映画(タイトル「ナ」「ハ」「マ」行)

2018年5月 9日 (水)

「ハッピーエンド」:ファミリー・トラブル 幸せならスマホしよう

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監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:イザベル・ユペール
フランス・ドイツ・オーストリア2017年

前作『愛、アムール』がカンヌのパルムドールやさらにはアカデミー賞外国語映画賞まで取ってしまったハネケ。しかし、最新作はそれを反省したかのようにまたもやイヤミと皮肉に満ちたものであった。

冒頭、スマホの画面が写る。どうやらどこかの家庭で洗面所にいる女性を撮って、明らかにSNSに流している。続く映像も同じ家のようだが、ペットのハムスターを殺し、さらに穏やかならぬ事態を映し出していく。
と思えば、突然に工事現場で大規模な事故が起こる様子を淡々と捉えた監視カメラの映像が続く。

イザベル・ユペール扮するアンヌは親の事業を継いだやり手の経営者(こういう役多いですな)で、その息子は先ほどの事故を起こした工事の責任者である。しかし、有能なアンヌに対し、「無能」で引け目を感じている。
引退したどうも父親はボケかかっているように見える。
アンヌの弟は離婚して二度目の妻子と共に実家の豪邸に同居しているが、元の妻が急死し小学生の娘も生活に加わる。その少女が冒頭のスマホ映像を撮った本人なのである。

その穏やかならざる一族に、さらに何やら不穏なことがヒタヒタと続いて描かれる。
工事で怪我をしたとおぼしき作業員の家へ息子が(恐らく)謝罪に行った揚句、ブン殴られる。その一部始終をロングの長回しで捉えるカメラのイヤらしさよspa 同様に老父が車椅子で街をさまようのをやはり延々と撮る。ハネケ流のイヤミ炸裂だ。
おかげで、近くの座席で見てた中年女性は途中で席を立って出て行ってしまったではないか。どーすんのよ~(^_^メ)

加えて、パソコンのモニター画面に出現するいかがわしく濃厚なメール。誰が誰に送っているのか?

自殺願望をチラつかせる老父を演じるのはジャン=ルイ・トランティニャンで、ユペールとの父娘組合せは、どう見ても『愛、アムール』を思い起こさせる(人物の設定は全く異なるのだが)。その彼に亡き妻を介護した体験を、毒舌で否定的に孫娘へ語らせるとなると、「どうあっても、もう『愛』なんて語らねえぞ、コンチキショー」という監督の決意を感じるのであった。

「死」という共通する要素を見出した少女とその祖父と繋がりは、「家族」からはみ出した者同士の共感であり、抵抗である--とも解釈できる。
だが一方で、ヒマや金を持て余したら「死」を引き寄せて戯れるほかない空疎な姿に見えた。

最後にまたもスマホの映像で終了するが、そこに描かれているのは悲劇なのか喜劇なのか、もはや観客の側には分からないのである。
ちなみに、映画のチラシも通常のB5でなくてスマホサイズの比率で作られている。最初、気付かなかったですよ(^^ゞ

名優たちの中で、少女役のF・アルデュアンの目力の強さに驚いた。(彼女が「Iheart01JAPAN」のTシャツ着ているのは、日本の某事件をモデルにしているから--というのはホントか?)
また、クラシック・ファンにはガンバ奏者のヒレ・パールが出演しているのも驚きだろう(そのままにガンバ奏者の役)。『愛、アムール』ではA・タローの出演が話題となったが、今作の彼女は重要な人物とはいえ、セリフは一言ぐらいしかない。ただし、マラン・マレ(?)の「フォリア」の終章をかなり乱暴に弾く場面あり。
コンサートでの彼女は明るい美人さんshineという印象だが、作中では淫蕩でビョーキな雰囲気だ。加えて、かつてハネケ映画の常連だったJ・ビノシュにかなり似ているのに気付いた。


