映画(タイトル「ナ」「ハ」「マ」行)

2024年4月 1日 (月)

「マエストロ:その音楽と愛と」:悩み相談・妻が段々コワくなっていきます。どうしたらよいでしょうか?

240401 監督:ブラッドリー・クーパー
出演:ブラッドリー・クーパー
米国2023年

ネトフリ配信前の劇場公開で鑑賞。
レナード・バーンスタインの半生を描いた作品ということで、クラオタな方々の間で話題沸騰💥……というようなことはなくて一部の映画ファンがザワザワしていたようだ。なにせプロデューサーにスコセッシやスピルバーグが入っている。
さらに直前には監督・主役を兼ねるB・クーパーの付け鼻が「いくらユダヤ人が鼻が大きいといったって大きすぎでは」と批判されたというどうでもいいニュースまで流れた。

実際見てみるとバーンスタイン像のうち「音楽」は2ぐらいで「愛」が8くらいの割合を占めている。よって彼の音楽家としての活動をよく知っている人が見るのが前提だろう。何も知識のない人が見たら、多分「音楽の偉い人」としか思えないはず。

妻とのなれそめとその後の結婚生活の紆余曲折を描いたといっても、妻の方は女優としてのキャリアを放棄したことについて不満を持っているのかどうかまず不明。子どもができてスターの妻として彼を支えてどう思っているのか。「浮気」については出てくるけど不和の原因はそれだけだったのか。

その根本のところがはっきりしないので「なぜか妻が段々コワくなっていく」という不条理な話になっちゃう。バーンスタインの方の事情も曖昧な描写なので判然とせず。
結局のところ夫婦の出会いといさかいに終始した印象だった。ドラマとして見ていて面白いかというと、観客それぞれというしかない。
まあ子どもたちが本作を全面支援しているようだから仕方ないのかね……。

美しい映像や凝った構図、面白いカメラワークには目が奪われる。巨大「スヌーピー」の出現するタイミングに驚いたり。でも前半モノクロで後半カラーにした意図は不明だ。いや、意図はあるんだろうけど効果的なのかは疑問である。

ブラッドリー・クーパーのソックリなり切りぶりは迫力である。監督・主演だけでなくさらに脚本・製作にも入っているという大活躍だ💨 妻役のキャリー・マリガンはキュートかつ怖いが果たしてオスカーにノミネートされるほどだったかはどうかな。

メイクアップはソックリぶりを助けるだけでなく、高齢になってからのシワやシミの作り込みも力業である。オスカーのメイクアップ&ヘアスタイリング部門候補も納得の出来(獲得はできなかったが)。
上映が終わった後に数人の女性客が、最後に登場する(エンドロール中に)指揮場面は本人かどうかでさかんに議論していた。
あれは本物の映像でしょう。まあそんなに分からなくなるほどにクーパーがそっくりだったというわけだ。

もう一つ印象に残ったのは喫煙場面がやたらと多いこと。みんなタバコ吸いまくっていて、それこそキスする時も吸いながらなのである。食卓で食事しながらも当たり前だ。確かに昔はみんなどこでも吸っていたが、いくらなんでもここまでやるか💀だ。

| |

2024年3月23日 (土)

「ブラックベリー」「AIR/エア」:むかしむかし男たちがおってな

★「ブラックベリー」
監督:マット・ジョンソン
出演:ジェイ・バルシェル
カナダ2023年
*アマプラ鑑賞

ブラックベリーと言えばスマートフォン出現直前にやたらと流行っていたケータイというイメージだ。しかし日本ではあまり使われなかったせいもあって実物を見たことはない。よく見かけたのはTVドラマ『ロー&オーダー』無印で、打ち切りになる寸前あたりで刑事たちがやたらと使っていたのだった。どれほどの流行り具合かというと一時期ケータイ市場で45%のシェアを占めたそうな。

これはカナダ産元祖スマホとも言うべきブラックベリーの栄枯盛衰を描いたご当地カナダ映画だ。ただしあくまで「実話にインスパイアされ」た内容……のわりには全て実名で登場する。
舞台となる時代は1996年から2008年まで、息もつかせず目まぐるしく展開するが主要な人物は3人のみで、しかも彼らの私生活など余計な事は描かれない。

そもそもスタトレ・オタクの二人が起業したRIM社。マイクは優秀な開発者だが外交性には欠け、一方相棒のダグは陽気で喋りまくる超オタク技術者である。
彼らが起業して生ぬるく運営していたヲタ集団会社に、他企業から流れ着いたパワハラの塊のようなモーレツ営業マンが共同経営者となり、急発進して強引に売り込みを始める。

