映画(最近見た作品)

2020年1月 6日 (月)

「15ミニッツ・ウォー」:バスに向って撃て!

200106 監督:フレッド・グリヴォワ
出演:アルバン・ルノワール
フランス・ベルギー2018年

国際紛争による人質事件という実話を題材にしているのは『エンテベ空港の7日間』と同じだ。が、あちらは戦闘シーンが少なくて詰まんな~い(><)とお嘆きの諸氏諸嬢に、全力をこめてオススメしたい一作である。

舞台は1976年「フランス最後の植民地」💥ジブチで、独立派による小学校のスクールバス・ジャック事件が起こる。ソマリア国境近くにバスが移動し、このままだと子どもたちは殺されるか隣国に連れ去られるか、という事態になる。
そこで狙撃チームが招集され、現地へ急きょ向かうのであった。一同はいずれも優秀ながら「軍隊は規律が厳しくてやってられねえ」というはみ出し者ばかり。

さらに子どもたちを放っておくわけにはいかないと、小学校の女性教師がバスに自ら乗り込むという事態も発生。
しかしフランス本国政府は外交ルートで解決を目指していて、狙撃対が待機していてもなかなかゴーサインが出ない。彼らは緊張の中ジリジリしながら待つことになる。

ここで見てて混乱するのは、フランス軍に「外人部隊」と「憲兵隊」があって関係がよく分からないことである。狙撃チームのリーダーである主人公は元は軍にいたが、今は憲兵隊所属になっている。後で調べたら憲兵隊は半分軍隊で半分警察という組織らしい。

ということで、フランス側は組織ごとにバラバラで、犯人は犯人で隣国からの援助待ちで膠着状態が続く。
ラストはタイトル通りに終盤は期待に違わず怒濤のような銃撃が展開する。ものすごい迫力と銃弾使用量だ。『エンテベ』の時とは逆に、思わず「撃って撃って撃ちまくれー👊」と叫びたくなる。端緒となる狙撃シーンは狙撃兵だとここまでできるのかとビックリ。
一方、いくらなんでも味方にタマが当たらなさ過ぎだろう、とも思ったりした。

隊員一同の私生活の描写がほとんどないのも潔い。もろにサム・ペキンパー風の場面が幾つも登場するが、無常観あふれる後味などアルドリッチっぽさを感じさせるところもある。
ということで、この二人が好きなアクション・ファンは見て損無しだろう。

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2019年12月23日 (月)

「ジョーカー」:タウン・ウィズアウト・ピティ 誰でも3分間は悪のヒーローになれる

191223 監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス
米国2019年

今年最大級の話題作といっていいだろう。バットマンシリーズのスピンオフながらヴェネチア映画祭で受賞したし、日本でも興収ランク第1位が続いた。前評判も高く、私は公開されて勇んですぐ見に行った。

しかし、開始5分でその期待も見事にしぼんだ。善人ながら悲惨な境遇の主人公を配して、残酷でことさら刺激的なエピソードをだけをつないで煽っているように思えた。もちろん手法としてそういうのもありだろうが、なんだかなあである。
過激な行為を連ねた雑な脚本を、ホアキン・フェニックスによる渾身の演技と、クセの強い(よく言えば印象的な)映像でなんとか見せているようだった。

主人公の行為によって暴動が起こるけど、それにノッて暴れている人々はそもそも冒頭で彼を叩きのめして看板奪ったような奴らや、最初のTV映像見て嘲笑してた奴らと重なるんじゃないのかね。そこら辺についての疑問や葛藤は全くない。

所々に曖昧な場面を出てくる。冷蔵庫に入るとか、撃った銃弾の数が合わないなど--。ラストも含めて、このように「夢オチ」を仄めかしてお茶を濁そうとする根性が気にくわない。(←あくまでも個人的感想です)

また、肝心な場面は直接描かない。私はてっきりシングルマザーに危害を加えたのだと思って見ていたのだが、あそこは何もしなかったと見なす人が大多数なので意外だった。見ている限りはどちらとも解釈できる。
まあ、あそこで害を加えたとハッキリ描いたら主人公に共感する観客は90%減だろう。そういうところを曖昧にする根性も気にくわない。(←あくまでも個人的感想です)