ところで、スマホでなんでもかんでも撮りたがる風潮、全く今どきの若いモンは……と言いたくなるところだが、翻って考えてみるに、頼まれてもいないのに見た映画や読んだ本の感想を延々とネットに綴るという行為も似たもんではないか。
さらに、私の父親の世代は(戦前生まれ)文学青年のたしなみとして、日記をつけるというのがあったらしい。他人に知られたくない行為をわざわざ文章にして記録し、さらにそれを他人の見られるような所に放置するというのは、やはり他者に公開したいという欲望があったのではないかとしか思えない。
それを思えば、昔も今もメディアが変わっただけでやってる行為は変化なし、といえるだろう。

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←このスチール写真、少女だけカメラ目線になっている(もちろん意図的)、という指摘があった。


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2018年5月 1日 (火)

「ブラックパンサー」:デザイン・イズ・パワー 猫だ!虎だ!いや○○だ!

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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にも出てきたブラックパンサーが満を持して単独で登場である。
彼が王位に継ぐことになる事件が『シビル・ウォー』で起こったわけだが、そも母国のワカンダとは貧しい農業国--とは仮の姿。してその正体とは、謎の鉱石の存在によって超が付くくらいに発達した文明国であった(!o!) 正体を隠しつつ各国に隠密ならぬスパイを放ち、今日も今日とて諜報活動を行う。

ここで、そんな優れた国がご近所の国の貧困や紛争を傍観していていいのかという問題が浮上する。これは現在の米国と繋がる事象といえるが、そんな事をよーく考える間もなく正式に王位につくための決闘場面が来たっpunchと見ているうちに、気付けばカジノでの乱闘やらソウル市街での猛烈なカーチェイスに突入しているのだった。

悪役は、素顔で見るのはお久しぶりなアンディ・サーキス……と思ったら、さらに上を行く奴が出現だimpact 彼はなんと正当な手段で王位を簒奪してしまう。悪者といっても、ディズニー製作なのでいきなり王様専用ハーレムを作ったりはしない。
ここでも、悪いヤツと分かっても正式な手段で選ばれたなら従うべきかという矛盾が生じ、米国の大統領問題を思わせる展開になる。

悪役のキルモンガーは複雑な背景を持つ人物だが、監督はコロンビア映画の『彷徨える河』を参考にしたというsign02 ええっ、あのマジックリアリズム作品の一体どこら辺を(?_?) 修道院のエピソードか、それとも二つの時代で同じことが繰り返される構造か? とにかくビックリだ。

平和と繁栄の陰から生じる矛盾や二律背反を突き付けられて、主人公は次第に窮地へ陥っていき、終盤は定番ながら両者の死闘になだれ込むこむ。

しかし、十代にして最優秀科学者な妹(妹萌え~heart01な方に推奨)、女スパイの(元)婚約者、威厳たっぷりな母にして前王妃、唯一の白人枠CIA長官などなど多彩な人物が登場。本筋以外にも、設定の説明から始まり、例の鉱石やら過去の因縁やら王位継承の儀式やら色々あるので、説明不足だったり適当な部分が出てきちゃう。
例えば、部族長の一人が悪役に味方するのはどういう意図なのか、王様が突然変わっちゃって国民はどう思うのよ、など描かれていない。前後編に分けてもいいぐらいだろう。

とはいえ、全体のプロダクション・デザインが見事。ありとあらゆるところに多彩なアフリカの意匠が使用されていて、「アフリカ押し」で通そうとする強い意志を感じさせる。ここまでやったかupという印象。この「押し」の力に感服した。
そういや、最近写真集が出て話題になったアフリカの伊達男「サプール」まで登場してましたな(^.^)

結論としては「行ったsign01見たsign03面白かったfuji」というぐらいに満足できた。
同じ監督で、キルモンガー役のM・B・ジョーダンが主演の出世作『フルートベール駅で』録画したまままだ見てないので、連休あたりにでも見なくってはsweat01