これがほとんどアイデアだけで何の形にもなっていないものをモデル(というか模型)を作ってプレゼンし、なんとか金を引き出そうとするという綱渡りのような行為だ。まさしく絵に描いたモチを売り込むのだから。
金が全て、金がなくちゃな(~o~) さもなくばいかなる発想も天才も技術も無意味❌ 実現できはしない。そのことが容赦なく描かれる。

売り込みの甲斐あって、マイクは複数の機能を持つモバイル端末というアイデアを考案実現し一時代を築く。会社は大きくなったがもはやオタクの楽園のような環境ではない。
そしてiPhineの登場が全てを打ち砕くのだった。
最後にマイクが行なった新製品のプレゼンの場面は、時代の先端にいた天才がその座を滑り落ち、もはや追いつくことができないことを残酷なまでに見せつける。

思わず、盛者必衰の理をあらわす~🈚などと唱えたくなっちゃう。私はこの業界について知識がないが、この無常さにはいたく感じ入ってしまった。
そしてラストに至って判明する、真の勝者が誰であるかという皮肉も効いている。どうしてこんな事態になるのか分からない。弱肉強食の一寸先は闇である。

大いに気に入ったヽ(^o^)丿……けどカナダ映画でほとんど役者は知られてないし、ブラックベリーというもの自体日本ではポピュラーではないので、配信スルーは仕方なかったのだろうか。残念である。

暑苦しい相棒ダグを演じているのは監督ご本人だ。
SF映画オタクで会話の7割ぐらいは映画のセリフを引用。『インディ・ジョーンズ』から懐かしや『ゼイリブ』、リンチ版『砂の惑星』。さらに『ウォール街』を参考に相棒にビジネス交渉指南をする。
恐ろしいことにこういう人間が実際いるんだよね~😑
使われている当時のロックは有名曲というよりマイナーな曲が多い。監督はロックについてもマニアなのか、それとも使用料を節約したのかね。

マイケル・アイアンサイド、どこに出ているのか?と思ったらかなり恰幅がよろしくなっていたようで(;^_^A 一瞬誰なのか分からなかった。とりあえず健在でよかった。


★「AIR/エア」
監督:ベン・アフレック
出演:マット・デイモン
米国2023年
*アマプラ鑑賞

同じ製品開発の内幕ものとして『ブラックベリー』が陰ならこちらは陽という評判作。確かに外からはうかがい知れぬ裏話を描くというのは似ている。公開時に見損なったのでやはり配信で鑑賞。

1984年当時、業績不振だったナイキはバスケ部門での浮上を目指して新人の若者に目を付ける。彼に契約してもらうために新たなシューズを開発してなんとしても売り込まねばならぬ。
そのためにはまず彼の親(特に母親)にアタックすべし💨

成功したという結果は既に分かっていてもドキドキさせられる。バスケもシューズもよく知らない人間が見てもだ。「プロジェクトX」を思い出させる。
テンポよい畳みかけ具合といいカメラワークといい、ベン・アフレックの監督としての才能は疑うべくもないだろう。

ジョーダン役を正面から出さないのは正解だと思える。なぜなら彼は人間じゃなくて「概念」になるということなのだから。
それにしてもまだ高校を出る前から成果を上げることを期待されていて、既に決まっているようにそれを実現しなければならない--というのは大変なことだ。まあ、実現できるからこそ天才なのだが。

ナイキ公認だろうとはいえ、ライバルのコンバースやアディダスあんな風にクサしていいのか💦と思っちゃった。
キング牧師の原稿の話は後半のあそこへ繋がるのだと、他人の感想での指摘を読むまで気が付かなかった(^^;ゞ

脇を固める母親役ヴィオラ・デイヴィス、クリス・タッカーなども印象に残る。
バルバラ・スコヴァの名前がクレジットにあってどこに出てたのか❓と思ったらアディダスの社長役だった。シューズ・デザイナー役はスカルスガルド兄弟の一人らしい(何人兄弟なのよ)。なにげに豪華出演陣である。

1984年当時の懐かしいヒット曲が多数使われていて、相当に権利使用料かかったのではないか。そこら辺は『ブラックベリー』に大きな差をつけているかも。


さて内幕話を描くこの二作、描いている対象は同じようでもテーマは異なる。『AIR/エア』は勝利を描くが、『ブラックベリー』はそこに意味はないことを示す。
私はどちらを取るかと言えば『ブラックベリー』だ。なぜってそういうお年頃だからなんですう(*^o^*)ポッ

| |

2024年1月28日 (日)

これも女の生きる道・その1「バービー」

240128a 監督:グレタ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー
米国2023年

見る前🌟「バービーの世界と現実の世界を股にかけたドタバタしたファンタジーかな。楽しくアッケラカンかつ痛快にジェンダーの問題を描いてくれると期待」
見た後😶「なんか……よく分からん(・・? 難しい」