ということで最初から最後まで気にくわずに終了したのであった。

一部で執事アルフレッドの描き方があまりにひどいという意見があった。一方、ウェイン父についてはトランプ(大統領)味が少し入っていた。

さて、このしばらく後にWOWOWでTVドラマシリーズ『ミスター・ロボット』の第1シーズンを見た。2015年制作で日本でも他の局で既にやっていたのだが私は全く知らなかった。ラミ・マレック主演で『ボヘミアン・ラプソディ』関連で今になってWOWOWで放映されたようだ。
これがまた『ジョーカー』と共通点が多いのだ。
 ・主人公が信用できない語り手である。どこまで事実か明示されない。
 ・孤独で、障害を抱えていて精神が不安定。
 ・カウンセラー/ソーシャルワーカーと対話を繰り返す場面あり。彼女から薬の処方箋を貰っている。
 ・不在の父を探し求めている。「父」の正体が分かる。
 ・メディアに彼に関連する映像が流れ、それによって仮面の人々が蜂起する。

個々にはよく出てくる状況だが、全部入っている作品というのはなかなかないのではないか。かなりの一致度である(~o~; これどうなのよ。
もっとも『ミスター・ロボット』自体も某有名作品(名前を一文字言っても分かっちゃうぐらい有名)のアイデアを戴いているんで、なんだかなあ……💨である。

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2019年12月13日 (金)

燃える秋のパイク祭り「プライベート・ウォー」&「エンテベ空港の7日間」

191213a「プライベート・ウォー」
監督:マシュー・ハイネマン
出演:ロザムンド・パイク
イギリス・米国2018年

ロザムンド・パイクが戦乱の地を取材した実在のジャーナリスト、故メリー・コルヴィンに扮して半生を描いた映画。「バハールの涙」で登場した女性カメラマンのモデルとなった一人でもある。

英国の新聞記者として紛争地を巡っていたが、スリランカで地雷のために片目を失う。その後PTSDで入院したり、終始タバコを手離せずやアルコール依存、さらに夫とは離婚……というような状況が、回想とも幻想とも付かぬ状態でフラッシュバックと共に入り乱れるのだった。

リビア、シリア、アフガンなど戦闘状態の描写が恐ろしく迫力ありすぎて「こ、こんな所で取材するんか」と震え上がってしまった。--と思ったら監督はこれまでずっとドキュメンタリー畑だった「カルテル・ランド」の人だった。特に最後のシリアは本当に恐ろしい。こんな所で一日も暮らせないとヒシと伝わってくる。
戦闘下の病院で取材される役のエキストラは実際に難民だった女性たちを起用したとのことだ。

演出スタイルは戦場とPTSDの描写が続く中、「情」と「事実」の均衡がやや危うくなっているように思えた。
戦場や難民の描写は迫力あるのだけど、それ以外の心理描写や感情表現などは割と類型的なパターンで終わってしまっているような。その点が今ひとつだった。

上司である編集長の意図が不明。単にスクープ記事が欲しかったのか、そうではないのか。結果的に彼女を死地に追いやったように見えた。

ロザムンド・パイクは「荒野の誓い」とはまた異なる方向の熱演で圧倒。ニコ中アル中オバサン演技に全裸も辞さずである。実話ものによくあるように、最後に本人の映像が登場するが非常にそっくり。話し声も区別が付かないほどだ。
なお、彼女の死は爆撃に巻き込まれたようだが、ピンポイントで狙われた暗殺という説があるらしい。

予告を見た時に、これから公開の「エンテベ空港の7日間」と合わせて「秋のパイク祭り」と出たのには笑ってしまった。
ただチラシの「挑む女は美しい」のコピーは野暮の極みですね👊