主役のチャドウィック・ボーズマンは快調だけど、元々愛嬌のある顔つきなんで、強くて賢い女たちに囲まれた主人公がどうも「黒豹」というよりは「若殿」っぽく見えてしまうのは仕方ない。
さらに、どう見ても主人公より強そうなオコエことダナイ・グリラ率いる女戦士軍団、カッコ良すぎです。憧れちゃう~(*^.^*)ポッheart02

さて、本作はスタッフ・キャスト共に多く黒人が起用され、米国、アフリカはもとより他の国々でも大ヒットとなった。確か日本よりも一週間早く公開されたはずだが、これを書いている時点で米国ではまだランキングのベスト10に入っている。
その画期的意義や含まれるメッセージ、大人気の理由などを語った文章はネットでも多く見かけたが、なぜ日本ではそれほどの人気が出なかったのか?--ということを解説してくれるのは、まだ見たことがない。大いなる謎である。
本当にどうしてなんですかねえ(´~`)

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2018年2月10日 (土)

「ブレンダンとケルズの秘密」

監督:トム・ムーア
声の出演:エヴァン・マクガイア

「ケルズの書」に着想を得たという中世ファンタジー・アニメ。絵柄がかなり個性的で、中世の絵画のように遠近法がない。さらに自然や人・動物はケルトの文様風で、下手すると抽象画のように見える。

ヴァイキングの襲撃が続くアイルランド、修道院で写本を書く少年が悪鬼と闘い、襲撃者を蹴散らす力を得る。修道院の周囲の、得体の知れぬ森には何者かが潜み、彼を助ける。
意外にもネコが大活躍cat オッドアイの白猫でカアイイです(^^) 部屋へ忍び込む場面に流れる歌が心にしみる。

修道院が舞台にもかかわらず、確かにキリスト教的なものはほとんど登場しない。代わりに極めて原初的で素朴な世界が描かれる。
猫とケルトものが好きな人に推奨。

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2017年8月16日 (水)

「メットガラ ドレスをまとった美術館」:ゴージャス 汗と涙と交渉と

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監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター
米国2016年

結論から言うと非常に面白いドキュメンタリー映画だった。ファッション界やアートに興味のある人は見て損はしないだろう。

タイトルのメットガラとは、米国はニューヨークのメトロポリタン美術館で年に一度開かれる服飾部門の資金集めイベント&パーティのことだそうだ。展覧会と連動して行われる。2016年には15億円集めたというからすごい。
ヴォーグ誌の編集長アナ・ウィンター(美術館理事)とそのスタッフが全面協力する。

映画で取り上げられた2015年の展覧会テーマは「鏡の中の中国」、ファッションにおける中国のイメージを取り上げるということで、まず事前の折衝を山のようにしなければならない。それらを全て仕切るのが服飾部門のチーフであるA・ボルトン、40代ちょっとでまだ若い人だ。

館内の中国部門の責任者は所蔵品が単なる背景の飾りとして使われないか心配で、イチャモンを付ける(でも、そもそも「イメージ」としての中国なんだから無理では……)。政治的に微妙なので中国政府にも直接談判、在米中国人会の了解も得る。色々あって大変だ。
オリエンタリズムに陥らないか、差別と言われないかという不安もある。
ここで企画に参加している映画監督のウォン・カーウァイの説得が、かなり功を奏していた。貫禄ですかねflair

前段で、そもそも服飾が美術であるかどうかという問題が取り上げられていた。中国部門から見れば、やってることは派手でも数千年もの歴史を持つ美術品と比べられてたまるかと思うだろう。

一方、パーティはステージの出演者や招待客の選定、そして席順決めも大変だ~。会場のデザインも難しい。アナ・ウィンターが決めては変えていく。
彼女は『プラダを着た悪魔』で有名になったが、見ていると実物はあのイメージとはかなり異なるようだ。(インタヴューでその話題も出る)