ガハガハ笑えるだろうと大いに期待して行ったら、実際見てみるとかなりひねくれてて皮肉っぽい印象であった。さらに近年のアメリカの社会状況や文化知らないと真に理解できないのではないかと思ったり。

バービーとケンが現実世界へ渡ったことで生じた瑕疵から大きな断裂へ。で、ユートピアのはずだったバービーランドは変質しその本質をさらす。それは現実(映画を見ている観客の)の写し鏡でもある。さてどうするよ--(~o~)

このような流れだとは思うのだが、ラストも分かりにくい。なぜ、そこでその一言??と思っちゃう。キツネにつままれた気分だ。
そもバービーというものが分かっていない者には、この映画は難解過ぎるようだ。

ファンタジーとして楽しむにはウラがあり、明確なフェミニズムが打ち出されていると考えるにはひねりが多く、共感するにはぼかされたり曖昧な部分が目につく。いちいち笑うのに解説が必要という具合。いかんともしがたい。

ただピンクと水色を基調として隅から隅まで統一したデザインはお見事としか言いようがない。事前の小出しの宣伝戦略も大したものだった。
しかし確実と言われたアカデミー賞監督賞・主演女優賞の候補からはもれてしまった。賞は水もの、サプラ~イズ😱

 

| |

2023年12月29日 (金)

「X エックス」「Pearl パール」:ミア、恐ろしい子!

「X エックス」
監督:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス
米国2022年

「Pearl パール」
監督:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス
米国2023年

『X』、前から気になっていたのをTV放映で見た。そうしたらどうしても続編の『Pearl パール』も見たくなってしまった。
なぜ『X』で迷っていたかというとスプラッタホラーは超苦手だからだ。しかしあらすじ聞くと興味をひかれる……とグダグダしていたけど遂に見た! 前半は順調に見られたものの後半はギャーッ⚡と叫びたくなった。どうせ殺すならサッサとやってくれ~。

テキサスのド田舎の農場を借りたポルノ映画の撮影隊6人。母屋には老夫婦が住んでいて、当然なことに怪しさ満載である。その後は数々のホラー過去名作の引用場面が続く。といっても私はこのジャンルはあまり見てないので『シャイニング』以外は「何かの引用らしい」としか分からぬ。
教訓:外を歩く時は最低靴だけは履きましょう。イテテテテ(>_<)

とはいえ面白かった🈵
下手すると高齢者への偏見を増加させそうな内容である。でも「二役」によって避けているのがうまい。
ポルノ映画で一旗揚げようという気概がいかにも1979年という時代を反映している。あとベトナム帰りの存在とか。


さてその続編--というか正しくは前日譚である『パール』である。内容は「余はいかにしてコワイ老婆になりしか」。農場の老夫婦が殺人鬼になる因縁と過程を描く。
時代は1910年代、田舎の農場に暮らしていても歌って踊れる輝くスターを目指すパール。厳し~い母親の目をかいくぐってオーディションに参加して栄光への道を踏み出そうとする。

期待し過ぎたせいか今一つな印象だった。もっとパロディでハッチャケてるのかと思ったら、満たされない田舎娘の怨念がドヨーンと襲ってきて、見てて少し疲れた。
ここまで濃いこだわりの描写で展開していくとは😶 車椅子の父親、風呂場、映写室、納屋、オーディション、特に畑のカカシの場面は(!o!)オオ
パール役のミア・ゴスにはオスカー候補になってほしかったなあ。今作では製作と脚本も兼ねているから才人には違いない。

母親についての解釈が二通りあって直接的には娘への虐待に近いのだが、猛毒母ゆえなのかそれとも娘の本性を知っててわざと厳しくしていたか明確にはされていない。私は後者の説を取りたい。
なおワニの寿命を調べたら大きいものは人間と同じぐらいらしい。ということはあの沼に住んでいるヤツは……💀
あの時ワニも若かった~♪

三作目は「X」のヒロインがまた登場するとの噂。今度は父親が出てくるのかな。公開時に見るかどうかは考え中だ。


さて、女優を目指すパールを見て誰でも思い出す(多分)であろうのが『ガラスの仮面』の北島マヤである。
ということで、ミア・ゴス版『ガラかめ』を考えてみました~っ(;・∀・)
なお、単なるイメージで実年齢などは考慮してません。