191214b「エンテベ空港の7日間」
監督:ジョゼ・パヂーリャ
出演:ロザムンド・パイク、ダニエル・ブリュール
イギリス・米国・フランス・マルタ2018年

同じくパイク祭り💥……とはいえ主役はD・ブリュールの方である。
1976年の史上有名なハイジャック事件を、発端からイスラエル軍部隊が突入する「サンダーボルト作戦」までの顛末を描いたものだ。といっても、犯人の心理や政治の駆け引きが中心で、過去に三回映画化されたようなアクション・ファンが見てスッキリするような軍事ものではない。

イスラエル人が多数乗った飛行機をハイジャックした犯人4名のうち、ドイツ人の二人をブリュールとパイクが演じている。
クールマン(パイク)は過激派同志のマインホフを信奉しており、冷徹でユダヤ人に差別的で容赦ないのだが、もう一人のボーゼは元・編集者という「文弱の徒」だけあってどうもフラフラと逡巡して定まらない。
ハッと気付けば自分のやってることはナチスと変わらないではないかと悩み、パレスチナ人の仲間からもなじられる始末。
鬼💢のパイクに揺れるブリュール--といった調子である。彼はこの手の弱気演技をやらせたら天下一品といえるだろう。

彼らは所詮「ガイジン部隊」に過ぎなかったのか。背後にPFLPや着陸地ウガンダの悪名高きアミン大統領などの思惑が交錯する。
イスラエル側ではラビン首相と国防相のペレスが対応を巡ってチクチクとやり合う。ペレスを演じているE・マーサンは普段いい人役が多いが、ここでは老獪さを巧みに見せていて注目だろう。

結局、イスラエル軍がウガンダ完全無視で勝手に突入するが、ここら辺の戦闘描写はあっさりとしたものだ。人質の死者はほとんどなく、イスラエル軍が1名。
なのにウガンダ兵の死亡者が45名⚡と、桁違いに多かったのがラストで明らかにされる。これは驚いた。他国の紛争が原因で殺されては浮かばれまい。なんだかなあという気分になってしまった。
なるべく事実に即して描いているということで、まさにヒーローのいない闘いなのだった。監督は若手のブラジル人。これからも期待である。

さて、兵士の一員の恋人がダンサーという設定で劇中にそのダンスシーンが数回挿入されている。チラシや宣伝などを見ても全く言及されてなくて知らなかったのだが、イスラエルの有名なバットシェバという舞踏団とのことだ。
これがネットの感想を見ても批判が圧倒的に多い。ラストの突入シーンには交互にステージ本番を迎えたダンスが入る。クライマックスに余計なものを入れるなという意見だろう。
しかし私には非常に面白くて興奮した。むしろ現在からの批評的な視点を感じさせ緊張感を高めているのではないか。

ずらりと並べた椅子に座った人々が順繰りに同じ素早い動きを行い、服を脱ぎ捨てていくが、一人だけ同じに出来ずに何度も床に倒れ伏してしまう。人々が着ているのが伝統的なユダヤ教徒の服装であることから、監督は世界の和平への動きについていけないイスラエルの孤立を表すと考えているそうだ。
だが、一方で逡巡する主人公の姿を表しているようにも見えた。他の人々はみな良きにつけ悪しきにつけ自分の確たる考えを持ち突き進んでいくのに、自分だけは同じようにできずに傷つき倒れてしまう。そんな焦燥感を感じさせた。

エンドクレジットの「ウサギとカメ」みたいなダンスも面白かった。常に速い速度を保ってきれいなフォームで走っている者はいつまでもゴールにたどり着けない。
しかし、まともに真っ直ぐには進めず這うようにして歩き、コースを外れてフラフラと曲がりくねりつつ行く者の方が先に到着する……これまた極めて示唆的である。

このダンス絶対ナマで見たい!来日したら必ず行く(!o!)と思ったら、なんと3月にさいたま芸術劇場に来るではないの❗ なんだよ~、どうせだったら映画がらみで宣伝してくれればいいのにさ。大人の事情とかあるのかしらん。
191214c

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2019年12月 4日 (水)

