映画(タイトル「サ」「タ」行)

2018年7月14日 (土)

「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」:ドライヴ・トゥー・フリーダム 決死取材は片道切符

監督:チャン・フン
出演:ソン・ガンホ
韓国2017年

光州事件、当時新聞で見た記憶があるもののその内容はほとんど知らなかった。
韓国でも現在の政権になって風通しが良くなったせいだろうか、過去の事件の内実を暴いたものが堂々と作られてヒットしているようだ。

事前の宣伝だと、在東京のドイツ人記者が民主化運動弾圧の噂を聞きつけ、韓国へ。そこで出会ったタクシー運転手と共に、事件が起こる光州へ潜入する。その二人の絆を描く実話……というような印象だったが、若干違った。
これは「タクシー運転手同士」の絆の話だったのであるsign01

こういう過去の大事件を取り上げつつもエンタメの基本を押さえているのには恐れ入る。笑い、涙、サスペンス、アクション、社会性--ありとあらゆるものが入っている。ラストは怒涛のような感動である。
137分とは思えないほど。見ててあっという間に経ってしまった。

しかし、正直なところ事件自体が悲惨で衝撃的である上に、感情表現が過多なので、そのタブルパンチで見てて倒れそうになってしまった。もうお腹いっぱい、これ以上何も入らねえ~(@_@)
いや、けなしているわけではないんですよsweat01

作中ではソン・ガンホ演じるタクシー運転手はかなりいい加減な奴であり、金になりそうな仕事なので、英語もロクに出来ないのに他の運転手から依頼を横取りした、という設定である。
しかし、実際には以前から記者とは知り合いで、英語も話せて外国人ジャーナリストをよく乗せていた人だったという。

また、ハラハラドキドキと感動をさらに5割増しさせ、運転手の絆を強調するラストのカーチェイスもフィクションとのことだ。
一方、ドイツ人記者の方は何を思いどう考えていたのか、ほとんどその内奥は描かれない。徹底的な他者である。従って、運転手仲間の方に比重が置かれ感情移入するのは当然だろう。

毎度ながらソン・ガンホは名優ぶりを発揮。「いいヤツ」で子ども思いだが、ずる賢く打算的なのが、終盤に向かって変化していく--というような役柄だ。こういうある意味ベタな役をやっても嫌みがない。
それを支える他の運転者役の「地味顔」(←誰かの感想で見かけた表現)な方々(韓国映画でよく脇役で見かけるけど、いまだ名前憶えてないm(__)mスマヌ)もグッジョブであった。

ところで、邦題の「約束は海を越えて」について「韓国とドイツは地続きだ!」という指摘あり。確かにそうだわ(・o・) まさに日本の「島国根性」的表現というところか。

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2018年4月24日 (火)

「シェイプ・オブ・ウォーター」:イリーガル・エイリアン 鰓から愛して

180424
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス
米国2017年

遂にヲタク監督がアカデミー賞をcrown しかも監督賞と作品賞だっ。感動と涙に包まれた授賞式fujiおめでとうヽ(^o^)丿
もちろん期待を目いっぱい大きくして映画館へ向かったのは言うまでもない。

しかし、またも期待は裏切られたのだよ(ーー;)
シリーズ「期待したけどダメだった」パート3だ。(なおパート1パート2はこちらであります)

『美女と野獣』をひっくり返したような「美人でもない中年女と半魚人」の恋である。事前にあらすじを耳に挟むにつれ、こりゃ、どうもおとぎ話的ファンタジーじゃないということが分かってきた。
となると、私としては「卵生の魚と人間では生殖器の構造が違い過ぎて、どうやって××致すのであろうか(^^?;)」な点がすごーく気になってくるのだったdash
実際見てみると、冒頭からヒロインの風呂での○○場面が出てきて、エロさ回避しません宣言がなされるのである。

彼女はロクに姿も見てない(オスかメスかどうかも不明)囚われの半魚人を、積極的に自分から誘う。どうして誘うかは不明である。
もっとも、相思相愛的雰囲気になってからは純愛モードになる。しかしドタバタの脱出劇の行く末は、グロと暴力となるのだった。

