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2025年10月 1日 (水)

「シンシン/SING SING」「カーテンコールの灯」:幕が下りてから幕が上がるまでの間

250930a ★「シンシン/SING SING」
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ
米国2023年

アカデミー賞主演男優賞候補シリーズ5作目(過去記事で数え間違いしていました(^^ゞ)。
悪名高きシンシン刑務所で演劇による更生プログラムに取り組む男たちを描く映画である。出演者のほとんどが自らを演じる受刑者という虚実合わせた配役--撮影に参加しているということは正確には「元受刑者」ということだろう。(ただし主役のコールマン・ドミンゴを除く)
生まれついての悪党のような男と、無実の罪で獄中にいる主人公の生き方がそこで交錯していく。

プログラムでは外部の演出家兼脚本家を指導者として招いているが、読書家のGはその補佐役のような役割を果たしている。しかしム所内でヤクをさばいているような悪党アイがなぜか参加してきて、悲劇より喜劇がいいと言いながらハムレット役を希望するなど周囲をかく乱する。
Gが、自らについて「ニガ」という言葉を使うアイに対し「ニガではなくてブロ(兄弟・相棒)と言え」と忠告する場面があるが、終盤に至ってこれが効いてくる。

閉ざされた空間、塀の中の片隅に観客も潜んで彼らを注視している気分にさせられるのは間違いないだろう。
彼らが演じているのは役なのか彼自身なのか。役者としての巧拙に関係なく、虚実の狭間を突き抜けていくことこそが演技だと感じられる。そういう意味では「演劇」の神髄に迫っているといえるだろう。

とはいえコールマン・ドミンゴはお見事。主演男優賞候補は当然といえる。アカデミー賞では他に歌曲賞、脚色賞がノミネートされた。
以前見た、やはり刑務所での演劇プログラムを元にした『塀の中のジュリアス・シーザー』の感想を貼っておく。なお記事の中に出てくるニック・ノルティが主演したのは『ウィーズ』(これも実話)だった。


250930b ★「カーテンコールの灯」
監督:ケリー・オサリヴァン、アレックス・トンプソン
出演:キース・カプファラー
米国2024年

米国郊外の街、工事作業員として働く中年男がなぜか路上で突然誘われて素人劇団に参加する羽目になる。
演目は『ロミオとジュリエット』。しかしとある理由で、団員はさらに減っていってしまう。
一方、男は何かいつも鬱屈を抱えていて不安定なようである。外からはうかがい知れぬ彼とその家族の背後にあるものが、芝居のリハーサルが進むにつれ浮かび上がってくるのだった。そして上演当日、幕が上がる。
最後にはジンワリ涙がにじみ出てくるという次第である。

演劇が個人と集団の交流に関わり、自己回復に寄与するという点では『シンシン』と共通点がある。演劇はそういう力を持っているのだろうか。
ここで『ロミオとジュリエット』は最終的に50代(?)の中年が2人を演じることになるのだが、あら不思議✨ 舞台の上では十代の恋人たちとして全く違和感がない! これもまた演劇のマジックではないか。
現実と虚構の間を通り抜けていく何かがそこに確実に存在するのだ。

主人公が自分の娘に頼んで『ロミオとジュリエット』のDVDを見せてもらうのだが、その時に彼女が「昔の映画よ」と言ったので、私はてっきりオリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティング(当時女子に人気ありました)版だと思った。だがなんと⚡レオナルド・ディカプリオとクレア・デインズの方だった。ショックであーる。
バズ・ラーマン版は1996年だから今の高校生だったら生まれる遥か前だ。確かに「昔の映画」に違いない。
しかし(ー_ー)!!映画でなくて演劇だったら、この作品のように現在のディカプリオとデインズがやっても問題はない。そこに映画との違いが如実に示されている。

団員の個性的すぎる面々が面白い。特にドリー・デ・レオンという女優さん、最初に主人公に声をかけた時はどう見ても「ガサツなオバサン」だが、後半では可憐なジュリエットに見えるのがすごい。役者というのは恐ろしいもんだのう。

難としては、「全てをロミ・ジュリに寄せ過ぎ」という批判があるが当たっていると思う。もう少し何とかひねってほしかった。
それから、奥さんを放っておいてまず自分だけ立ち直るのはどうなのよという疑問も感じられた。


なお原題の「ゴーストライト」というタイトルは、ラストになってから小さい文字で登場する。聞いたことのない言葉だが、演劇用語で公演がない時にステージの上に一個だけ灯しておくライトということだ。安全のためと悪霊除けの二つの用途があるとか……初めて知った(~o~)

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