★「DUNE/デューン 砂の惑星」
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ
米国2020年
★「デューン 砂の惑星PART2」
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ティモシー・シャラメ
米国2024年
★「砂の惑星」
監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクラン
米国1984年
過去の作品を見た限りではどうもヴィルヌーヴ監督とは相性が悪い。『砂の惑星』を再映画化したと知っても敬遠していた。
しかし正月に大作ものを見たくなりパート1をオンデマンドで鑑賞。前半見たなら後半も見ずばなるまい。どうせ見るならIMAXだっ⚡ということで料金を奮発。なお原作は第1部を学生時代に(今を去ることウン十年前)読んだ……が当然忘れている。
そもそも原作は砂漠で啓示を受けたムハンマドをモデルにしているそうで宗教的側面が強いのと同時に、「未開の民族の女戦士と知り合いそれを踏み台にして彼らのリーダーとなる」という定番の英雄譚でもある(「白人酋長」ものというらしい)。
バート1は前哨戦という感じで、皇帝率いる帝国で二つの領家が衝突、お家騒動があってさあどうするよ--だが、SFというよりはなんとなく『ゲーム・オブ・スローンズ』ぽい。まあ、こちらの原作の方が元祖だけどさ。
ゲースロと違うのは、砂漠の惑星アラキスで住人によるゲリラ戦が起こっていること。主人公がそこに巻き込まれていくこと。加えてコワい女性宗教集団ベネ・ゲセリットの存在もあり。宇宙のお家騒動話ともどもアクションやら戦闘場面を交えてまとめているのは大したもんである。
予告ではゼンデイヤが大きく活躍していたが、実際には終わりの方にちょろっと登場しただけで終了。観客の期待を大いに裏切ってくれた。後半が間延びしていて、主人公は中途半端なまま。次作を前提にしているとはいえもう少し何とかならなかったのか。
ただ、ヴィジュアルや音響はド迫力💥お見事の一言である。
主役のT・シャラメは実生活では色々言われているが(;^_^A 役者としての才能は疑いようがないだろう。
パート2は引き延ばし感があった前作に比べて、今度はギュウ詰めで消化不良で胃もたれし見てて疲れるほど。さらに豪華すぎる出演陣がそれに拍車をかける。レア・セドゥなんかもったいない使い方だ。
敵役ハルコンネンの暗い「帝国」描写は、なんとなく洗練されたイモータン・ジョーの砦ようにも見えた。
完成度高く終わった後の満足感は大きかったが、「こんなもの見たことねえ~~」と驚くような場面はなかった。それと話の途中が飛んでいるようなところが何カ所かあったのも謎である。そのうち完全版で補足されるとか?
大画面3Dで役者の顔のドアップを見せられるのはキツかった(^▽^;) ついでに音が大きいのもまいった。デカけりゃいいってもんじゃねえぞ💢
相性悪い監督だけど、ここまでまとめた力業は認めねばなるまいよ。
事前にパート3もあるらしいと噂が流れてきたが、最後まで見ると続きを作る気満々のようである。原作の第2部まで踏み込むらしいが、今作の結末が原作と異なっている(ゼンデイヤ扮するチャニの動向)のでどうするのかね。さらにまた豪華出演陣を投下するのか。TVドラマシリーズにするのだけは止めてほしい。
リンチ版と原作にあった変態味がなかったのは残念である。
結局、リンチ版もオンデマンドにあったので見直してしまった。公開時に見て……その間にレンタルビデオでもう一度くらいは見ただろうか(?_?) とにかくほとんど忘れていたのは確か。でも途中で思い出したところもあった。
で、印象を一言でいうと
変態❕残酷❗醜悪❗❗
正確には三言ですね(^^;
これらの要素はヴィルヌーヴ版にもあったという意見あるかもしれないが、やはりリンチは性根が違うと言わざるを得ない。隠そうとしても滲み出てきてしまうものが……まあそもそも隠そうとしていないのだが。双方ともレーティングはGだが、こちらは「良い子」はもちろん「良い大人」にも見せられねえ~🈲
1万年後ぐらいの未来世界のはずが、冒頭からなんだか古めかしい軍服やら宮廷場面が登場する。どこかで見た覚えが--と思ったら『アラビアのロレンス』だった。かなり意識しているように見える。確かに植民地(星)での特殊な資源の収奪戦というのは、当時の中東情勢と重なる。
それからヴィルヌーヴ版ではほぼ省かれていた宙航士のギルドが第三の勢力としてしっかり登場する。その醜悪な姿には思わずギャーと叫びたくなるが、皇帝を恫喝するほどの権力を持っているのだ。(なぜ彼らの存在を省いたのかは不明。話が分かりにくくなるからか?)
こちらもなにげに豪華出演陣ではある。パトリック・スチュワートが出ていたのは完全に忘れていた。スティングは昔見た時は生臭くってイヤだなあ~などと思ったが、今見ると雰囲気にピッタリとはまっているではないか(^O^)
侍女の一人としてキャサリン・ハンター(『哀れなるものたち』の娼館のマダム)が登場していてビックリ--「えっ、今とほとんど変わってない👀」。しかしクレジット見たらなんとリンダ・ハントだった。でもこの二人似てないか。遠い親戚じゃないの(^^?
あと公爵が抱えていたワンコは原作にもいるのだろうか。宇宙を股にかける未来にも犬はペットとして存在するのか。などと疑問を巻き起こしながらもちゃんと最後の対決場面に登場していた。
その他長くなるので箇条書きにすると
*字幕の訳はひどい。多分、昔SFが分かってない担当者が訳したのがそのままになっているようだ。最近のソフトやリマスター版は直っているのかね。
*特撮はかなりムムムなレベルである。昔とはいえ『スター・ウォーズ』以後である。やはり予算が足りなかったのであろうか。
*終盤の戦闘場面については大勢のエキストラ使ってクレーン撮影もやっていて、人海戦術で圧倒だ。それからサンドワームについてはデザインも含めてヴィルヌーヴ版よりこちらの方が迫力がある。人もちゃんと乗れそうだし(^.^)
*これは原作読んだ時も感じたのを覚えているが、気軽に原子爆弾を使用などと出てきて驚いた。生態系SFと銘打っている割には核で汚染しちゃっていいのか。まあ、未来では汚染の除去も簡単にできるんだろうけどさ。
全体に短縮版のようで、特に後半は駆け足状態で訳が分からなくなり洗練度にも欠けるが、忘れがたき怪作といえるだろう。