ハンディキャップを持つヒロインを助けるは同僚の黒人女性、隣人のゲイの画家、ソ連のスパイ。対する敵役は--M・シャノン演じる男は、かつて彼が『ボードウォーク・エンパイア』で演じた捜査官をそのまま持ってきたようなヘンタイ野郎である。

冷戦下の時代だから軍の陰謀やスパイ話が出てきても不思議ではないが、マイノリティの問題を入れて、「美女と野獣」だけでなく「人魚姫」や「シンデレラ」、あるいは往年のミュージカル映画の数々(ヒロイン名は『マイ・フェア・レディ』?)など様々な要素を散りばめて、さらに全体の雰囲気はJ・P・ジュネ(&キャロ)っぽいという荒業は見事なもんである。よく出来ていると感心した。

しかしながら、納得できない点が多々あり、感心もいささか薄まってしまう。
そも冒頭から一瞬しか見てない半魚人を誘惑しようとしたのか描かれてないし、同僚は彼女から××したと聞いても全く驚かないし(いくらなんでも少しぐらい驚くんじゃないの)、半魚人は終盤では全知全能の神様みたいになっちゃうし……だったら最初からその力発揮しろよと思っちゃう。
風呂の場面もなんだかわざとらしくて白けてしまった。S・ホーキンスがやはり出ていた『パディントン』でも似たような場面があったが、参考にしたんだろうか。まあ、雰囲気は全く異なるけど。
それから、川で捕まったのになぜ塩が必要なのか(?_?)という案件もありましたな。
おとぎ話って、別にいい加減な話ということじゃないよな。なんだか、B級物語をA級の技術で描いたみたい。

というような事情で、今一つ素直にノレなかったのだった。
もちろん、役者の皆さんの演技はA級。段々キレイになっていく主役のサリー・ホーキンス、手話で必死に喋る所は迫力だ。
オクタヴィア・スペンサーは定番の「善意の隣人」ならぬ「善意の同僚」役だが、ここまで来ると立派な職人芸である。M・シャノンのヘンタイ悪人も職人の技であろう。

さて、もう一つこの映画は「美人でもない中年女の性欲を素直に肯定している」ということでも評価する意見がある。
しかし、ひっくり返して考えてみると美人で若くてキラキラした女の子shineがヒロインだとして、そんな娘さんが風呂の中で○○したり半魚人を誘惑したり、どこかへ行っちゃう……などという話を許容できるだろうか。よーく考えてみて欲しい。

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2018年4月16日 (月)

「スリー・ビルボード」:ファイア・パトロール 非のない所に看板は立たぬ

180416
監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド
イギリス・米国2017年

町はずれに立つ、3枚の古く巨大な赤い看板。そこにレイプ殺人の事件捜査が遅々として進まぬことへの警察批判が掲げられた。怒り発心annoyで広告会社に依頼したのは、被害者の母親である。田舎町は大騒動に……。
こりゃ面白そうだ。おまけに映画賞に幾つもノミネートされ、二人の役者はアカデミー賞大本命(私が見た時点では。その後受賞した)。詰まらないはずがないnotes

しかし、期待は裏切られたのだよ(ーー;)

極端な設定で話を次々と展開していくのはいいけど、いかんせんわざと過ぎるところが目立ちすぎませんか(^^?)

署長はあんなにマメに手紙を書いたんだから、ついでに新聞社に「今回の件は彼女と関係ありません」ぐらい送ってやれよ。→主人公、さらに窮地に。
犯罪者でもない人を一人窓からブン投げてお咎めなしの警官。いや、これは米国のド田舎は実際そんなもんかも(>y<;)コワー
そしてブン投げられても許す男。ここは感動的場面と決まっている。
さらに改心する男。ここも上書きで感動だ。
突然の鹿登場。抒情的場面(やはり感動)。

それから火事……私は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の冒頭で、小枝グルートが踊ってる場面を思い出して笑ってしまった。だって、あれで気付かないって不自然じゃないのsign02 あと「裏口はないのか?」とも思っちゃった。