オープニング前夜(いや、当日早朝か)も会場のセッティングは終わらない。一人黙々と展示されたドレスの裾の位置をしつこいほどに修正するボルトンの姿を、カメラが延々ととらえる。その背中には誰も踏み込めない執念のようなものが見える。

果たして展示もパーティもうまく行くのかsign02 分かっていても、見ててドキドキしてしまう。信念を持ったプロフェッショナルの仕事を見せてもらったという気分だ。
とにかく見てて飽きることのない緊張感が続く。ドキュメンタリーとしてはナレーションを一切使わない形式で、密着取材と編集の技が発揮されているといえよう。

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2017年8月13日 (日)

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」:カミング・ホーム 君は一人じゃな

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監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック
米国2016年

マンチェスター……イギリスの話なのかなあ、などとボンヤリ思ってたら大間違いng 「バイ・ザ・シー」も入れて一つの町名で、米国が舞台なのであったよ。

ボストンでしがない一人暮らしをする男、兄が急死して故郷の町に戻ると、高校生のおいっ子の保護者になるように求められる。しかし、彼にはこの町で暮らしたくないいきさつがあったのだ。
その「過去の事件」が回想をまじえつつ徐々に明らかになっていく。

そんな過程が、極めて淡々とゆっくりと美しい港の風景と共に描かれていく。あまりに淡々としている上に137分という長尺なので、途中で寝るヤツがいても不思議ではない。とにかく長いのである。
甥はバンドをやったりして高校生ライフを楽しみ友達も多い(父親が死んだばかりなのに鳴り物鳴らすというのはちょっと驚いた)。しかし、それは事件が起こるまでの主人公も同様だったのだ。そのような生活は彼にはもうない。

彼は立ち直れぬままであり、周囲の人間(兄の元奥さん、自分の元妻)も立ち直っているようで、実は立ち直っていないのが明らかになっていく。
私は枡野浩一の『くじけな』という詩を思い出した。

「くじけな/こころゆくまで/くじけな/せかいのまんなかで/くじけな」

他にも「二人でいると人生は二倍淋しい」とか「あしたがある/あしたがあるから困る」などと、読んでいると甚だしく落ち込みのスパイラルに陥る。そんな世界である。

他の人の映画評で、この作品に登場する「善意の隣人」について書いているのを読んだ。フィクションでは珍しくはないが、果たして現実にはそのような「隣人」が存在するか?というような趣旨だったが、そういえば『裁かれるは善人のみ』にもそのような隣人が登場する。もっとも、主人公が不幸な目にあう原因に、その隣人が一役買っているのだが……。

そう思い返してみると、主人公と隣人夫妻との関係、親を失った少年に対して彼らがラストで取る行動、頻繁に挿入される海の光景wave--など、『裁かれる~』とかなり似ていることに気付いた。テーマや作風は全く異なるけど。どこか影響受けているんだろうかね。

ケイシー・アフレックはこの演技でアカデミー賞の主演男優賞をゲットしたが、うーむ、どうだろうか(?_?; 悪くはないけど、同じくノミネートされたA・ガーフィールドやヴィゴ・モーテンセンと比べて図抜けているというわけでもない。
むしろ、甥役のルーカス・ヘッジズ(やはり助演男優書にノミネート)がよかった。若いんで今後の注目株であろう。
お懐かしやマシュー・ブロデリックが出演。見てた時は分からなかったですよdash

音楽はヘンデルやパーセルなど、なぜかバロック音楽が使われているが、使い方が唐突でしかも音量がデカい。なんなんだろうsign02


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2017年8月 6日 (日)

「ハクソー・リッジ」:サイレンス・ソルジャー 独立愚連衛生兵

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監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド
オーストラリア・米国2016年

『沈黙』に続き、再びガーフィールドがいぢめられる役に(>y<;) 思えば『アメイジング・スパイダーマン』でも、いじめられっ子の高校生役だったからその手の役が似合うヤツなのであろうか。

