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2025年8月23日 (土)

「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」:ギターを持った人でなし

250822 監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ
米国2024年

アカデミー賞主演男優賞候補3作目。
ボブ・ディランといっても、録音は一枚も持っていないし彼については詳しい知識もなし。そんな私でも見た聞いた面白かったですよ。

音楽関係の伝記ものを見ていて不満に思うのは、私生活のネタ中心でなために同時期のライバルとか音楽シーンについての描写がほとんどないということだ。
この映画では1961から65年限定ではあるが、彼を取り巻く音楽の情況がよく分かるように描かれている。曲もたっぷりとかかるし、それどころかミュージカル並みに心情を表すように歌われる。

個々の曲のダイナミズムをよく心得た配置、その狭間に一人の男の肖像が浮かび上がる。性格が悪く、気まぐれ、図々しい、強過ぎる自負心、自信過剰、傲岸にして不遜、二股愛に加えさらに経歴詐称も?……よくある、「人が悪いけれど一方で天才である」という話でさえない。人の悪さそのものが破壊力であり革新性であるという存在として描かれていた。

ピート・シーガーは若いディランの登場をフォーク・シーンを盛り上げる起爆剤だと喜んで推薦していたわけだが、最後にはジャンル逸脱という正反対の方向に進んで彼に裏切られる。
恩知らずの若造か時代の革新者か--そのどちらも同じ意味であることが示されるのだった。

主要5人の演技(と演奏も)は文句なし👍 グロスマン役は『ジ・オファー』のコッポラやってた人か(あとファンタビですね)。ピートの日系妻役もよかった。バエズの一瞬の中指立てに笑った。
ネットの感想に「歌ってる場面が多くてつまらなかった」という意見を見かけた。音楽に興味ないとそうなるのかもしれない。
一方でマンゴールド監督の実話に基づいた過去作『フォードvsフェラーリ』同様、ホモソ的な部分があるようにも感じた。

結局、アカデミー賞は8部門候補で一つも獲得できず。シャラメの落選はやはり「まだ若くてチャンスがあるから」なのかな? でもブロディだって一度取ってるから十分ではないの(^^?ということにならんのか。

作中、ラストのニューポート・フェスで「音量下げろ💢」攻撃の中で調整卓を必死に守っていた若者が出てきた。実際にそういう者がいたのか、あんな大混乱をはねのけたのは何者かと思って見ていた
後でミュージック・マガジン誌の「名もなき者」特集を読んでたら、彼は若い頃のジョー・ボイド(音楽プロデューサー)だとあって驚いた。音楽と人に歴史ありですなあ。
それから、ピート・シーガーがコードぶった切りに斧を使おうとした逸話は以前から伝わっているそうな。アル・クーパーのスタジオ潜り込み事案は有名な話らしい。知らなかった(!o!)

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