監督脚本は英国人の劇作家らしいが、わざと不自然なほどに極端な設定をした上で、それをひっくり返すような行動をさせたり、異なる一面を見せれば感動が生まれる--というのが彼の作劇術なのかね。

まあ、自分の性格&体質に合わんものを見てしまった(+o+)ということで仕方なかろう。
それでも役者の方々の演技は立派。主役のフランシス・マクドーマンドと「悪い警官」役のサム・ロックウェルがオスカーを手にしたが、特にマクドーマンドの後ろ頭の剃り上げがスゴイshadow 触ればジョリジョリと手に刺さりそう。
ルーカス・ヘッジズが真面目な息子役で地味ながら登場。実はこの子が一番とばっちり受けてんじゃないの?という印象だった。


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2018年4月 9日 (月)

「デトロイト」:ミッドナイト・モーテル 暴動の響き

180409
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ
米国2017年

おお、久しぶりの社会派バリバリのドラマだ~shine--と期待して映画館に駆け付けたのだが、それは全くの見込み違いであった。

1967年に起こった黒人暴動を背景に行われた警官3人+警備員1人による事件。多くが存命中の各人の証言を元に復元(?)されているので、不明瞭な部分は不明瞭なままなのである。裁判沙汰になったのだから、ウッカリしたことは言えないだろうから曖昧になってしまうのは仕方ない。
ただ、映画の方も不明瞭になってしまっては元も子もないのではないか。

例えば、警備員(黒人)が持ち場から離れて、犯罪の舞台となったモーテルまで行ってウロウロしていたのはなぜなのか。いくら暴徒を警戒するったって、やり過ぎでは(?_?)と思っちゃう。

それから白人警官たちが発砲事件尋問で行う「死のゲーム」も謎である。これはそのモーテルにいた全員が発砲を見たという仮定でなければ成り立たない。
早い話が、たまたま「死人」役の男が実は単独で隠れて発砲してたのだったら、他の者は何も知らないのだから、長い時間かけて幾ら脅しても無駄である。
となれば、このゲームは単にその場にいた住人たちをいたぶるためにやっていたに過ぎないのでは?……というような当然の疑問については、この作中では言及されない。
「玩具の銃」についてもよく分からない。

煮え切らない証言をそのまま再現した映画は、煮え切らないままに終了するのである。
別に唯一の「正解」を求めるわけではないが、「えーと、あなたのお考えではどうなんで?」と作り手側に聞きたくなっちゃう。

さもなければ、これは尋問に合った黒人たち(+白人女性2人)の理不尽な恐怖だけを観客に体験させるものなのであろうか。だとしたら、社会派風に見せるのはやめてホラー映画だと言っていただきたい。

ただ、尋問場面をウリにするには前半が長過ぎだった。
それと群像劇の形を取っているが、視点が分散し過ぎてとっちらかっている。心情を描くのは歌手だけにしといた方がよかったのでは?

過去に見たビグロー監督の作品(「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」)いずれもやはりおなじ印象を受けた。
どうも、ビグローとは相性がよくないようだ。

日本ではアカデミー賞候補確実flairと見込んで時期をずらして公開したようだが、残念ながら全く候補に入らなかった。そもそも米国では全くオスカー狙いではない早い時期の公開だから無理だったろう。
「悪い警官」役のウィル・ポールターは助演男優賞にノミネートされてもよかったかも。でもサム・ロックウェルと役柄がかぶっちゃうから、どのみちダメだったろうね。


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2018年3月12日 (月)

「残像」:戦争に勝ち革命に裏切られ権力に負けた

180312
監督:アンジェイ・ワイダ
出演:ボグスワフ・リンダ
ポーランド2016年

アンジェイ・ワイダ渾身の遺作は、ポーランドの画家ストゥシェミンスキの最後の数年を描くものだ。
この画家は第一次大戦で片手、片脚、片目の視力を失ったという。その後、画家としての名声を得て、第二次大戦終了後は大学で美術を教えている。面白そうな授業が、短いながら描かれる。

