映画(タイトル「ア」「カ」行)

2017年4月 9日 (日)

「哭声/コクソン」:恐怖の三択

監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン
韓国2016年

國村隼が出演し男優賞を受賞して話題となった韓国製ホラー。あまりにも話題なので行ってみた。

ひなびた山村で一家殺戮という猟奇的な殺人事件が起こる。犯人はその家族の一員で、さらに他所で殺された別の男の死体も一緒に見つかる。毒キノコを食べたための錯乱が原因という結論になるのだが、山の奥の小屋に住みついてる謎の日本人がどうも怪しいという噂が広がるのだった。

そのうち新たな一家の殺戮事件がおこり、さらに主人公である警官の小学生の娘にも、犯人に共通する悪魔付きのような症状が出る。焦る主人公は暴走punch

聖書の引用から最初はミステリっぽく始まって、てっきり閉鎖的な村で日本人の男をめぐる疑心暗鬼がグルグル渦巻いていくような展開になるのかと期待していたら、そうはならずにイッキに不条理なホラーへと突入する。
いくらいい加減な性格とはいえ、警官としてどうよ的な放りっぱなし多過ぎ。日本人男のパスポートをスマホで撮ったはいいが、その後どうなったのか? また、同僚の警官が小屋で証拠になるようなものを見つけたのに何も言わずに出てきてしまうのも変だ。(操られていたとか言わないでくれい)

それを除けば「ド派手なもんを見せてもらいました」という気分である。祈祷師のお払いの場面はあまりに派手すぎて(ガムラン入ってた?)笑っちゃうくらいだし、ゲロ場面はこんなすごいのは見たことねえ\(◎o◎)/!とあっけにとられて感心してしまう(ここも笑った)。

それに子役の女の子のハイテンション演技も見ものである。國村隼に引けを取らない怪演であろう。
いや、全てにおいてハイテンションでテンコ盛り。あまりに過剰なんで展開から目が離せないけど疲れてしまう(上映時間も長い)。結局それに尽きる。韓国映画パワー恐るべしimpact

あと、私はつくづくホラーは性に合わないと自覚した。見ててイライラして腹立ってきちゃうんだよねえ。一応、昔のホラーの名作なんかは見てるんだけどsweat01
で、謎が明確に解決されずに放置されて終了してしまう。最近のホラーはこんな感じなのか。まあ、見た人同士で謎についてワイワイやり合うにはいいだろうが。

祈祷場面で互いに攻撃しているようで、実は……というひっかけのあたりは面白い。しかし、「読者への挑戦」があるような本格推理小説なら全ての情報が提示されていなくては「フェア」ではないけれど、この手の映画では情報を出すも隠すも作り手の勝手、胸先三寸である。

以下に取りあえず思い出せる謎を列挙。

家に下がっている干からびた巨大ブルーベリー(?)みたいな植物の役割は何か。
死者がいた軽トラの周囲のローソクは誰が何のために置いたのか。
そもそもゾンビはなんの目的なのか。
被害者の持ち物は何のために使われたのか。
終盤に謎の女と主人公が話している時に挿入される自宅のシーンはリアルタイムで起こっているのか、それとも主人公の想像か。
逃走する祈祷師に虫を送ったのは誰?
ラストの日本人男の変貌は助祭の幻想かリアルなのか。

主人公の周囲に出没する謎の三者が上記の謎にどう関わっているかで解釈は違ってくるし、三者同士の関係も一部不明である。それどころか湿疹事案だって誰が起こしているのか怪しい。
だからと言って、それらの謎が解明されたところでこの映画への評価が変わるわけでもないのだ。

ということで、やはりキノコ説が一番説得力ありそう(^^;)

観客は老若男女一つの層に片寄らず入っていたが、謎なのが数年ぶりに映画館来たような中高年女性を複数見かけたこと。座席指定の入替制を知らないぐらいである。國村隼のファンかsign02

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2017年4月 2日 (日)

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」:凡庸ならざる悪

170402
監督:ラース・クラウメ
出演:ブルクハルト・クラウスナー
ドイツ2016年

近年「アイヒマン」ブーム到来(?_?) というわけでもなかろうが、アイヒマン関連の映画がまた一つ。これはあの裁判の前日譚である。あの裁判に至るまでは実は大変な困難があったのだpunchという実話だ。

