきたものがあった。果たして、メカニクスとプログラムの間に心が生じるのであろうか。いや、むしろこれは「生じてほしい」と願う物語なのだろう。
それよりも大きな疑問は弱肉強食、食物連鎖の輪を断ち切った後に島での「食糧」問題はどうするのか(?_?)ということだ。そこら辺はうまくごまかされたという感じ。
ところでゴールデンゲートが崩落しているというのは--大きな戦争が起こった後の世界なんだろうか。

キツネの声をペドロ・パスカルがやっているというのは聞いていたが、ビル・ナイやマーク・ハミルも担当していたとは全く分からなかった。

アカデミー賞作曲賞・音響賞・長編アニメーション賞候補。事前の下馬評ではアニメーション賞は固いということだったのだが……。

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2025年6月20日 (金)

「太陽王の残光 ヴェルサイユ宮殿で聴かれた音色」:雨の新大久保にも太陽王の威光は輝くか

250620 演奏:宇治川朝政ほか
会場:日本ホーリネス教団東京中央教会
2025年5月31日

雨の中、チェンバロ&ハープ曽根田駿、ガンバ平尾雅子、笛(リコーダー&フルート)は中島恵美・宇治川朝政、という4人によるフランス宮廷ものコンサートへ。
前半はクープラン、マレ、リュリによる組曲、後半はダンドリュー、シェロンほかのソナタ中心というプログラムだった。

シェロンという作曲家は初めて聞いた。ルクレールの後輩とのことである。リュリについてはルイ14世とのからみでオペラバレや文字通りダンスの観点から語られることが多いが、純粋に器楽曲の系譜から見る(聞く)というのは機会が少ないように思った。
ヴィゼのテオルボ作品をハープで弾くというのも珍しかった。でも当時はよくやっていたことだそうだ。ハープの音だと情緒よりも明晰さが、テオルボの時より前に出てくる印象である。
リコーダー2本だけによるフィリドールは競い合うようにやや緊張感を感じさせる曲で聞きごたえあった。
最終曲とアンコールはマレの定番曲だった。

コンサートの内容は良かったが、天気はひどかった。
開場の時間はちょうど雨が止んでいたけど、もし降ってたら風が強かったので会場にたどり着くまでにずぶ濡れになったろうし、開場待ちの列は外に並ばされていたので、悲惨なことになったはず。
帰りはまた雨が降ってて電車が止まったり遅れたり大変だった。雨の新大久保、やっぱり近寄りたくねえ~🆖

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2025年6月13日 (金)

「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」:無から金を生み出す

監督:フェリックス・チョン
出演:トニー・レオン、アンディ・ラウ
香港・中国2023年

久しぶりに見た香港映画。中心の二人を黄金コンビが演じる。イケイケ押しの一手のトニー・レオンに対してアンディ・ラウは地味に受けるというパターンである。

冒頭は70年代中頃、東南アジアで食い詰めて香港に流れてきた男が一人。やがて口八丁手八丁で成り上がり、イケイケのバブル期を背景に株と人と不動産を転がして巨額の利を得る。
しかし、このハッタリを極める詐欺師を常に注視し、地道な捜査を十数年にもわたり根気強く続ける捜査官がいたのだった。

実在のモデルがいるそうで、見ていて連想するのは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』だろう。大きな富を得た結果の金ピカの贅を尽くしたバカ騒ぎの様相には『アプレンティス』も思い出したりもした😑(躁的な盛り上げ方は本作の方が巧いように思える) こういうのは洋の東西を問わないらしい。

背景には宗主国の英国の影もチラチラとする。やはり返還を控えて、当時の香港はもう二度とない特殊な時空間に存在していたようである。
次から次へと淀むことのない語り口。見ごたえがたっぷり詰まった、そういう意味で王道の香港映画といえよう。

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2025年6月 8日 (日)

「わたしの涙 愛を綴るイタリアの古歌」:嫉妬から諦念まで

250608 演奏:クレール・ルフィリアートル、上村かおり、西山まりえ
会場:今井館聖書講堂
2025年5月10日

先日の王子ホール公演ではフランスものだった西山まりえとC・ルフィリアートルのコンサート、今回は上村かおりを迎えてイタリア作品プログラムである。
上から見て長方形の会場、いつもなら短辺の方にステージを設定して椅子を並べるのだが、この日は横長に使っていたのが珍しかった。そのせいかなんとなくサロンっぽい雰囲気になっていた。

カッチーニ、フレスコバルディなど定番曲あれば初めて聞くものもあった。
曲ごとに西山氏が入れる歌詞のツボを押さえた解説(というより訳詞か)が面白い。カスタルディの曲はその訳がどうしようもないカップルのイチャつき話になっていて、いくらなんでもこりゃ大げさでやり過ぎなのでは?と思ったら、実際に曲を聞いてみるとまさにそのまんまであった。それをクレールはさささっと歌いこなすのであった。

恋人同士のトラブルやら嫉妬の歌から始まって、やがて徐々に人生を思う曲へと向かう。アンコールはモンテヴェルディの「苦しみが甘美なものならば」であった。
クレールの歌を間近で堪能できて満足である。西山氏と上村氏は休憩なしで弾きっぱなしサポートでご苦労様です。


今井館の道路を渡った向かい側方向に、美しい青紫と白の花が咲き誇りしかも甘くていい香りがしていた。家へ帰って調べたらニオイバンマツリというらしい。来年の同じ時期に行くことがあったら忘れずにチェックしたい。

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2025年6月 1日 (日)

聴かずに死ねるか! 古楽コンサート2025年6月編

個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ
事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。
小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。

*3日(火)古楽器で楽しむバロック音楽inアミーゴ14(新井道代ほか):入間市文化創造アトリエアミーゴホール
*5日(木)ドイツ=ネーデルランドに響くガンバ・デュオの音色(田中孝子ほか):横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール
*7日(土)プティ・サロン2025(平井み帆ほか):チャボヒバホール
*  〃  コルテ・デル・トラヴェルソ29 もの語る笛(相川郁子ほか):スペース415
*7日(土)・8日(日)ロバの音楽座結成44周年記念 ロバ祭という音楽会:ザムザ阿佐ヶ谷
*11日(水)編曲家・バッハ(宇治川朝政ほか):セントマーガレットウェディング
*22日(日)バロツク・ローマの異彩(スティラ・マリス):今井館聖書講堂
*  〃   酒蔵de古楽(大塚照道ほか):小江戸蔵里ギャラリー
*23日(月)モノフォニー→ポリフォニー1 グレゴリオ聖歌 キリスト教の単旋律聖歌(サクリス・カンマーコア):日本福音ルーテル東京教会 ♪千葉公演あり
*26日(木)Bach Dynasty 華麗なるバッハ一族の音楽(ヴォクス・ルミニス):調布市文化会館たづくりくすのきホール
*28日(土)2台のクラヴィコードによるバッハ父子の作品(上尾直毅&中山結菜):マリーコンツェルト
*  〃   ヘンデル ロデリンダ(バッハ・コレギウム・ジャパン):調布市文化会館たづくりくすのきホール
*  〃   Ut/Faまちなかミニライブ5 バルサンティ:3F・音楽室


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