しかし、そこへソ連の影が覆い始める。アトリエの窓に赤い旗が降りてきて、部屋が真っ赤になってしまうのは極めて印象的な場面だろう。
アヴァンギャルドな抽象絵画を描く彼に大学は共産主義を賛美するリアリズム作品を求めるが、それは到底無理な話だ。かくして、展示室から彼の作品は外され教授の職もクビになってしまう。無職では配給切符も貰うことができず食料も絵具も入手できない。
支える教え子たちも逮捕されたりして周囲から去っていく。

誠に陰々滅滅とした展開といえよう。ラストシーンに至ってはさらに追い打ちをかけるようだ(> <)
半身を国家に捧げたにもかかわらず、最後はこの仕打ちである。体制の如何を問わず、権力が個人をやすやすと叩き潰せるのを容赦なく描いている。
画家の人生に託して監督自身を描いているからだろうか、何やら恨みの感情がヒシヒシと伝わってくるのであった。

もっとも、娘(中学生ぐらい?)が登場するエピソードはまた別の色合いを見せていた。母と共に別居していた少女は体制に順応して生きているが、父親の愛人の存在にはガマンできない。まあ、娘としては仕方ない反応かと思うが、彼は笑ってやり過ごすのである。(正直、この娘の存在をどうとらえたらいいのかよく分からん)

ラストのクレジットの背景には彼の作品の色鮮やかなコンポジションがアニメ化されて、躍動的に動く。しかしバックに流れる曲は陰鬱だdown

芸大の講義で、彼はゴッホの絵のスライドを見せながら「絵画とは認識である」と語るのが面白かった。そして「人は認識したものしか見ていない」とも。
そういや、将棋の藤井四段(当時)は中学校で、なんで美術を勉強しなければならないのかと質問したそうだが、こういう風に答えれば良かったかもね(*^^)b


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2018年2月13日 (火)

「少女ファニーと運命の旅」

監督:ローラ・ドワイヨン
出演:レオニー・スーショー
フランス・ベルギー2016年

ドイツ占領下のフランス。親元から離れて暮らすユダヤ人の子どもたちの施設が摘発される。鉄道で逃亡を図るが、大人とはぐれてしまい子どもだけでスイス国境を目指すことになる。ほとんど放浪状態である。

子どもばかりが画面の大半を占める作品だが、極めてシビアな話だ。途中で様々な大人たちと出会っては別れる。密告する神父もいれば、親切な農夫もいる。

子役がうまくて感心。また、年齢ごとに微妙に異なる行動や反応をうまく演出で描き分けている。
同じく実話で、やはり親とはぐれたユダヤ人の少年を描いた『ふたつの名前を持つ少年』を思い出した。当時、こんな風にさまよったユダヤ人の子どもが多かったのであろう。

小さい子が「ユダヤ人って悪いの?ならやめちゃえばいいのに」と無邪気に質問する場面がさりげなくツラい。

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「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」

180213
監督:テレンス・デイヴィス
出演:シンシア・ニクソン
イギリス・ベルギー2016年

名前だけは有名だが、日本では今一つポピュラーとは言えない米国女性詩人の生涯を描く。最も米国でも評価されたのは死後だったとのこと。事件らしいことはほとんどなく内省的な日々をひたすら綴るものだ。

19世紀の清教徒的な生活とはこういうものかと思った。夜、詩を書くのも父の許可を得なければならない時代ならば、家に引きこもるのも自分の魂を守るためであろうか。

ただ「静か」過ぎるのが難。会話の切返しの繰り返しが続く場面が多く、そういう意味では「退屈」かも。観客の中にさかんにあくびするオヤジがいた。
また、見ている場面が何歳ぐらいの時なのかという説明がなくて分かりづらかった。

主演のシンシア・ニクソンは自ら望んでいた役柄ということで、まさに静かなる熱演であった。


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2017年11月14日 (火)

「セールスマン」:ショウ・マスト・ゴー・オン それでも芝居は続く

171114
監督:アスガー・ファルハディ
出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ
イラン・フランス2016年