1950年代の末、フランクフルトで鬼検事長である主人公が、戦犯アイヒマンがアルゼンチンにいるというタレこみの手紙を受け取る。だが、検察や政界もナチの残党がいるので妨害され逮捕できない。
インターポールに依頼するも、政治犯は対象外とのこと。で、遂にイスラエル秘密警察モサドに接触するのだった。バレれば国家反逆罪になってしまう。

とにかく主人公のオヤジ検事が強烈なキャラクターである。「正義のためなら台所がなんだ!」とか「憲法があるだけで安心してはダメだ」などキビシイ主張をし、テレビ番組にも出たりする。(冒頭、実物が出演した番組の映像から始まる)

彼の原動力は、戦前収容所に入れられたが「ナチに協力する」と証文を書いて出してもらった--という自らの過去への激しい後悔であったのが途中で明らかになる。
これに、協力する部下の若い検事(架空の人物とのこと)が罠に陥れられる話が絡んで来る。
主人公が持つもう一つの「秘密」を共有するこの部下が、若い頃の彼が過去にありたかった姿を投影している、という感想を読んで、なるほどと思った。

というわけで、感動というよりも重いという雰囲気が全編覆っているのだった。映像もそれに合わせたか、なにやらフィルムノワールっぽい暗い色調である。

戦後のドイツをナチが牛耳っていたというのは知らなかった。当然、彼の行動は監視されていた。
この後の時代の話が『顔のないヒトラー』になるらしい。どのようにドイツが変化したのか、見逃してしまっていたので今度見てみたい。

ところで、ここに登場するアイヒマンは「凡庸」ではなく真に「悪」に見えるのだが、実際どうだったんでしょな(?_?)

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2017年2月25日 (土)

「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」:安全でも楽じゃない

監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヘレン・ミレン
イギリス2015年

ケニアにいるイスラム過激派(イギリス国籍)のテロリストを捕えるために、イギリスが主導して米国、現地政府軍と共同作戦を立てる。
現地以外はすべてそれぞれ自国から指令を下し、無人戦闘機で遠隔操作の爆撃を行うというものだ。

舞台は四つに分かれる。ヘレン・ミレン扮する大佐が自宅から出勤して計画を遂行する英国の基地、それを見守るアラン・リックマンの国防相と政治家たちがいるロンドン、そしてドローンを操作するネバダの米軍基地、現地の工作員がいるナイロビだ。
離れてはいても、ネットでつながり情報を共有し、同時進行する。

小規模なピンポイント爆撃で捕獲するという計画だったのが、状況が急に変わり、大爆発で殺害してしまう上に近隣住民の少女を巻き込まざるを得なくなるという事態に。
だが、このまま放置すれば自爆テロを起こして民間人の犠牲者が多数出る……という二律背反状態である。さあ、どうする(!o!)

単純に被害者の数を比較すれば、自爆テロを防ぐという結論になるが、政治的には民間人の少女を事前に分かっていながら見殺しにすれば、国民から非難轟々となるので躊躇する。
もっとも、これは政治というよりは人間の心証の問題だろう。

ということで今度は英国政府側がてんやわんや。国内の閣僚はもとより、一緒にいる米国籍の人間も殺害してもいいか米国側の承認を得なければならない。
米国側がいかにも「当然だろ」みたいに簡単にOKしちゃう様子は、ちと英国流のイヤミを感じたけど、うがちすぎかしらん)^o^(

なんとか強引に計画を実行したい大佐、少女の姿を間近に(映像で)見て動揺する米軍の兵士、議論が紛糾する国防相と政治家たち、敵陣で危ない橋を渡らざるを得ない現地エージェント……四つ巴の様相である。
どう決着をつけるのかドキドキheart01してしまう。

結局のところ、少女のことを一番考えて行動したのは現地の人間だった。他所の人間ではない。なんと武装派グループの人間さえ、助けを求められるとジープの銃座から機関銃を外して怪我人を病院へ運ぶのである。(この場面は意表をついていた)