「僕たちは希望という名の列車に乗った」:人生片道切符

191204 監督:ラース・クラウメ
出演:レオナルド・シャイヒャー
ドイツ2018年

ベルリンの壁ができる前、東独の学校で起こった事件。ハンガリー動乱によって市民が犠牲になったのに対し、教室で授業時に黙祷したのが大事になる。
恐らく高校生たちがあまり深く考えずにノリで始めたことと思うが、当時の東独は日本と同様に敗戦国で占領中。ソ連がらみの事案なので許される事ではない。政府から首謀者を出せと迫られて、友情にも家族にも亀裂が入る。
血気盛んな若者たちと、ワケありの過去を背負って生気を失った影のような親世代の対比が痛々しい。

教室で「多数決」って久し振りに聞いた気がする。同時に、呪文のようでもあるな。正義の呪文。
終盤の感動的なシーンは某名作史劇映画を想起させるものだったけど、この部分も実話なのだろうか。

邦題はネタバレしてる割には、実は何も言ってないのと同じじゃないのかね。原題は「沈黙する教室」で「飛ぶ教室」をもじったって本当か?

男子生徒役の若い役者たちの顔力(かおぢから)が強かった!
特にクルト役の子がブラピとディカプリオ足して二で割ってさらに濃くしたような顔立ちであった。

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2019年11月24日 (日)

映画落ち穂拾い 2019年前半その3

191124a「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」
監督:フレデリック・ワイズマン
米国2016年

これもまた、最初見た時にはロングランヒットになるとは予想も付かなかったドキュメンタリー。
205分、さすがに長かった! まあワイズマンは長いのが芸風だからなー。年齢も89歳だというからその分ビヨ~ンと伸びた感じ(過去にもっと長い作品があるけど)。
通常の図書館仕事はあえて省いて、対外サービスや文化イベントに絞って取り上げている。それと館長とスタッフによる予算獲得対策会議。

税金+寄付で成り立つ公共図書館を通して、米国の一地域の様々な「知」の在り方を示して見せたようにも思えた。だから講演やトークの内容に長く時間を割いているのかな、と推測。
でも本がピョンと宙を飛んでスポッとコンテナに入る仕組みとか、その本がどこへ行くのかということも見たかった。

エルヴィス・コステロやパティ・スミスが出てくるとは知らなかった。あと一番最後に「キース・ジャレットからパーセルまで」と紹介されたのは誰?(パンフ買わなかったので不明) エドマンド・ドゥ・ヴァールという人か(?_?) でも音楽じゃなくて美術評論家なんだよね。
木管楽器4本のコンサートは聴衆の盛り下がり度がかなりのもんだった。


191124b「アベンジャーズ/エンドゲーム」(字幕版)
監督:アンソニー&ジョー・ルッソ
出演:アベンジャーズの皆さん
米国2019年

今更ながらではあるが一応感想書いておく。
最初見た時は感動して涙ぐみ、二度目見た時は結末が分かっていたので余計に泣けた。
……のではあるが、どうにも納得できない点が段々と気になってくる。タイムパラドックスに手を出したのはやはりマズかったのではないか。
この手の話はどうしたってほころびが出てくるのである。
とはいえ代わりに新たな展開をやり放題となり、ドル箱シリーズは永遠に継続可能ということにもなる。

アントマンはもう少し持ち上げてやってもバチは当たらないと思う。あと、ガレージの中にいたネズミもだ。あのネズ公がいなければ何も起こらなかったはず。

今年の埼玉でのSF大会に行ったら「エンドゲームが終わらない!」という分科会があった。全シリーズネタバレ御免で、展開や結末の不自然な部分の代替案を語り合う内容である。やはり不満に思っている人はいるらしい。
あげられた矛盾点になるほどと思い、出された代替案の方にスッキリ感じた。

全シリーズで最初に見ようと思ったのは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』であった。あれから5年……(遠いまなざし👀) ズルズルと芋づる式に見てしまい、シリーズで見ていないのは1作だけ(どの作品かはヒミツ)となってしまった。こんなはずじゃなかったのに~。
おかげですっかりMCU脳になってしまい、「スターリン主義」を「スタン・リー主義」に空目するという羽目に(´。`)トホホ


191124c「コレット」
監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
出演:キーラ・ナイトレイ
イギリス・米国2018年