主人公は第二次大戦で兵役を志願するも、宗教上の信念から戦闘行為は拒否。軍法会議もはねのけて念願の衛生兵になる。そして向かった先は激戦地の「ハクソー・リッジ」……。
これが実は沖縄の前田高地だというのを、日本公開に際し隠して宣伝していたということが話題になった。隠しても、実際見に行ったら分かっちゃうのであまり意味はないと思うけど、事前に公開反対運動が起こったりすると困るということか。

それはともかく、戦闘シーンは相当な迫力。『プライベート・ライアン』の冒頭部分が延々と続く感じで、もういつ弾丸飛んできて当たってもおかしくない気分になる。おまけに人の手脚が容赦なくimpact吹っ飛ぶんで、その手の場面が苦手な人は避けた方が吉であろう。

約140分という長さも含めてメル・ギブソンの監督としての力技発揮というところか。激しい戦闘にさらされた兵士が陥るパニック症状で、死の淵をのぞいたような眼になってしまうというのを、映像で初めて見た。

役者は父役のヒューゴ・ウィーヴィングに注目だろう。ヴィンス・ヴォーンの鬼軍曹は、過去の同様な映画に比べるとどうしても「鬼」度に欠けるようで。

なお、私の父はまさに衛生兵だったが、それは体格が貧弱だったからだそうだ。日本軍では衛生兵とはそういう者がなったらしい。

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2017年8月 1日 (火)

「バーニング・オーシャン」:デンジャラス 燃える水平線

監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ
米国2016年

2010年メキシコ湾原油流出事故の実録ドラマ。石油の掘削施設が破損して火災になった揚句、噴出&流出し、環境汚染もひどかった。
親企業と複数の下請け会社が同じ施設内にいて、事故の予兆があってもなかなか連携できない状況が描かれる。
あと不思議だったのは、事故がひどくなっても非常放送とか警報が入らないこと。冒頭の裁判の場面で言及あったっけ(?_?) 最初のトラブルで責任者に連絡もしないし……danger

安全をないがしろにして進行を早めたい親会社とか、後で責任を問われるとマズイので決定的な処置ができなかったり救難信号出せないとか、こういうのはいずこの国でも同じだなあと思った。

主人公の電気技師を始め、登場人物のほとんどは実在の平凡な市民なので、そちらの方面での盛り上げは無理(人間関係は丁寧に描かれている)。よって終盤の災害場面が最大の見ものとなる。
一旦事故が始まると画面炸裂impact何が起こっているのか見てて分からない。実際、その時現場にいた人もそうだったのだろう。
施設全体が燃え上がる場面はものすごい迫力で、思わず口アングリ(@O@)状態だった。

主役のマーク・ウォールバーグは事故を生き抜いた強さと共に弱さも見せる男を熱演。しかし、悪役を一人で担う親企業の上司ジョン・マルコヴィッチと、親方風威厳を見せるカート・ラッセルの二人に全てを持って行かれたようである。
ラッセルとケイト・ハドソンの親子共演も話題になりましたな)^o^(

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2017年7月17日 (月)

「ムーンライト」:テンダネス タフでなくては生きていけない

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監督:バリー・ジェンキンズ
出演:トレヴァンテ・ローズ
米国2016年

日本では果たして公開されるのか危ぶまれていたほどだったのが、アカデミー賞取り違え事件によって劇的なまでに盛り上がり、なんと「今ここで公開せずしていつやるかーっon」という勢いで前倒しで日本でも公開されたのだった。

広告の写真が3分割になっている通り、一人のアフリカ系でゲイの少年が成長していく過程を三つの時代に分けて描く(その度に呼び名も変わる)。その描写は地味で淡々としているが、映像は計算され尽くしていて色彩もその空気も美しい。
引き合いに出されていたのがウォン・カーワイで、監督も影響を認めている。しかし、私はカーワイ作品を見たことがないのだった。許して~_(_^_)_