ドローン操作担当の兵士の消耗振りも印象に残る。最近報道されたニュースで知ったのだが、実際この操縦者は離職希望が多いそうで、引き留めるために報酬を増額したのだとかdollar
離職の理由は、戦場ではないこちら側の日常との落差が激しいことと、被害の状況が手に取るように鮮明に見えてしまうからだそうだ。遠隔操作なのがかえってストレスらしい。

「TVゲームのよう」という形容が付く現代の新しい戦争の様相を、手堅い俳優たちを使って地に足ついたものとしてうまく描いていると言えよう。
ヘレン・ミレンの大佐はカッコエエけどコワ過ぎです(>y<;) アラン・リックマンは映像として姿を見せているものとしては遺作になるらしい。
監督のギャヴィン・フッドは『ツォツィ』を取って評判になった人だが、その後ハリウッドで監督した『ウルヴァリン』『エンダーのゲーム」』は全くパッとしないもんだった。ようやく本領発揮か。

ところで、アラン・リックマンの国防相が対立した政治家に最後に「私は地雷でやられた仲間の兵士の死体を拾い集めた。軍人にそういうこと(遠方から論議しているだけ)を言ってはいけない」というような意味のことを述べる。これが他の感想を見ると、結構共感を得ているようだった。
だが、上には上がいるものだ。『ハウス・オブ・カード』という政治ものTVドラマでは大統領夫人が同じようなことを言われてこう切り返すのである。「なによ、あなたなんて誰かに命令されて立っていただけじゃないの。私の夫は毎朝、必死で大きな決断を下しているのよ」だそうだ。

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2017年1月29日 (日)

「インフェルノ」:地獄に仏か、はたまたラングドンか

170129
監督:ロン・ハワード
出演:トム・ハンクス
米国2016年

このシリーズ、原作は読んでいないけど映画の方は『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』と、ちゃんと見ていたのであった。

その度に「トンデモ」と感想書いているのだが、すっかり忘れてまた見に行ってしまう私は学習能力ゼロと言われても仕方ないであろう。
もちろん今作も間違いなくトンデモであったよ(@∀@)

色んなアクシデントが起こって、あまりにテンポが速く、様々な人物が出現しては消えてチャカチャカと進む(しかし、その割にラブシーンは長くてかったるい)。一応事件の説明はあったかもしれないのだが、よく分からない。単にこちらが理解できてないだけか。

そもそもウィルスばらまき騒動をたくらむ富豪の意図がよくわからん。人口減らしてどうするの? そんなことやったら社会のインフラが消滅して一気に原始時代に逆戻りではないか。
あと、WHOがまるで世界の保健衛生を守るためには先頭も辞さずみたいな武闘派組織になっているのには笑った。
そのWHOのアフリカ系職員の立場が不明。なんか別の組織に属してたっけ?
富豪の依頼を引き受ける企業(組織?)のインド系のボスは、大勢の部下がいるのになんで一人で現れるの?

主人公ラングドンは「宗教象徴学」の教授としてイタリア史についてウンチクを語るが、ほとんどイタリア語が理解できないというのはいかがなものか。幾らなんでもラテン語はできるんだろうがな。
ダンテのデスマスクを素手でひっつかんで持ち逃げ--って、あれはイタリアの国宝級のものではないのか? イタリア人、怒るんじゃないの。
まあ、どうでもいいことばかりですが)^o^(

かくなる上は、ラングドン教授にはぜひ日本に来て三種の神器を持って暴れて欲しいもんである。なに(^^?)日本ではキリスト教ネタがないって?
いや、青森にキリストの墓があるではないかsign03 しかし、そうなると頭にすぐ浮かんでしまうのは「みなでぱらいそさいくだ」という諸星大二郎の「稗田礼二郎シリーズ」の名場面なのであった……。
彼が日本で活躍する余地はなさそうである。


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2017年1月10日 (火)