フランスの女性作家コレットの半生を描く作品。期待しすぎたせいか今イチだった。
辛口のキリリと冷えた白ワインか、毒々しい色合いの強烈なカクテルが出てくるかと思ったら、やや甘のぬるいロゼが出てきたような。
レズビアンや異性装者が登場するものの、パリの爛熟した文化よりも、年の差夫婦の諍いの描写が中心となっている。

あくまでも家庭内争議風に展開である。年下の田舎娘だった妻であるコレットや知人に小説書かせて自分の名前で出して、ちゃっかり人気を得て大金稼ぐ夫はクズ男として描かれている。主人公が最後に啖呵を切る場面に胸がすく思いになったのは確か。
チラシに「ココ・シャネルに愛され、オードリー・ヘプバーンを見出した」とあるが、その時代までは描かれてない。
キーラ・ナイトレイは◎、脚本は△といったところか。

昔の家庭で女が園芸や家の手入れを懸命にするのは、他に自分で自由に出来るものがなかったからだろうか。私の母もネコの額ほどの庭の植木を一人でひたすら手入れしていたが、結果はあまりはかばかしくなかったものだ。


191124d「希望の灯り」
監督:トーマス・ステューバー
出演:フランツ・ロゴフスキ
ドイツ2018年

場面により異なる色調が素晴らしかった。黄色みを帯びた巨大スーパー、青く沈む戸外、闇にヘッドライト行き交うアウトバーン……。
歴史に翻弄された旧東独を背景に、スーパーで働く人物それぞれの在り方が迫ってくる。孤独な男を演じるフランツ・ロゴフスキはまさにハマリ役である。(ただ風呂を覗くのはカンベンしてくれ~)

フォークリフトは人生の象徴か。振り返ってみるとブルーノは最初から心を決めていたようだ。
ただ、途中で中だるみを感じる所あり。観る人によってどのあたりかは異なるようだが。私はちょうど中間あたりだった。三部構成はあまり効果がないと思えた。
最近の映画には珍しいタバコの煙モクモクであったよ!
『2001』っぽい「青きドナウ」の使い方に笑った。こちらはフォークリフトだけど……。

なお、ストーリー上終盤にならないと明らかにならない事案を予告でネタバレしちゃってるのはどういうことよ。知らないで見ていたら衝撃の展開になったろうに💢ムカー

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2019年11月22日 (金)

「主戦場」:ふたりはいつも

191122 監督:ミキ・デザキ
米国2018年

私がこれを見た時は単館上映だったが、いつの間にか方々で上映される話題(問題)作になっている。(出世?)
慰安婦問題の正否について日・米・韓の様々な論客・研究者にインタビューしていくドキュメンタリー。そして観客の興味をそらすことなく、映画の流れはなぜ歴史修正主義者はそのような主張をするのか、という問題へと最後に行き着く。そこには隠された深~い理由があったのだ。
その回答をスリリングに(これ以上行くと陰謀論に💥というギリギリまで)提示してみせる。

2時間強の中身がビッチリ詰まったドキュメンタリーだった。変な言い方だが見甲斐があったと思う。
直接対象にアタックして問題を掘り起こし、たたみ掛けていく展開の仕方に「マイケル・ムーア以降」の世代を感じた。ムーアが嫌いな人はこれも気に入らないだろう。
ただ、編集とナレーションでテーマを展開していくような手法は、間違うとプロパガンダに流用される恐れがあるかも。

「とある人物の発言に唖然」という評判を聞いていたが、本当にアゼンとした。トンデモ発言として処理される案件だ。

取材相手から訴えられているらしいが、事前に映像見て許可出しているそうだから向こうは勝てないのでは?
それにしてもAbeが登場する映像の背後に必ずもれなくAsoが付いてくるのはなぜ。あの二人なんなのよ~。

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2019年11月18日 (月)

「アルツハイマーと僕 グレン・キャンベル音楽の奇跡」:音楽が終わった後も

191118 監督:ジェームズ・キーチ
出演:グレン・キャンベル
米国2014年

グレン・キャンベルってヒットチャートでは耳にしてきたが、それ以上に接することはなかった。活躍するジャンルがカントリーというのも理由の一つだ。
だがそもそもはセッション・ギタリストとして活動を始め、ビーチボーイズにも短期間だけど参加していたというのは知らなかった。