北島マヤ:ミア・ゴス
姫川亜弓:ケイト・ブランシェット
月影先生:シャーロット・ランプリング
速水真澄:マシュー・グード
桜小路優:ジョシュ・ハッチャーソン

秘書水城:ジャネール・モネイ
青木麗:エリザベス・デビッキ

演出家小野寺:ケヴィン・スペイシー(いつの間にかしれっと復活)
黒沼龍三:ブレンダン・グリーソン
姫川歌子:ヘレン・ミレン
北島春:イメルダ・スタウントン
鷹宮紫織:クリステン・スチュワート

乙部のりえ:ジェニファー・ローレンス
小林源造:ジャファル・パナヒ(特別出演)
里見茂:ティモシー・シャラメ

皆さんも考えてみましょう🌟

| |

2023年12月17日 (日)

「マイ・エレメント」&「私ときどきレッサーパンダ」:移民二世女子の憂鬱と爆発

231216「マイ・エレメント」(字幕版)
監督:ピーター・ソーン
声の出演:リーア・ルイス
米国2023年

そもそも恋愛ものはどうも苦手だし、近作を見てると「もうピクサー印はいいかな~」と全く見るつもりなかった。しかしネットでは好評ばかり流れて来るので「本当に面白いんかい(・・?」と見に行ったら……本当に面白かった!

四種類の元素人間がそれぞれテリトリーに別れて暮らす都市とは、もろにニューヨークっぽくて人種のアレゴリーだろう。
過去に火気人間のヒロインの両親が旅立ってきた地は中華風である。では都市を最初に作り上げた水気人間は白人なのか。

そんな設定で今さら『ズートピア』みたいな移民ネタやられてもなーとは思ったものの、実際にはそれぞれ水・火・土・風のエレメントの表現や小ネタの連続の見事さに思わず感心。特に水のピチョン💧とした描写や炎の燃え上がる様子はあまりに見事で理屈を超えるものがあった(土と風は出番が少ないだけにちと手抜きか)。

ヒロインは両親の作り上げた店を手伝って働き、有能でしっかり者で勝気だけど常に今一つ自信がない。不安定なため時折感情のコントロールができず燃え上がる爆発的発作を起こす。
そういう若い女性が親の期待(特に父親)にどう応えるのかという問題と、移民二世の葛藤がうまく合わせ技で描かれている。最後にそれにカタを付ける。

恋愛ものとしても楽しかった。貧しい下町で生まれ育ち何かと切羽詰まっているようなヒロインに対し、相手の水男は涙もろくて汗かきでいかにも育ちのいいボンボン風という組み合わせ。互いに補強し合っている関係である。
それにしても水男の涙もろさがあそこでああなるとは想像だにせず。
久々に泣いて笑ってピクサー印に満足できましたヽ(^o^)丿

さて字幕版に関しては日中にはやらず夕方以降だけで、しかも小さめのシアターなのでほぼ満員。当然子どもはいなくて若者率なんと98%だ❗ えっ、もしかして私が場内でよもやの最高齢?(思わず周囲を見回す)
ウッソー、そんなのイヤ~~っ(゚д゚)!
ま、照明落ちて暗くなってしまえば分からんけどな。

隣の若いカップルの女性の方に気を取られた。作中の笑うべきところで笑い、小ネタには律儀に反応し、意外な展開の場面では「あーっ」と声を小さく出し、もちろん最後は号泣。(私もマスクの隅を濡らしましたよ😢)
彼氏の方もヨシヨシとかしてないで一緒に泣いてやれよ、コノヤロー( -o-)/☆

彼女こそ映画の理想的な観客であると感じた。
日頃、平均年齢高過ぎなミニシアターをうろついてて「ピクサー新作だって?最近今イチだよなー」みたいなアラ探しモードで最初から斜めに見ているような、自称ファンの濁った眼と心とは全く異なるのである。
深~く反省しました。

なお、なぜ海外アニメを上映館や回数が少なくても字幕版で見るかというと、大手のアニメは映像の完成よりも声優のセリフを先に録音する方式を取っているからだ。そのオリジナルを味わいたいのよ。
もちろん字幕優先といっても例外はある。『シンプソンズ』とか『ダウントン・アビー』(実写だけど)はさすがに吹替だわな。


「私ときどきレッサーパンダ」(吹替版)
監督:ドミー・シー
声の出演:ロザリー・シアン
米国2022年

CATVで視聴。残念ながら吹替版しかなかった。
『マイ・エレメント』と設定が似ているが、同じピクサー印でもこちらはもっと若い子向けだった。
主人公はトロントに住む中国系の女の子13歳。家業を手伝い、母親の前ではよい子である。