「歌声にのった少年」:ビザはなくとも歌えば英雄

170109
監督:ハニ・アブ・アサド
出演:タウフィーク・バルホーム、カイス・アタッラー、
パレスチナ2015年

2013年にエジプトのTV番組「アラブ・アイドル」(中東版「アメリカン・アイドル」)で、優勝して一躍ヒーローとなったのが、ガザ出身のパレスチナ青年ムハンマド・アッサーフ。彼の生い立ちを映画化したものである。事実80%、フィクション20%とのことで、かなり実話率は高い。

なんでこれを見に行く気になったかというと、監督を『オマールの壁』のハニ・アブ・アサドが担当しているからだ。

子ども時代、活発で頭が良くてガキ大将の姉と共にバンドを始める。婚礼などのイベントで演奏しながら日銭を稼ぐも、なんと姉が突然病気で亡くなってしまう。
一度は音楽をあきらめかけるが、成長してタクシー運転手をやりながら歌手を目指すのであった。

スカイプでオーディション番組に参加するも電力事情が悪くて停電で中断ng--なんて笑っちゃいかんが笑ってしまう。
意を決してビザを偽造してエジプトへ行き「アラブ・アイドル」に参加しようとするが、なんとチケット(応募券&整理券みたいな感じか)がないと入れなかったban さあどーするよ。

……と、完全に立身出世物語のフォーマットを取っている。監督の過去作とは違って、のんびりとした演出・編集だ。依頼を受けて作ったんで作風も変えたということか。

実際にガザ出身の子どもを起用した子役たちは元気いっぱいで、見ているとこちらも活力を貰えるようだ。一方で、主人公が青年になってからのガザの撮影は当地にロケしたそうだが、ガレキだらけの街の光景に言葉を失う。

そんな状態だから主人公が優勝したというのは、パレスチナを鼓舞してエライ騒ぎになったらしい。
なぜか最後のステージ場面で、それまで俳優が演じていたのが突然ご本人にすり替わって登場(!o!) さらにものすごく熱狂する市民の姿も、実際にその時撮影された映像が使われているのだった。

感動的ではあるが、ここで当然疑問が浮かぶ。
最後にご本人がすり替わって登場するなら、むしろ最初から実物のムハンマド君を主役にして撮ればよかったんじゃないの(^^?)
ところが、本人はオーディションを受けたが合格しなかったらしい--ということはよほど演技が下手だったのかね。(劇中の歌も本人の吹替えではない)
ちょっと、このラストはビックリしてしまった。

伝記ものよりもアラブ歌謡愛好者に推奨。途中で歌われている歌の歌詞には字幕付けて欲しかった。当然、その場面に合わせて選曲されているはずだろうに。手抜きであるよ。

子ども時代にパーティーでバンド演奏している場面で、男たちは乱闘寸前みたいに歌って踊り狂っているのに、ヘジャブ姿の女たちはじっと片隅に座って無表情で聞いている光景が何度も出てきて、なんだか強く印象に残った。

ところで、公開に合わせた監督のインタビューを読んだら、なんと『オマールの壁』はまだ資金が回収できていないとのこと。
えーsign03どうしてじゃっ(~_~メ) あんなに出来がいいのに~。
監督によると、どこでも客が入るのはハリウッド・エンタテインメントのような娯楽大作で、アート系劇場で公開されるような作品は採算が取れないらしい。寂しい話である。


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2017年1月 7日 (土)

「コロニア」:予想せぬ衝撃

170107
監督:フロリアン・ガレンベルガー
出演:エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール
ドイツ・ルクセンブルク・フランス2015年

チリに移住した元ナチスが作った、実在したカルト集団を題材にしたサスペンスである。そこでは軍事政権と結びつき銃器・化学兵器などを製造し、閉鎖的な施設内では暴力や少年虐待が横行していたという。

ドイツの航空会社で客室乗務員を務めるヒロインは、チリで社会運動にも関わるドイツ人カメラマンと付き合っている。ちょうど彼女がチリにいる時に軍事クーデターが勃発impact 恋人は逮捕されてしまうが、カルト集団の施設に送られたことを突き止める。
かくして、彼女はその施設へ潜入するのであった。