アフリカ系少年、貧困地区、同性愛、ドラッグディーラー、毒母、いじめ、児童虐待……とある意味刺激的な要素が並ぶが、先に書いた通りにその描写は奇をてらうものでもなく、感動をあおるようなものでもない。非常に内省的であり、深夜に微かな虫の声に耳を澄ましているような印象だ。えー、言い換えればエンタメ感は全くない作品ということである。

ヤク中の毒母一人子一人暮らしで、いじめられっ子で繊細な少年が生きていくにはこの世界はハード過ぎる。結局、親切にしてくれたドラッグ・ディーラーの男を仮の父親のようにして、自らも同じマッチョな道を歩む。他に身近なロールモデルがいないから。
しかし、身体はいくら鍛えられても魂はそうはいかない。強固な肉体と身振りの内側はまだ柔らかい少年のままなのである。
そして「初恋の男」との再会……。

あまりに繊細shineロマンティックheart02
これ以上行ったら陳腐になってしまうのではないかというギリギリのところで成立しているように思えた。
監督も舞台になっているのと同じ地区の出身だそうだ。自分の過去の状況も投影されているのだろうか。

オスカー作品賞で勢いを得たついでか?新聞の夕刊に8ページに渡る全面広告が載っていたのには驚いてしまった(!o!) 全面広告って高いのに採算取れるんかいsign02--なんて余計な心配をしてしまったですよ。

助演男優賞の獲得のマハーシャラ・アリは出演時間は短いものの、さすがに渋~い味を出して引きつける。TVシリーズ『ハウス・オブ・カード』でも曲者ぞろいの役者の中で目立っていただけはある……といっても、元々いい役なんだけど。
M・アリつながりで、ぜひ彼も出演している『ヒドゥン・フィギュアズ』の公開を願うと祈って(^人^)いたら、公開決定でメデタイこってす。(邦題問題が炎上したが)


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2017年5月 7日 (日)

映画短評その2

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★「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」
監督:ティム・バートン
出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド
米国2016年

原作は児童文学のファンタジーかな? ティム・バートン節炸裂impactと言いたいところだが、そういうわけではなかった。
導入部がちょっと長い。主人公の少年がペレグリンの屋敷に入ってから、ようやくおなじみ奇妙奇天烈バートン世界が展開する。

しかし、どうも見た後にスッキリしない。この手の設定が複雑なファンタジーというのは、その枠組みを構築して維持し、それに沿ってストーリーを成立させるだけで大変な労力が必要で、息切れ状態になってしまう。
読者や観客の方は、理解しようとするだけで訳ワカラン状態になるのが常。似たようなのが『ライラの冒険』だった。

で、全体の印象はとっちらかって求心力なし--というところか。よく分からんけど、結局ハッピーエンドってことで終わるのであったfujiメデタシよ。

ジュディ・デンチやサミュエル・L・ジャクソン(悪役なのに迫力なし)はもったいない使い方。パイプをふかすエヴァ・グリーンはカッコ良かったが。
それから、ルパート・エヴェレットは全く気付かなかった。エンド・クレジットを見て、えっあの人物なのかい(^^?)状態である。
少年役のエイサ君が、背が伸びちゃってビックリ。成長期の子はあっという間に変わっちゃうね。
過去の映画のパロディがたくさん出て来てたようだけど、分かったのは『シャイニング』と『アルゴ探検隊の大冒険』ぐらいだった。
遊園地の場面に監督本人が出てたよね)^o^(


★「ラビング 愛という名前のふたり」
監督:ジェフ・ニコルズ
出演:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ
米国2016年

異人種間の結婚を違法とする法律が1950年代の米国には、州によって存在していたsign03とは驚きだが、それに対して裁判を起こした夫婦がいた。最高裁で勝訴するまでが描かれる。

一貫して夫婦愛だけをピンスポット的に取り上げていて、背景の社会の動き(公民権運動とか)は意図的にカットされている。そこが「声高に差別を訴えない」として好評だったようだ。
だが、一方で背景が描かれていないとよく分からないところがあって隔靴掻痒の感がある。

