「迷宮」上・下
著者:マイクル・コナリー(古沢嘉通・訳)
講談社文庫2025年
ロス警察の未解決事件班担当刑事レネイ・バラードのシリーズ新作である。
冒頭から銃とバッジを盗まれるという大ピンチに陥る。バレればクビじゃすまないという事態だ。なんとか取り戻そうと密かに犯人探しをするが……。
上巻の帯には「議事堂襲撃事件犯による大規模テロを阻止せよ」とあり、下巻は「ブラック・ダリア事件の真相に迫る」となっている。
車上荒らしというある意味チンケな犯罪から、そんな大事件(それも全く種類が異なるもの二件)に一作の中でつなげられるのかと思ったが、ちゃんとたどり着いているのには驚いた。
それはバラード個人の大活躍もあるが、それだけでなく同時に地道な捜査のたまものであることも示される。超人的なヒーローものではなく、あくまでも警察小説の形を取っている所以だろう。
後半にかなり驚く展開があり、そういうところをあざといまでの力業で成立させてしまうのがいかにもコナリーらしい。
やたらとうるさい上司、上層部同士の対立、他の部署との駆け引き--今回も捜査を阻む警察組織の暗部がいやというほど描かれている。
バラードの「師匠」である先輩元刑事のボッシュも老いたりとはいえ登場するが、それよりもボッシュの娘マディの活躍貢献度が大きい。私の脳内イメージでの彼女はTVシリーズと同じになってしまい困ったもんである。
ボッシュの方は明らかにTVのT・ウェリバーとは異なるタイプのはずだが(コナリーは人物の外見の描写をほとんどしないので確信はない)これも脳内が浸食されつつある(>_<)
今回新たに登場した警察本部長は「背が高く、男前」で黒人、スーツではなく制服を着て登場する。となるとどうしてもドラマの方の本部長役ランス・レディックの顔が浮かんでしまう。彼は2023年に亡くなっており、それが本作をコナリーが書いている途中だったかどうかは不明だが、意識的に「キャスティング」したのだろうか。
未解決事件班はバラード以外は皆ボランティアというのが強調されていて改めて色々考えた。警察側の理由は経費節減だろうが、ボランティアする側(引退した捜査関係者など)はいざ大事件となれば拘束時間が長くなるだろうから割に合わない気がする。
それとも捜査は三日やったらやめられない、損してもやりたいということだろうか。
次作はこれまでのシリーズに関係ない全くの新作だと訳者あとがきにあってビックリした。もちろん出たら読むけどさ。
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