ショッキングな史実に基づいていて、映画の中でも暴力的な教団の内部が描かれているけど、どうも展開に今一つ説得力がない。恐らく脚本のせいだろう。
教祖役はスウェーデン版の『ミレニアム』に出ていたミカエル・ニクヴィストが演じているんが、怪物的であってもカリスマ的魅力がある人物には全く見えない。ちょっと演説したぐらいでみなが熱狂したりひれ伏したりするようには思えず、「教祖だから教祖なんだ」と納得するしかないのである。そういう描写が全く入ってないからだ。

それに終始ムスっとした表情でやって来て、つっけんどんに口上を述べるヒロインを教祖が受け入れるのも謎である。アヤシイのを承知で入れたのかと思ってたら、そういう訳でもなかった。
まあ、サスペンス場面ではハラハラはしたけれど、よくよく考えると登場人物たちが無鉄砲な行動をして突っ走るのが原因なのであった。無理やりハラハラさせんな<`ヘ´>

折角のエマ・ワトソン&ダニエル・ブリュールの組合せだというのに今一つ……どころか今五、今六……今十downぐらいに思ってしまった。

それよりも衝撃的だったのは、まだ事件が起こる前の二人がいちゃついている場面だ。なぜか突然、ブリュールの「裸○プロン」が出現するのであるdanger 

な、なぜに裸エ○ロン!(☆o◎;)

これには驚いた。
はい、そこの奥さん、他の映画なんて見てるどころじゃないよ。彼の出演映画は数あれど、裸エプ○ンが拝めるのはこの『コロニア』だけ! ファンなら絶対見なきゃソンソン。

推測するに「エマ、君が脱ぐなら僕も脱ごう」なんてことに勢いでなったのであろうか。だが、ラブシーンがあるというのにエマ・ワトソンの方はこれっぽっちもempty何一つngかすりもせずban見せないのだよ。
一体どうなっておる(-"-) これでは期待していたエマたんファンはガッカリであろう。それとも「エマが脱がないなら代わりに僕が脱ぐpunch」とダニエルが漢気を発揮したのかもしれない。

彼が達者な演技を見せる場面もあり。ということで、ダニエルのファンには猛プッシュで推薦したい一作である。
……えーと、なんの話だっけ(^^?)。

ちなみに教祖は逮捕されたものの、この教団は現在も存続中だそうだ。恐ろしいban
エマたんは60年代スッチー姿よりひっつめ髪の方が似合っていたので、歴史物なんかが向いているんじゃないかな、なんて思いましたよ。

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2016年11月24日 (木)

「イレブン・ミニッツ」:退屈な人生も何回も繰り返せば面白くなるだろうか

161124
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:リチャード・ドーマー
ポーランド・アイルランド(2015)

スコリモフスキ監督の新作はその題名通り、とある「11分間」の間に起こった出来事だけを切り取ってを多数の人物ごとに繰り返し描くというものである。
同じように、限定された時間を幾つかの視点から繰り返していくというのはさほど珍しくない手法であるが、11分間という時間の短さと視点をもつ人物の多さを考えると、かなりユニークだと言えるだろう。

その11分間を体験するのは11人と一匹(の犬)である。バラバラに始まる彼らの夕方5時、少しずつそれぞれに進んでいきながら、最後に一点に集束する。
街の上を低空飛行する旅客機や、巨大なノイズや、正体不明の黒い印が不安をかきたてる。世界の終末がやってくるのか……(>_<)

ただ、それらの不安を表象するものがコケおどかし--と言って悪ければ、思わせぶりと言おうか。深い意味を持つという訳でもなく、ただ並列的に描かれているだけなのだ。
正直「最後に一体どうなるのか?」という興味を持って見てない限り、各エピソードはやや退屈に感じてしまう。ラスト自体は見る者の予測を超えるものだったけど。

どちらかというと、アトラクション的でありクールでトリッキーな作品である。最初、映画館に入った時に客席が若者ばかりで驚いたのだが、なるほど若いモンはこういうのが好きなのだなあと思ってしまった(^^ゞ
中高年層で満杯だった『トランボ』とか『ニュースの真相』のように、役者の名演が感動を巻き起こし涙を呼ぶ、みたいなのとは対極の世界だ。