一方、学校では個性的すぎる友人たちとつるみ、アイドルに夢中でお転婆に過ごす--という毎日だったはずが、ある朝目を覚ますと自分が寝床の中で一匹の巨大なレッサーパンダに変わっているではないかっ💥
すったもんだの挙句、感情をコントロールできずに爆発させるとパンダが発現することが分かった。
……ということは、パンダにならないためにはこれからは全てを抑えて大人しく生きていかねばならぬ。これが「大人の女」になるための規範を象徴していることは言うまでもないだろう。
しかも母親が常に監視モードの恐るべきストーカー過保護母なのだ。コワッ(>y<;)

思春期と反抗期と女の子らしくなければならないプレッシャーがパンダ現象に凝縮されている。そして恐ろしくもぶっ飛んだ方向へ物語は展開する。女の子たちのアイドル熱狂ぶりもすごいが、それと同じくらい破壊の描写がこれでもかと来て迫力である。
ただ屈託のないラストがヤングアダルト向けという印象だ。

時代は2002年に設定されている。恐らくスタッフたちの子ども時代にあたるのだろう。お懐かしやたまごっち。スマホは存在せず金持ちの少年だけがケータイを持っている。
それにしても、一番ありそうでなさそうなのは友人3人の存在。あんな友達なかなか作れないよねえ。( -o-) sigh...


この二作の共通点は非常に大きい。登場する家族設定と同様、監督も東アジア系だ。
『マイ・エレメント』ではヒロインは父親の意に沿おうと頑張る。こちらでは娘が母の意図に押しつぶされそうになるも、立場を理解して互いに歩み寄り仲良くなる。
しかし『パンダ』の主人公の成長した姿がやがてそのまま『エレメント』になるのは間違いない。
さて、彼女が将来異なる民族の彼氏を連れてきたら母親はどうするだろうか😑

| |

2023年12月 2日 (土)

映画落穂拾い2023年前半編その3

231202 今年が終わるころになってようやく前半期分を終了(;^_^A
偶然にも「特集 ナチスはこんなこともしたのか」となりました。

「ヒトラーのための虐殺会議」
監督:マッティ・ゲショネック
出演:フィリップ・ホフマイヤー
ドイツ2022年

事前にSNSで流れてきた感想はあまりはかばかしいものではなかったが、実際行ってみると終始面白く見られた。まあテーマ自体は「面白い」どころではないのだけど。

1942年1月ベルリン郊外、美しい湖畔の邸宅に召集されたのは軍人と役人15人+記録係の秘書。実際に行われたこの会議のテーマは--「ユダヤ人をどうするよ」(>y<;)

「ユダヤ人問題」の解決への計画が示される中でも、みな自らに有利に進め面子を立てようと互いにけん制するのは忘れない。同じ軍部内でも角突き合う。結論へと達せたのは淡々と仕切る議長のハイドリヒの力業であろうか。
アイヒマンが作成したという実際の議事録に基づき、音楽も一切なし。カット割りで人物のキャラクターと心理を浮かび上がらせていく。

冷酷な内容を全くの合理性で(さすがドイツ人、と言っちゃっていいのか😑)進めていくギャップがこの映画の最大の見どころだろう。
場所が固定しているので演劇向きという指摘はなるほどである。「15人の企む男たち」というところか。実際に面白い芝居になるかは不明だ。
ただ、人物の名前と所属がほとんど覚えられないのは困ったもん。せめて机の前にプレート置いてほしかった(^▽^;)トホホ

ウクライナのバビ・ヤールでの「先行事例」の話題が出て来たのは、ロズニツァ監督のドキュメンタリー見ていたので興味深かった。

しかし「貴重な資源を奴らのために費やすのはもったいない」なんて、今の日本でも全く同じこと言っているヤツがいるではないか。「経済性」とか「合理的」言説には要注意である。
「小学生程度の読み書きと算数ができればよい」というのも言ってた作家が昔いたなあ。偏見が同じなら考えることも同じらしい。

「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」
監督:ヴァディム・パールマン
出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール、ラース・アイディンガー
ロシア・ドイツ・ベラルーシ2020年

ようやく見た。なんで公開されてすぐ行かなかったかというと、ユダヤ人収容所で自分はペルシャ人だと偽ってドイツ人将校をだます……というハラハラドキドキな設定が小心者の私には耐えられなーい(>_<) なので、見るかどうか迷っていたからである。
というわけで見るとやっぱりドキドキした💓

二人が心を許して会話している(ように見える)のが、成り行きででっち上げた架空の言語によるというのが極めて皮肉だった。大尉役の人は演技賞ものだろう。
それ以外に、ドイツ人の立場から収容所という狭い職場で「あるある」なトラブルが描かれているのが珍しい。男女のイザコザ、反抗的な部下、威張る上司など種は尽きない。

疑問点は医者がなぜ真実を知ってたのに大尉に言わなかったのかということだ。
それから、森の中で出会って主人公に忠告した老人は何者? 第一次大戦時の生き残りなのかな。