1人目の弁護士は売名行為で声を掛けてきた? ワシントンになじめなかった理由はなんなのか? バージニア州に戻ってきて隠れ住んでいたのに逮捕されなかったのは何故? 子どもを学校にやってたらバレるんじゃないのか。
……などなど表で語られなかった部分が多数あるように思える。

そんな部分を主役の二人の演技が救っているようである。ジョエル・エルガートンは外見はほとんど変わっていないのに、若い時の朴訥とたイメージから中年になって頑固おやじ雰囲気を醸し出している。ルース・ネッガはそれを支えるしっかり者の奥さん風。二人ともアカデミー賞候補となった。ヨカッタgood


★「パッセンジャー」
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ジェニファー・ローレンス、クリス・プラット
米国2016年

なんだか珍品SFを見せられたという気分。いや、SFにもなってない「SF未満」であろうか。

120年もかけた宇宙旅行。その間、大勢の乗客はコールドスリープしているのだが、なぜか一人だけ早く目覚めてしまった男……なんと残り時間90年(☆o◎;)ガーン!! こりゃないよ~と驚くのは当然だろう。
前半『シャイニング』や『2001』の引用が出てきて、心理サスペンス的展開になると思いきや、恋愛もの→アクションという予想外の方向に行ってしまうのだった。

さらに、元々結末は違ったのを変更したんじゃないかという疑惑も出現。船長にアンディ・ガルシアをキャスティングしておきながら一瞬しか登場しないのである。

実際結末まで見ると、これじゃあ別の案があったのだったらそっちの方がよかったのでは?と思ってしまう。ところが、とあるサイトで紹介されてたオリジナルの結末は、予想をはるか斜め上を行くトンデモなものだったのだ。こりゃ、SF未満どころか「超SF」だいっtyphoon

宇宙船の造形は面白いし映像もキレイ。比べて、宇宙船内のデザインは平凡。船員の制服はスタトレか(?_?)
主演のジェニファー・ローレンスとクリス・プラットがもったいなかった。

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2017年5月 6日 (土)

「未来を花束にして」:参政権ないぞ、議会逝ってよし

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監督:セーラ・ガヴロン
出演:キャリー・マリガン
英国2015年

今から100年前英国で起こった婦人参政権を獲得するための闘争を、一人の平凡な女工の存在に仮託して描いている。ヒロインが参加することになった運動は中でも過激に先鋭化した急進派だと思われる。なにせ爆弾作って爆破事件まで起こすんだから。それ以外の団体は登場しないので運動の全体像は分からない。

工場でのセクハラ事案、母親には親権がないとか、ヒロインがハンスト中に食物を流し込まれる場面など見ていてへこむ。さらに運動に参加する女たちに投げつけられる誹謗の言説は、現在とあまり変わらないのでウツになる。
その割には主な男性陣(ブレンダン・グリーソンの警部、ベン・ウィショーの夫)がひどい奴には描かれていないので、男性も安心してご覧いただけます(^<^)
そのせいか、観客の男女比が半々だったのは意外であった。

メリル・ストリープが出演時間は短いながら、存在感たっぷり。あれ以上長く出てたら助演女優賞候補になっちゃったりしてflair
彼女の扮するパンクハースト夫人はアジ演説で「もう50年も待った。私たちはこれ以上待てない(*`ε´*)ノ☆」と檄を飛ばす。
それにならって、現代日本を顧みれば「保育園落ちた、日本死ねpunch」から一年余。未だに改善されていないのだから、もう待てん<`ヘ´>やはり爆弾でも作るしかないのだろうか。

邦題が原題に比べて詰まらないというので、ネットの話題になったが、この手の邦題の最大の問題は当たり障りの無さから「後で思い出せなくなる」「区別が付かなくなる」ことである。「花束を未来にして」とか「未来へ花束から」でもなんら変わらないのだ。

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