監督ももうかなりのトシ(78歳かsign03)なのに、そういう意味では非常に若々しくて驚く。
それと、「女優」役の女優さんは超美人(!o!)で見ていると目がくらむですよ。

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2016年11月 3日 (木)

「奇跡の教室」:人生に解答なし

161103
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:アリアンヌ・アスカリッド
フランス2016年

フランスの高校の落ちこぼれクラスが、アウシュヴィッツを題材にした発表で歴史コンクールの優勝に至るまでを描いた作品。実話を元にしているという。
予告では感動系な話になっていたが、見てみるとドキュメンタリー風の淡々とした作りになっていた。

問題のクラスは学級崩壊寸前、ベテラン教師が担任していてかろうじて形を保っているが、若い臨時教師なんか来たらイビリ倒してしまう。教師にとっては悪夢のような光景だろう。生徒同士のいじめや反目もある。
このままではイカンと担任がなんとかコンクールに参加を促すが、離脱するヤツあり、班同士でいがみ合ったりする。

合間にはフランスの学校での宗教問題が挟まれる。毎朝、校舎の入り口には教師が立ってイスラム教徒のスカーフを取らせる。あらゆる宗教シンボルはダメなので、キリスト教の十字架も禁止。それ以外に帽子やイヤホン……制服はないが日本と同じぐらいに厳しいかも。それどころか、放置していると保護者から文句が来るらしくて大変だー。
29もの民族が在籍しているというのだからそれも道理か。
一方で、ISもどきを気取る原理主義者生徒もいて校内を徘徊している。

かような状況をテンポ早く描き、感傷に陥る暇もなく、あらゆる問題がすし詰め状態となって続く。
そして、多くの問題は解決されることなく終了するのだった。問題を抱えた生徒がここに問題を解決できるはずもなく、そのまま続いていくものだからだろう。
従って、ベタな感動を求める人には全く向いていない映画である。
担任役のアリアンヌ・アスカリッドはまるで本物の教師のよう……って、役者なんだから当然ですね、ハイ(^^ゞ

そんなバラバラの一団がなんとか協力する術を見つけ、読みなれぬ資料を読み、ミュージアムを訪れ、コンクールへ参加する。
しかし、私が一番衝撃を受けたのはその本筋ではなく、アウシュヴィッツの体験者をクラスに呼んで話を聞く場面であった。彼は本物の体験者で(撮影後に死去)、生徒を演じる若者たちの前で話しているわけだがその内容は涙なしに聞けないものである。
その彼が生徒の質問に対して「神を信じていない」とキッパリ断言したのであるthunder

宗教・民族問題に汲々とする現代の若者たちの前でのその発言は、そのような争い自体を無化してしまう深い衝撃を与えるものであった。
そう言えば、数学者のピーター・フランクルの父親が(母親も?)収容所体験者で、やはり信仰を捨てたということだった。
強制収容所の前には神は存在しない、のであろうか。

かような内容なせいか、映画館内は中高年の客ばかりで若者の姿はなかった(^_^;)


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2016年10月16日 (日)

「ゴーストバスターズ」:女の友情と機械と幽霊

161016
監督:ポール・フェイグ
出演:メリッサ・マッカーシー
米国2016年

初代『ゴーストバスターズ』は映画館で見た。米国で大ヒットというのが日本でも結構評判になってヒットしたと記憶している。ただ、マシュマロマンについては米国の観客に大ウケというのが今イチ理解できなかった。(今でもよく分からんdash

--てなことぐらいしか覚えていないのであるが、過去作を復習したりせずにリメイク、じゃなくてリブート版見に行きました~)^o^(

主要キャラクターがオリジナルと男女入れ替わっているので評判に……どころか、公開前から誹謗中傷の嵐が吹き荒れたtyphoonというのでも話題になりましたな。
クリス・ヘムズワースの美男秘書も前作を踏襲しつつ、これまた男女逆転しているが、あまりにおバカ過ぎるんで言葉を失うというような人物を嬉しそうに演じていましたな。

