今月中は休止状態
ただでさえ更新が遅れまくっている当ブログですが、諸般の事情により10月中は休止状態になります。
よろしくお願いしますm(__)m
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著者:ジェイムズ・リー・バーク(吉野弘人 訳)
新潮文庫2025年
お懐かしや刑事ロビショー・シリーズが復活した!
彼が暮らすルイジアナ、かつて組合運動家が惨殺されるという事件が起こり二人の遺児は児童施設へ送られた。しかもその現場を父親と共に発見したのは少年時代のロビショー自身である。
歳月が経ち、遺児たちが戻ってきた。姉は気鋭の社会派フォトジャーナリスト、弟は映画監督として--。
これで何も起こらないわけがない。
主人公の危惧の通り、事態は徐々に転がり始めて留まることはない。
何か事件が起こって犯人を捜すという形ではなく、小さな齟齬や過去の因縁が膨れ上がって破局に向かっていく。スッパリ割り切れる所はないのだ。
ラストで綴られる彼の感慨が全てを語っている。
豊かで美しい自然描写、地域に根付く歴史の暗い影、錯綜する人間関係……かつてのシリーズと同様に堪能した。
1998年出版の本書がなぜ今訳されたのかは分からないが、取りあえず日本語で読めたことは大いにメデタイ。
ジェイムズ・リー・バークの作品は二つのシリーズがそれぞれ角川文庫と講談社文庫から出ていて、その10冊は今でも持っている。ページの紙はすっかり黄色くなってしまったが……。
なぜシリーズ途中で訳されなくなってしまったのか?当時疑問に思った。本国で作者が書かなくなってしまったのか、それとも日本で海外ミステリブームがちょうど終わったからか。
その頃は知る手段がなくて分からなかったが、恐らく後者かなと思えた。
本書巻末の著作リストを見るとロビショーのシリーズは最近まで続いているようだ。ぜひとも続きを出してくださいませ(^人^;
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個人の好みで東京周辺開催のものから適当に選んでリストアップしたものです(^^ゞ
事前に必ず実施を確認してください。ライブ配信は入っていません。
小さな会場は完売の可能性あり。ご注意ください。
*3日(金)楽器が語る信仰のことば(マドリガーリ・アルモニオージ):カトリック築地教会
*4日(土)ラメント 哀しみの音の肖像(宮崎賀乃子&曽根田駿):スペース415
*7日(火)名無しのリュート音楽(坂本龍右):ムジカーザ
*12日(日)もっと知りたい!もっと聴きたい!テレマン6 1700年代ライプツィヒ組(佐藤康太ほか):滝野川会館大ホール
*13日(月)イタリア・バロックの肖像 弦が紡ぐ詩と情熱(石上真由子&アンサンブル・パルテノペ):今井館聖書講堂
*18日(土)いにしえのハープの響き(渋川美香里):今井館聖書講堂
*19日(日)コラールカンタータ300年8(バッハ・コレギウム・ジャパン):東京オペラシティコンサートホール
* 〃 弦と鼓 リュートと辿るルネサンスの静と動(久野幹史&蔡怜雄):ロバハウス
*23日(木)滝井レオナルド リサイタル2:横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール
*24日(月)ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロが奏でるリュリ氏へのオマージュ(平尾雅子&平井み帆):今井館聖書講堂
*29日(水)縦と横のファンタジア 縦のリコーダーと横のフルート、2種類の笛の競演(ジャック=アントワーヌ・ブレッシュほか):日本ホーリネス教団東京中央教会
*31日(金)マドリガル・コメディ パルナソスの山巡り(ラ・フォンテヴェルデ):ハクジュホール
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★「シンシン/SING SING」
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ
米国2023年
アカデミー賞主演男優賞候補シリーズ5作目(過去記事で数え間違いしていました(^^ゞ)。