事前に実話だとばかり思い込んでいたが実際はフィクションが原作らしい。そうするとラストを「こんな人間がいたら」という願望と祈りを感じるか、それとも「いくらなんでもこんな人間がいるわけない」とバカらしく思うか微妙なところである。


「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」
監督:フィリップ・シュテルツェル
出演:オリヴァー・マスッチ
ドイツ2021年

ツヴァイクというと伝記作家、としか知らなかったがこれは彼が生前最後に完成させた小説が原作とのこと。
ナチスが台頭するウィーンから米国へ逃走するユダヤ人の男、その途上で幻想と回想が交錯する。正直、これほど晦渋な内容とは思わなかった。

タイトルからするとナチスを知的な企みで出し抜くみたいな壮快話に思えるが、実際は混乱がグルグル渦巻いていた。主人公がホテルで遭った「待遇」はあまりに恐ろしい。だが何が現実なのかも判然としない。ラストがそれに拍車をかける。あの場面も原作にあるのだろうか。
なお船中のバーテンダーは明らかに『シャイニング』入ってますな。

ほぼ出ずっぱりで精神(と肉体)が崩壊する過程を演じたO・マスッチはお疲れさまでした~m(__)m
メンタルにグイグイ来るので調子悪い時は避けた方がいいかも。

| |

2023年11月 8日 (水)

映画落穂拾い2023年前半編その2

まだ前半が残っています。やばいです(-_-;)

「アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判」
監督:サンティアゴ・ミトレ
出演:リカルド・ダリン
アルゼンチン2022年

アマプラで鑑賞。アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた作品である。
独裁政権下で軍が行なった拉致・拷問などの犯罪を起訴する裁判を描く実話もの。主人公の検事も実在で当時の記録映像が入る。
証言してくれる証人集めから裁判の論告まで苦闘の経過が描かれる。様々な妨害にも負けず真実を希求するが、被告はまだ現役で軍や政府にいるのだから大変だ。
論告は実際のものを再現しているのかな? かなり長いものでクライマックスとして設定されている。

見ててなんとなく韓国の裁判映画を連想した。公権力による犯罪の法廷ものという点で重なる部分が多いし、演出とか脚本などかなり影響を受けているのではないか。

劇中に出てくる言葉「人殺しの集団が大勢殺しても誰も気付かない」……は場所や時代を問わず起こりうることだ。
人数はさすがに異なるが、軍隊ならずとも日本でも入管施設とか警察署内で同じようなことが起こっているではないか。
もはや民主主義以前の危険水域に近づいているなあ💀

一つ疑問なのはセリフが英語だったこと。自国で公開するなら当然スペイン語だよね。作中の文書はスペイン語だし。二つのバージョンがあるということ?


231108b「母の聖戦」
監督:テオドラ・アナ・ミハイ
出演:アルセリア・ラミレス
ベルギー・ルーマニア・メキシコ 2021年

身代金目的で娘が犯罪組織に誘拐される。メキシコでは日常的によくある事件というのが恐ろしい。
娘を取り戻すための母親の苦闘は「聖戦」というより「執念」に近い。また父親が全く役に立たないのよ👊 しかし彼女のあくなき追及はさらに暴力を引きずり出してしまう。見ていると観客はグツグツと煮詰められていく気分だ。
それを特定の人物に密着するドキュメンタリー風の手法でひたすら追っていく。主演のラミレスは女優賞ものだろう。

話が進むうちにますます緊張が高まっていくのでかなり疲れた。しかも陰惨なトーンである。しかしラストについてはどう考えたらいいのだろう? 観客がそれぞれ解釈するしかないのか。作り手側の未来への願いといえようか。
なお、これは実話を元にしていてモデルとなった母親はその後殺害されたとのこと。

途中に、何かの決意を示す時に女が髪を切るという定番の描写があった。なら男はこういう時何をするのかしらん(^^?


231108「聖地には蜘蛛が巣を張る」
監督:アリ・アッバシ
出演:ザール・アミール=エブラヒミ、メフディ・バジェスタニ
デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス2022年

イランで現実に起こった事件を元にしたサスペンス。サイコスリラーと見せて犯人は早々に正体を現し、社会のひずみを描く方向に向かう。
娼婦殺人とヒロインが受けるセクハラは同根であることが暗示され、犯人の正義を偽った欲望が暗い渦に飲み込まれていく。

なので、見ていてかなり気力が削られるのは確か。特に殺人と暴力の詳細が繰り返ししつこく描写されるのはかなりゲンナリする。そこまで詳しく見せなくてもいいんじゃないの? 元気な時に鑑賞を推奨したい。
当時実際に犯人を支持する人々がいたそうだが、今の日本でも同じようにSNSで吹きあがるヤツが出てきそうである。そういう意味でも『タクシードライバー』を裏側から眺めたような感がある。