前半から中盤の、4人が集まってお化け退治開始のくだりは爆笑する場面とそうでもないところが交互に出てきて、見てて困ってしまった。
彼女たちはSNLで人気だそうだが、TVのギャグのテンポを映画にそのまま持ち込んで間延びしてしまった印象。これは演出の問題だろう。

後半のアクション場面になると展開が生き生きとしてくる。ただ、登場する人形とか清教徒のパレードとか米国人でないとよく分からないネタが多い。前作に出ていたキャラがそこここに出没する。幾つ見つけられるかな、というお楽しみもあり。

また、80年代ネタのギャグも多かったので、軍隊や警官が踊る場面ではてっきり「スリラー」みたいにそのまま迫ってくるのかと予想してたら、結局何もなかった。よくよく考えるとあれはゴーストではなくてゾンビでしたな(^^ゞ

終盤の救出作戦でのエリン&アビー「女の友情」には萌えましたっheart02
キャラクターとしては、巷ではホルツマンの人気がやたらと高いのだが、なんだかモロ「男の子」がそのまま女に横滑りしたみたいで、個人的にはあまり興味を持てなかった。ただ、ラストのレストランでの「演説」は感動したっ(^o^)丿
4人目のパティについては折角の「NYを知り尽くす歴女」という設定なんだから、1時間ぐらいウンチクを語り倒して他のメンバーを圧倒する、というような場面が欲しかったところだ。

全体としては役者はいいし、下手に恋愛ネタなど出て来なくてスッキリしているけど、演出に難ありというところだろうか。果たして続編は作られるのかな……(^^?)


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2016年9月18日 (日)

「AMY エイミー」:成功と不幸

監督:アシフ・カパディア
イギリス・米国2015年

見ようかどうか迷っていたが、この日、お目当ての映画が満員御礼だったので急きょ見ることにした。
アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を取り、日本での評価も高かったけど、なぜ迷っていたかというと、私はエイミー・ワインハウスのことをほとんど知らなかったからである。多分、不慮の死を遂げたというニュースで名前を聞いたのが初めてではないか。

2011年に27歳でアルコールが原因で死去--ということで、既に気軽に映像を撮っては記録しておける時代ゆえ、公式だけでなくプライベートやらパパラッチやらの映像がふんだんに使われている。
さらに昔からの友人、バンドのメンバー、ミュージシャンなどのインタヴューを、ナレーションなしにつなげていく形式である。編集はうまく、私のようにほとんど彼女のことを知らない人間でも飽きることなく見られてよく出来ている。。

元々はベッシー・スミスなどの昔のジャズ歌手に憧れ、アルバムを出して地道に活動する--はずが、思わぬ大ヒット曲が出て一躍スターに。
以前からアル中だったのが悪い男がくっついてヤク中に。さらに、子どもの頃は別居していた父親がバックステージ・パパのように強引にスケジュールを仕切るのであった。

と、なんだか過去にも様々なミュージシャンや役者にあったトラブルが凝縮されている印象である。
ただ、昔だと単にこんな背景があったらしいよと風の便りに伝わってくるものが、現在はダイレクトに映像付きで見られてしまうのが異なるところだ。

不在だった父親の代わりとしてか、依存的にベッタリとしてしか男を愛せず、またその父や男を含む周囲が更生や健康な生活をはばむという悪循環。もう誰にも止められない。破滅へとまっしぐらだ。
そんな中での「ドラックがないと全てが退屈」という言葉は衝撃である。

デビューしたての頃のTV番組のしっかりした受け答えを見ていると、下手に大ヒットしてしまったのがいけなかったのかなと思えてくる。そういえば、自殺したカート・コバーンも「ソニック・ユースぐらいに売れればいいと思ってたのに、こんなに人気が出るなんて」とボヤいていたのを思い出す。

それを考えると、U2とかさらにはストーンズのような長寿バンドなんか、色々と言われながらも長年音楽活動をトップで続けてきているということは、鋼のような神経を備えているんだろうな、などと思ってしまった。

彼女の声はクセがあって(歌い方はビリー・ホリディにも似てる?)やはり苦手な感じだ。私生活を題材にした歌というところも。
死後とはいえ無名時代のプライベートな映像(アカンベーしてるような)を公開されてしまうのも、つらい感じである。

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