彼がアルツハイマー病にかかり、あえてそれを公表してラストツアーを決行する。その行程を記録したドキュメンタリーである。ステージだけではなく診察や日常生活も映像として公開することで、この病に関する啓蒙活動とするのを意図したようだ。

病気がなくてももういい歳だというのに、1年以上かけて全米150カ所回ったというのはすごい。だが、ツアーが進むにつれて病気も段々と進行する。それでも音楽は続く。続けられたのは年下の奥さんがまだ若くて元気なのと、子ども達がバンドのメンバーに入っていて側で支えたからだろう。

演奏中にカンシャク起こしたり、メンバー紹介で子どもの名前言えなくなったり、同じ曲を二度やろうとしたり……(^^; しかし聴衆は最初から分かって来ているので、優しく見守っている次第。
ステージを見て感激したP・マッカートニーが楽屋を訪れる場面があるけどあれ、もしかして誰が来たのかキャンベルには分かっていないんじゃないかと怪しく思った。「どっかで見たヤツだな、まあいいか🎵」みたいな感じだ。
病状の進行を順々に見せられて正直つらいところあり。最後にはスタジオで歌詞一行ずつしか歌えなくなる。
しかし本人が良しとしてればそれでいいのだろう。まさにミュージシャンの魂、百までもである。

クリントン元大統領やスティーヴ・マーティンを始め、色々な人が登場してコメントしているが、レッチリのフリーやスプリングスティーンも出て来たのは意外だった。二人とも家族がアルツハイマーだったとのこと。

歌詞にちゃんと字幕の訳がついてたのは良かった。どうせなら曲名も出してくれたらありがたかったのに--って、贅沢言いすぎかな(^^ゞ

これを見る気になったのは、彼が亡くなった時に山下達郎のFM番組でキャンベルのラストアルバム「アディオス」(日本未発売)を紹介したのを聞いたからだ。この映画を作っているのと同時期(?)に録音したようである。
アルバムに最後に収録されているのはジミー・ウェッブ作のまさに(リスナーに別れを告げる)「アディオス」(-o-)/~~~であった。元々は1989年にリンダ・ロンシュタットが歌ってヒットした曲だ。
私は最近ウェッブを好きでよく聞いているので、それを知って興味を持ったのである。

キャンベルは彼の作った歌をよく取り上げている。大ヒットとなった「恋のフェニックス」「ウィチタ・ラインマン」「ザ・ムーンズ・ア・ハーシュ・ミストレス」などなど。いずれも名曲揃いだ。
映画でウェッブは友人として登場しコメントしたが、ほんの数秒だけだった。残念。

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2019年11月11日 (月)

映画落ち穂拾い 2019年前半その2

「ハンターキラー 潜航せよ」
監督:ドノヴァン・マーシュ
出演:ジェラルド・バトラー
イギリス2018年

潜水艦ものは結構好きである。大昔の『原子力潜水艦シービュー号』とか『眼下の敵』などなど。マンガの『サブマリン707』も読んでた。
魚雷に機雷にソナー、この手の戦闘には欠かせぬ要件がテンコ盛りの上に、さらに特殊部隊による地上極秘任務(派手な銃撃戦付き)ありの大サービスである。あ、加えて「信頼できる艦長」も必須条件ですね。出来に文句なしっ。
定番の音探知の場面では客席も思わず雑音を出さず静まりかえっていた。

潜水艦ものによくある見えない敵の作戦の探り合いというのは、相手がまともな思考をするならいいけど、ひねくれた奴とかサイコパス気質だったら無理じゃないのと思ったりして。
ここではハト派のロシア大統領がクーデターに遭うという設定だが、現実のプーチンだったら自分の手で直接100人ぐらい殺しそうである(^^;
折角のゲイリー・オールドマン特出なんだから、もう少し見せ場を作って欲しかった。