悪名高きシンシン刑務所で演劇による更生プログラムに取り組む男たちを描く映画である。出演者のほとんどが自らを演じる受刑者という虚実合わせた配役--撮影に参加しているということは正確には「元受刑者」ということだろう。(ただし主役のコールマン・ドミンゴを除く)
生まれついての悪党のような男と、無実の罪で獄中にいる主人公の生き方がそこで交錯していく。
プログラムでは外部の演出家兼脚本家を指導者として招いているが、読書家のGはその補佐役のような役割を果たしている。しかしム所内でヤクをさばいているような悪党アイがなぜか参加してきて、悲劇より喜劇がいいと言いながらハムレット役を希望するなど周囲をかく乱する。
Gが、自らについて「ニガ」という言葉を使うアイに対し「ニガではなくてブロ(兄弟・相棒)と言え」と忠告する場面があるが、終盤に至ってこれが効いてくる。
閉ざされた空間、塀の中の片隅に観客も潜んで彼らを注視している気分にさせられるのは間違いないだろう。
彼らが演じているのは役なのか彼自身なのか。役者としての巧拙に関係なく、虚実の狭間を突き抜けていくことこそが演技だと感じられる。そういう意味では「演劇」の神髄に迫っているといえるだろう。
とはいえコールマン・ドミンゴはお見事。主演男優賞候補は当然といえる。アカデミー賞では他に歌曲賞、脚色賞がノミネートされた。
以前見た、やはり刑務所での演劇プログラムを元にした『塀の中のジュリアス・シーザー』の感想を貼っておく。なお記事の中に出てくるニック・ノルティが主演したのは『ウィーズ』(これも実話)だった。
★「カーテンコールの灯」
監督:ケリー・オサリヴァン、アレックス・トンプソン
出演:キース・カプファラー
米国2024年
米国郊外の街、工事作業員として働く中年男がなぜか路上で突然誘われて素人劇団に参加する羽目になる。
演目は『ロミオとジュリエット』。しかしとある理由で、団員はさらに減っていってしまう。
一方、男は何かいつも鬱屈を抱えていて不安定なようである。外からはうかがい知れぬ彼とその家族の背後にあるものが、芝居のリハーサルが進むにつれ浮かび上がってくるのだった。そして上演当日、幕が上がる。
最後にはジンワリ涙がにじみ出てくるという次第である。
演劇が個人と集団の交流に関わり、自己回復に寄与するという点では『シンシン』と共通点がある。演劇はそういう力を持っているのだろうか。
ここで『ロミオとジュリエット』は最終的に50代(?)の中年が2人を演じることになるのだが、あら不思議✨ 舞台の上では十代の恋人たちとして全く違和感がない! これもまた演劇のマジックではないか。
現実と虚構の間を通り抜けていく何かがそこに確実に存在するのだ。
主人公が自分の娘に頼んで『ロミオとジュリエット』のDVDを見せてもらうのだが、その時に彼女が「昔の映画よ」と言ったので、私はてっきりオリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティング(当時女子に人気ありました)版だと思った。だがなんと⚡レオナルド・ディカプリオとクレア・デインズの方だった。ショックであーる。
バズ・ラーマン版は1996年だから今の高校生だったら生まれる遥か前だ。確かに「昔の映画」に違いない。
しかし(ー_ー)!!映画でなくて演劇だったら、この作品のように現在のディカプリオとデインズがやっても問題はない。そこに映画との違いが如実に示されている。
団員の個性的すぎる面々が面白い。特にドリー・デ・レオンという女優さん、最初に主人公に声をかけた時はどう見ても「ガサツなオバサン」だが、後半では可憐なジュリエットに見えるのがすごい。役者というのは恐ろしいもんだのう。
難としては、「全てをロミ・ジュリに寄せ過ぎ」という批判があるが当たっていると思う。もう少し何とかひねってほしかった。
それから、奥さんを放っておいてまず自分だけ立ち直るのはどうなのよという疑問も感じられた。
なお原題の「ゴーストライト」というタイトルは、ラストになってから小さい文字で登場する。聞いたことのない言葉だが、演劇用語で公演がない時にステージの上に一個だけ灯しておくライトということだ。安全のためと悪霊除けの二つの用途があるとか……初めて知った(~o~)
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