ジャーナリスト役のエブラヒミはカンヌで女優賞を取ったそうだが、犯人役もなかなかのイヤ~ンな演技。こわいよ~(>y<;)
なお作中の某所にボカシがかからなかったのは物体が「偽物」ということが明らかだからなのかな?(「これは偽物です」と自己申告するのか)

| |

2023年10月18日 (水)

「ハント」:誰がスパイであろうとも

監督:イ・ジョンジェ
出演:イ・ジョンジェ、チョン・ウソン
韓国2022年

『イカゲーム』のイ・ジョンジェが主演&初監督……といっても未だに『イカゲーム』見れてませーん(><)
過去に見た韓国の社会派作品や現代史謀略アクションを期待して行ったが、話が複雑過ぎかつ登場人物多過ぎで、ただでさえ老化脳なのに追いつけず頭の中が混乱の極みとなってしまった。

KCIAの後身である安全企画部、その内部に北朝鮮のスパイがいる(!o!)ということで各部門が互いに疑心暗鬼に陥る。
中心人物の二人を互いにわざと似せているので一瞬「これは……どっちだ?」(前髪の微妙な形で判定)となったり、終盤に出てきた人物について、あれこの人誰だっけ💦状態になったりとか。

しかもその間に激しい銃撃戦や暴力シーンが何回も挟まり死屍累々、展開の無茶ぶりや裏切りの積み重ね、どんでん返しの連鎖……は既視感あり。こ、これは韓流というより往年の香港アクションではありませんか\(◎o◎)/!
道理で事前に某有名香港映画の名前が引き合いに出されてたわけだわなあと納得した。
ただスパイものでどんでん返しが続くと、しまいには誰がスパイでもどうでもよくなっちゃう……のは私だけかσ(^_^;?

登場人物の名前は架空のものだが、1983年前後の韓国社会状況や事件を前提に作ってあるので事前の予習は必須だろうか。全体的に現在から過去を撃つという趣きあり。
階段落ち場面と終盤の爆破場面は一見の価値ありのド迫力でした。

| |

2023年8月 6日 (日)

「モリコーネ 映画が恋した音楽家」:見てから聞くか、聞いてから見るか

230806 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:エンニオ・モリコーネ
イタリア2022年

最初は見る気がなかった。なぜかというと157分⏩という長尺だし、モリコーネが担当したような昔のイタリア映画はほとんど見てない。トルナトーレ監督の『ニュー・シネマ・パラダイス』だって未見なのであーる。
しかしあまりに絶賛評を多く見かけたので行ってみた。

その結果、なるほどこれは映画館で鑑賞するのがデフォルトだと納得した。だって映画音楽なんだもん(*^▽^*)
そしてタイ焼きのように頭からシッポまでモリコーネとその音楽がギュッと詰まっている印象である。堪能しました♪

ドキュメンタリーとしては本人や周囲の人々のインタビューで彼の経歴をたどっていくわけだが、最初から順風満帆なわけはない。音楽学校へ行ったものの就職口がなく、クラブやキャバレーで演奏したり編曲したり。
映画音楽の世界へと進むも、当時は低級な音楽とされていたため恩師と疎遠になる。売れっ子になって様々な作風で実験的な試みをしたり、と思えばまたオーケストラ路線に戻したり。
色々と事情あってキューブリックとの仕事を逃したのは残念無念とのこと。もし仕事してたら二人でチェスを指したかな。

というようないきさつを実際の音楽と共にたっぷりと見せて聴かせてくれるのだった。
私は未見の作品があまりに多くて反省。本作を見た後に『ミッション』をようやく鑑賞した。本人は絶対にアカデミー作曲賞を獲得すると確信していたのに、なぜか取ったのはハービー・ハンコックという……❗❓

非常に多くの人々が彼について語る中、パット・メセニーが何度も登場してて、彼がモリコーネに傾倒しているのを初めて知った。同じような方向の音楽を目指しているらしいこともだ。
メセニーの音楽はガチなジャズからオーケストラを付けたような作品まで多種多様で、チャーリー・ヘイデンとのアルバムではカバーしてもいるが、取り上げたからと言ってそこまで傾倒しているとは思わなかった。
しかしそういわれてみれば納得である。

近年、音楽ドキュメンタリーが次々と公開されているがその中でも見ごたえ聞きごたえ大いにありの一作だろう。

| |

2023年7月15日 (土)