191111a「アレッポ 最後の男たち」
監督:フェラス・ファヤード
デンマーク・シリア2017年

アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネートされた作品。
ロシア軍の空爆下、シリアのアレッポで爆撃後の瓦礫から人を救出する「ホワイト・ヘルメッツ」の活躍を取材したものだ。そう聞くと勇猛果敢な感じがするが、実際はかなり沈鬱なトーンである。
なぜなら瓦礫の中で人を発見しても既に亡くなっていることが多いからだ。これでは救出にならない。

表向きは町に留まると広言はしても、陰では家族のことを考えると難民扱いでもトルコへ逃げることを考える。が、行くも地獄とどまるも地獄である。
ラストは衝撃の一言。ここに至ってタイトルの意味が分かる。洗練さもなく武骨な作りだが事実の重さが存在していた。

短い停戦期間に作られた小さな遊園地(というか公園)に、子どもそっちのけで大人たちも遊具に乗って遊ぶ光景が微笑ましい(&悲しい)。


「KIZU-傷- シャープ・オブジェクツ」
米国2018年

エイミー・アダムス主演のTVドラマ・シリーズ、レンタルで鑑賞。
故郷の田舎町で起こった少女連続殺人を女性記者が取材するために帰郷する。待ち構えるは優しく恐ろしい毒母(パトリシア・クラークソン)である。
原作が『ゴーン・ガール』の人なんでイヤさが充満し、意味ありげなフラッシュバックが炸裂する。照明の使い方が心理を反映して極めて効果的。

主人公は飲んだくれてフラフラ徘徊しているだけなんだが目を離せない。心臓がドキドキしてくる。そして掛け値なしの衝撃のラスト……ギャー(>O<) 見返すとちゃんと伏線が散りばめられているようなのだが、とても見返す元気はない。
オリジナルの劇伴音楽は使わず全て既成曲(それも有名な)を使っている。使用料かなりかかっただろうな。

191111b「幸福なラザロ」
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:アドリアーノ・タルディオーロ
イタリア2018年

これは個人によって解釈がバラバラになりそうだ。
すごい山奥の村で侯爵夫人が村人をだまして戦後も小作人としてコキ使い続ける(実際にあった事件)。それが発覚して村は消滅する。しかし、この事件が主題ではない。

誠実で無垢な若者ラザロは、夫人に搾取される村人の中にあっても、堕落した都市の中でも全くスタンス(だけでなく、外見も)は変わらない。それは奇跡か、それとも?  もはやファンタジーの領域に入り込む。
聖書中にラザロは二人出てくるそうな。一人はイエスが墓から復活させた男。もう一人は、貧しい病人の男で死後に天国へ行く。そのどちらでもあるようだ。
途中で観客全員が息をのむあの場面、私も驚いた~(!o!)

後半がややまとまりないように感じた。発想と出だしはいいけど、結末を付けかねたような印象である。
でもあのラザロ役の子をよく見つけたものよと感心。キャスティングで80%成功している。

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2019年11月10日 (日)

「ある少年の告白」:矯正を強制して共生せよ

191110 監督:ジョエル・エドガートン
出演:ルーカス・ヘッジズ
米国2018年

シビアでつらい物語、というか実話である。
大学生活で同性愛が発覚した若者が、閉鎖的な矯正施設に送られてしまう。そもそも父親が牧師だからとても許されない。
事前の予想よりストーリー上の宗教の比重が大きかった。まあそもそも同性愛が禁忌とされたのは聖書にあるからだが。

いったん終わるかと思わせてまだ続きがあったのは意外な展開。父母と息子の物語でもあることが分かる。そこまではニコール・キッドマンが母は強し演技で目立っていて、父親役のR・クロウはパッとしなかった。
しかしラストでちゃんと彼は不安定な父親像を演じて見せた。やたら太ってて大丈夫かい!と思ったら、実際の父親があの体型らしい。(そこまで似せなくても)
主役のヘッジスも繊細な演技。ラストで怒りを見せるところもうまかった。

レッチリのフリーが恐ろしい施設職員役で出演していたけど、結構小柄でやせてて驚いた。ステージの映像だとすごく巨大&強力に見える。
エドガートン扮する施設長は、最後の字幕でその本質が明らかにされる。うっかり見逃す可能性があるのでご注意。