『ある過去の行方』をフランスで撮った後、再びイランへ戻ったファルハディ監督、この新作はトランプ大統領の移民政策がらみで、アカデミー賞の外国語映画部門受賞の際にも話題になった。

冒頭、マンションの倒壊事件が起こってその住民だった夫婦が、住居探しを始める。知り合いに紹介してもらったマンションの一室に入居するが……前の入居者の荷物が残っていたりなど、どうも不審さが漂う。

そんな時に妻のレイプ事件が起こる。夫はいきり立つが、妻は警察には行きたくないと言い張る。やり場のない怒りに彼は自分で犯人探しを始める。

夫婦の思惑は常に行き違いすれ違い、修復不可能なほどの亀裂が生じる。二人は夜、所属する劇団でA・ミラーの『セールスマン』でやはり夫婦役を演じているが、劇の顛末が二人の関係を暗示しているのだろうか。

見てて、息苦しい((+_+))つらい(>_<)倒れそう_(:3」∠)_
唯一の息抜きは、女優の子どもと子猫(カワユイheart01)が登場する場面ぐらいだろう。

とはいえ、教師の夫の授業風景、乗合タクシーでの会話、冒頭の倒壊場面と終盤が重ねあわされていること(これは他の人の指摘で気付いた。ボーッとしております(^^;ゞ)など、脚本も担当のファルハディ監督は用意周到に亀裂を浮かび上がらせていく。

ネットの感想で「夫の怒りは妻を思っているのではない。彼自身の尊厳が傷つけられたからだ」という意見があって、これは大いに納得だった。

サスペンス場面の描写もなかなかにコワイ(ドアが開くところとか)。チラシに使われている場面も、緊張を醸し出す画面の分割具合が完璧である。ヒロイン役のタラネ・アリドゥスティが「監督は完全主義でキビシイ」と語っていたが、なんとなく分かるような。
ただ、唯一の問題は犯人像である。冷静に考えればとても犯行を実行できるとは思えないんだが……。

さて、妻が警察沙汰を断固拒否したのは、イスラム社会の厳格さが原因だという意見を幾つも見かけた。しかし、本当にそうだろうか?
--ということで、この手の犯罪対処に関して「先進国」でありそうな米国の事例を見てみよう。
『ミズーラ』(ジョン・クラカワー)によると、性暴力にあって警察に届け出る人の割合は20%だという。つまり残りの80%は届け出ていないのである。なお、この本は大学町でフットボールのスター選手によって起こされたレイプ事件を扱っている。もちろん周囲からは非難轟々であった……訴えた女性の方が。こんなんではとても訴える気にはならないだろう。

一方、日本ではとある統計によると被害にあって他人に相談する人は半数以下。さらに警察に届けるのは4.3%だという。
全くもって、この映画は他人事ではないのであるdanger
そういや、大昔に友人が「レイプにあっても絶対警察には行かないng」と断言していた。その時理由は聞かなかったけど。(警察への不信か)

イラン国内問題としては、むしろ劇団の内部事情の描写の方が厳しい。検閲官が来るとか、シャワーを借りてたという設定の隣人女性役のセリフが見た目とかけ離れていたりとか、辛辣である。
(この文章を書いてて気づいたんだが、「シャワー」の部分も事件と芝居を重ね合わせてるのかね?)

トランプ騒動の余波で賞が取れたなどという意見もちらほらあるが、いずれにしろファルハディは次作も要チェックな監督であるのは間違いない。


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2017年9月27日 (水)

「スパイダーマン:ホームカミング」:ソフト・ランディング クモの糸よりも軽く

170927
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド
米国2017年

過去にトビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版、と見てきたスパイダーマン、今度は15歳という年齢にふさわしい童顔のトム・ホランドが主役である。
その前に彼は『シビル・ウォー』に登場していた。その流れで、アイアンマンことスタークも関わってくる。

そこでは、メイおばさんへニヤニヤと色目を使いながらスタークが接する場面があって、その方向で進むかと思いきや、どうもそうではないらしい。何せ冒頭からメイおばさんが「あの人どうも好きじゃないわ(-"-)」とクサすという次第。扮するマリサ・トメイのエロ気爆発kissmarkかと予想していたのも大ハズレとなった。