「ノースマン 導かれし復讐者」「グリーン・ナイト」:伝説は語る、英雄と母親ののっぴきならぬ関係

230715「ノースマン 導かれし復讐者」
監督:ロバート・エガース
出演:アレキサンダー・スカルスガルド
米国2021年

『ハムレット』の原型となった伝説を元にしたファンタジー……といっても「剣と魔法」ではなく、原初的な中世北欧神話劇だった。
時代は9世紀、舞台は広範囲に及びスカンジナビア地方、北大西洋、スラヴ地方、ロシアさらにアイスランドへと向かう。

主人公は父王を殺し母を連れ去った叔父を探して、ひたすら復讐につき動かされる。彼を神々や死者の使いが手助けし、そこに理知の光はない。闇の中で全ては動き、炎さえも光とはならず闇へと吸い取られていく。それを映像がよく表している。
見ているうちにさらに暗黒ホラー味が増してきて、暗い情動にドキドキ💓するのであった。
しかし主人公はそんな闇に背を向けようとする。

エガース監督の前作『ライトハウス』とは、今回は剣戟アクション風で逆方向だが、ままならぬ状況の中でグルグル回っているのは同じかもしれない。
村を襲撃して村民を奴隷にする件りなど全くもって容赦のない描写で思わずギャーッと叫びたくなった。とはいえ残酷シーンは自体は暗い場面中心で、直に描かれるところはそれほどない。

さらに音響や音楽も迫力十分。映画館での鑑賞を推奨したいところだ。監督が撮影中にヘヴィメタルを聞きまくっていたとインタビューで話していたが、確かに見ててメタルの高揚が合いそうだと感じた。
もっとも実際は民族楽器は使用しつつパーカッションと弦が中心だった。

脇役にウィレム・デフォーやビョーク(巫女役!)が出ていてなにげに豪華出演陣だ。
作中の女性像については、現代ではなく時代背景に忠実な女性像を描いたとのこと。確かに中世が舞台なのだから今様の人物が出てきてもしらけるに違いない。アニャ・テイラー=ジョイよりも、ビョークよりも、げに恐ろしきはニコール💥 最後まで見た者はそれを思い知るであろう。

難点はいささか長いこと。途中で「ここら辺は10秒ぐらい切ったらいいのでは?」みたいな場面が複数出てくる。あと5分短かったらスッキリしたのに--という感じだ。

ところでソリルという名の登場人物が出てきて、それでマンガの『クリスタル・ドラゴン』のことを思い出した。続きはどうなってるのよ~(`´メ)
各地の勇者どもが集合して戦いが始まるはずではなかったか……❓


「グリーン・ナイト」
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:デヴ・パテル
米国・カナダ・アイルランド2021年

正直言って今一つピンと来なかった映画である。
元となったガウェイン卿の物語は大昔ウン十年前に読んだ記憶がある(ローズマリ・サトクリフか?)。もちろんほとんど覚えていないのだが、アーサー王伝説のエピソードというより民話風の奇想天外な話のようだ。

そんな英国中世騎士譚を巧みにロケを生かし映像美で蘇らせている。といっても中世だから基本的に小汚くて暗く卑俗な世界であり、人の首が転がり巨人やら怪しいキツネが行き交う。
ただテンポがのろ過ぎ……最初の10分見てこの調子で続くのかー💨と思っちゃった。後半はやや早くなったけど。

鑑賞する前に目にした感想で「昔のロックバンドのプロモビデオっぽい」というのがあった。メンバーが中世風のいでたちで出てくるというヤツ。実際見てなるほどと納得した。
メッセージよりまずイメージで押してくる。引き付けられるがずっと見続けるかは個人の好みによるだろう。
ちょっと外したようなこのタッチは正直苦手だ。この監督、他の作品もこんな感じだっけ(?_?)

未熟な若者が母親の干渉と支配をいかに逃れて敷かれたレールから脱出するか、がテーマということでいいのだろうか。魔女である母はモルガンなのかと思ったらアーサー王の別の姉だったのね。
英語が分からないのでラストの一言の意味がどうもピンと来なかったのが残念無念である。

途中で主人公が追いはぎに遭ってそのまま死んでしまう場面があって、それが逆回しで元に戻って違う展開になる--という件りがあったのだが、なんでこんな部分を入れたのか理解できなかった💦
別になくてもいいし、そもそもこの物語全体がそういう構造になっているのだから、中間で見せなくてもいいのではないかと思っちゃう。

グータラ息子から冷徹な王様まで、ほぼ出ずっぱりで熱演なデヴ・パテルはご苦労さんである。アリシア・ヴィキャンデルの二役は気付きませんでした(^^;;;
現代音楽っぽい劇伴にトラッドっぽい歌がからむのが独特の印象だった。

| |

より以前の記事一覧