邦題は原題(「消された少年」)を生かした方がよかったのではないか。
日本だったらあの矯正施設は「」ではなくて、某ヨットスクールみたいに「根性」で打ちすえるのだろう。イヤダー(>y<;)

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2019年11月 6日 (水)

「荒野の誓い」:ビッグ・カントリー 広くても行き場はない

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベイル
米国2017年

時は19世紀末の米国、長年先住民との戦争を戦ってきた騎兵隊大尉の主人公は、かつての宿敵である族長を刑務所から居留地に護送するように命令される。
このような設定だと想像できるのは、激しくいがみ合う両者が道中で予期せぬ襲撃などアクシデントに遭って、互いに理解し合うようになる。
--と思ったらちょっと違った💨

主人公は積年の恨みに決着付けようと首長に決闘を挑むのだが、相手は孫までいて家族と静かに暮らしている上に、大病を患っている。もはや闘う気は皆無なのであった。彼の憎悪は空回りしてしまう。
もちろん別の部族が襲撃してきたり、家族が襲われ一人生き残った人妻を救出というようなアクシデントは起こる。

見ていくうちに、これは西部劇の形式を取ってはいるものの実は戦争の帰還兵や後遺症を描くという、極めて現代的なテーマを持っていることが分かってきた。退役が迫ってくる年齢になっても、戦争の影から逃れられず平和な生活など送れそうにはない。そんな陰々滅々とした思いが、ワイエスの絵のような美しく悠揚たる自然を背景に描かれる。
さらに殺人の罪で逮捕されたかつての部下の護送も途中で依頼される。この男がまた以前の自分の分身であり、過去の亡霊の如きで兵士たちを苦しめるのだった。

平和になった現在において過去についてどう折り合い、謝罪と和解ができるかどうか。一人の男の変容を通して、明確に答えを出しているといえるだろう。これは他国の過去だけの話ではないのはもちろんである。
唯一の救いはラストのラストでわずかにホッとできるということか。ただ、あの少年がこれからうまくやっていけるのかはちょっと不安。

設定や展開はよくできているとは思ったのだが、どうも脚本が今ひとつの部分がある。人物が会話で説明過剰と思えば、説明少なくてよく分からない場面もあり。死人も多すぎるんではと思う。
救出された後、砦に着いたのに女性がその後も部隊に同行する理由がよく分からなかった。(同行しないと話が進まないというのは分かるが)
それから、主人公や戦友の内心の動揺の描写が中心となっているため、どうしても先住民側の描写が薄くなってしまったのは残念だった。

主役のクリスチャン・ベイルはまさに「鬼気迫る熱演」とはこのことか!としか言いようがない演技で全てを圧倒していた。最後の殺人の後の姿はあまりの迫力で正視するのも恐ろしいぐらい。
さらに『バイス』とどちらを先に撮ったのか不明だが、あの映画と比べると痩せこけてて胴回り三分の一、顔の幅は半分くらい(^O^;)と言っていいだろう。とても同一人物とは思えません。
人妻役ロザムンド・パイクの、狂気でイっちゃった眼も負けずにコワかった。さらに元部下のベン・フォスターも出番は短いが見事な悪役ぶりである。
出番が短いと言えば、チョイ役でティモシー・シャラメが出ていたのには驚いた❗ あっという間に退場しちゃうのだが、2017年製作なので彼がブレイクする直前に撮ったのだろうか。

さて邦題についてだが、これがまた問題(原題は「敵対者たち」)。この手のタイトルは後から区別が付かなくなる案件なのである。例えば「誓いの荒野」でも「荒野の決意」でも全く変わらない。正確に思い出せなくなってしまう。
もっとも「タイトル見ただけで西部劇と分かる」という意見もあり、なるほどそういう面はあるかと思った。確かに場内は西部劇ファンとおぼしき高齢男性多数であった。
『マルリナの明日』でも高齢男性の観客がやたら多かったのだが、あれは西部劇(というかウェスタン)ファンだったのだなと思い至った。

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