いかにスパイダーマンになったかというような説明はすっ飛ばして、主人公ピーターは日夜ご近所の自警団活動に邁進中。張り切り過ぎてご近所迷惑になっている。
学園生活は前の二つのシリーズと比べると、皆さん優しくてほとんど苦労なしという状態だ。
さすが現代のニューヨークだけはあって、生徒たちは多様な人種構成になっている。ピーターをいびる金持ち息子がインド系(IT長者か?)というのもご時勢であろう。
悪役がスタークに仕事を奪われた中小企業の経営者という設定も、何やら今どきの景気を反映しているようで今一つ意気が上がらない。

彼は保護者監視付きのお子ちゃまなので、遠方で敵の陰謀があると判明しても行くのは簡単ではない。自分で車を駆って--というわけにも行かず、「そうだ、部活の大会をやる場所じゃないかっ(^o^)b」と部活のバスで突進だ~bus
悩みはヒーロー蜘蛛男としてなかなか認めてもらえないことと、気になる女の子がいることぐらいか。誠にお気楽な調子で、「デッドプール童貞版」と評されても致し方あるまいよ。

しかも、意中の彼女であるリズ嬢がどうしてピーターを気に入るのか不明。同じ部活をいきなりやめちゃったり復活したり、部員が危機に陥ってる時にいなかったり、さらに大事な学校行事のパーティに誘ったのに途中で姿をくらますという大失態ng ビンタ10回くらっても文句は言えません。
こんなどうしようもない主人公を許す彼女は寛容だのう(・o・) というより、そんな女子がいるんかねbomb 甚だしく疑問である。

もちろん、意外な展開があったり、怒涛のアクションシーンもあるし、感動の友情場面やスタークとのゴタゴタなどテンコ盛りであるが、やはり軽量級の印象はぬぐえない。

一番ガッカリしたのは、クモの糸で飛び回るスパイダーマンならではの躍動感を味あわせてくれるシーンがなかったこと。これまでのシリーズにはあったのにね。それとも、こちらが慣れちゃったのかしらん。
加えて、蜘蛛男が出没するのは当然夜が多いのだが、画面が暗くって何が起こっているのか見にくいことが結構あった。何とかしてくれい。

ところで、キャプテン・アメリカがお尋ね者なのに州の方針で(?)学校で見せる教育ビデオに出てるってのはどういうこったいsign02 州知事がファンなのか(^^?)


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2017年9月10日 (日)

「人生タクシー」:ノー・ストップ 赤信号は完全無視

監督・出演:ジャファル・パナヒ
イラン2015年

国から監督禁止命令を受けたイランの映画監督が「失業中につきタクシー運転手」という設定で、自ら主演した疑似ドキュメンタリー風作品である。
すべて映像はタクシーの車中カメラか、途中で乗ってくる姪っ子が持ってるカメラ(あるいはスマホ映像も)からのものになっている。

当然色んな人が乗ってきて、様々なことを喋る。見てて驚いたのはイランのタクシーというのは乗合になっていて、座席が空いてればどんどん途中で客を乗せてしまうのだ。で、その客同士が討論始めたり、怪しいDVD(といってもハリウッド映画だが)密売始めたり……。交通事故で瀕死の重傷の人間を病院まで運んだりもする。

それらの会話の中に監督の過去の話や、映画製作の規制(かなりバカらしいものが多い)や、国への批判がチラチラと出てくる。特に小学生の姪っ子が怖いものなしでキビシイことを言いたい放題なのが笑える。
こんなこと言って大丈夫なのか(?_?)と思ったら、やはりイラン国内では上映できないとのこと。

ドキュメンタリー仕立てではあるが、冒頭が強盗の話から始まりそれを最後まで引っ張っていってちゃんと落ちがあるので、きちんとしたシナリオによって撮っているのが分かる。お見事m(__)m

冒頭に日本のドキュメンタリー作家とアーティスト(?)による数分間のコント風な映像が上映されたが、正直「日本、平和だなspa」という感想しか浮かばなかった(-"-)

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