映画(最近見た作品)

2017年8月16日 (水)

「メットガラ ドレスをまとった美術館」:ゴージャス 汗と涙と交渉と

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監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター
米国2016年

結論から言うと非常に面白いドキュメンタリー映画だった。ファッション界やアートに興味のある人は見て損はしないだろう。

タイトルのメットガラとは、米国はニューヨークのメトロポリタン美術館で年に一度開かれる服飾部門の資金集めイベント&パーティのことだそうだ。展覧会と連動して行われる。2016年には15億円集めたというからすごい。
ヴォーグ誌の編集長アナ・ウィンター(美術館理事)とそのスタッフが全面協力する。

映画で取り上げられた2015年の展覧会テーマは「鏡の中の中国」、ファッションにおける中国のイメージを取り上げるということで、まず事前の折衝を山のようにしなければならない。それらを全て仕切るのが服飾部門のチーフであるA・ボルトン、40代ちょっとでまだ若い人だ。

館内の中国部門の責任者は所蔵品が単なる背景の飾りとして使われないか心配で、イチャモンを付ける(でも、そもそも「イメージ」としての中国なんだから無理では……)。政治的に微妙なので中国政府にも直接談判、在米中国人会の了解も得る。色々あって大変だ。
オリエンタリズムに陥らないか、差別と言われないかという不安もある。
ここで企画に参加している映画監督のウォン・カーウァイの説得が、かなり功を奏していた。貫禄ですかねflair

前段で、そもそも服飾が美術であるかどうかという問題が取り上げられていた。中国部門から見れば、やってることは派手でも数千年もの歴史を持つ美術品と比べられてたまるかと思うだろう。

一方、パーティはステージの出演者や招待客の選定、そして席順決めも大変だ~。会場のデザインも難しい。アナ・ウィンターが決めては変えていく。
彼女は『プラダを着た悪魔』で有名になったが、見ていると実物はあのイメージとはかなり異なるようだ。(インタヴューでその話題も出る)

オープニング前夜(いや、当日早朝か)も会場のセッティングは終わらない。一人黙々と展示されたドレスの裾の位置をしつこいほどに修正するボルトンの姿を、カメラが延々ととらえる。その背中には誰も踏み込めない執念のようなものが見える。

果たして展示もパーティもうまく行くのかsign02 分かっていても、見ててドキドキしてしまう。信念を持ったプロフェッショナルの仕事を見せてもらったという気分だ。
とにかく見てて飽きることのない緊張感が続く。ドキュメンタリーとしてはナレーションを一切使わない形式で、密着取材と編集の技が発揮されているといえよう。

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2017年8月13日 (日)

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」:カミング・ホーム 君は一人じゃな

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監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック
米国2016年

マンチェスター……イギリスの話なのかなあ、などとボンヤリ思ってたら大間違いng 「バイ・ザ・シー」も入れて一つの町名で、米国が舞台なのであったよ。

ボストンでしがない一人暮らしをする男、兄が急死して故郷の町に戻ると、高校生のおいっ子の保護者になるように求められる。しかし、彼にはこの町で暮らしたくないいきさつがあったのだ。
その「過去の事件」が回想をまじえつつ徐々に明らかになっていく。

そんな過程が、極めて淡々とゆっくりと美しい港の風景と共に描かれていく。あまりに淡々としている上に137分という長尺なので、途中で寝るヤツがいても不思議ではない。とにかく長いのである。
甥はバンドをやったりして高校生ライフを楽しみ友達も多い(父親が死んだばかりなのに鳴り物鳴らすというのはちょっと驚いた)。しかし、それは事件が起こるまでの主人公も同様だったのだ。そのような生活は彼にはもうない。

彼は立ち直れぬままであり、周囲の人間(兄の元奥さん、自分の元妻)も立ち直っているようで、実は立ち直っていないのが明らかになっていく。
私は枡野浩一の『くじけな』という詩を思い出した。

「くじけな/こころゆくまで/くじけな/せかいのまんなかで/くじけな」

他にも「二人でいると人生は二倍淋しい」とか「あしたがある/あしたがあるから困る」などと、読んでいると甚だしく落ち込みのスパイラルに陥る。そんな世界である。

他の人の映画評で、この作品に登場する「善意の隣人」について書いているのを読んだ。フィクションでは珍しくはないが、果たして現実にはそのような「隣人」が存在するか?というような趣旨だったが、そういえば『裁かれるは善人のみ』にもそのような隣人が登場する。もっとも、主人公が不幸な目にあう原因に、その隣人が一役買っているのだが……。

そう思い返してみると、主人公と隣人夫妻との関係、親を失った少年に対して彼らがラストで取る行動、頻繁に挿入される海の光景wave--など、『裁かれる~』とかなり似ていることに気付いた。テーマや作風は全く異なるけど。どこか影響受けているんだろうかね。

ケイシー・アフレックはこの演技でアカデミー賞の主演男優賞をゲットしたが、うーむ、どうだろうか(?_?; 悪くはないけど、同じくノミネートされたA・ガーフィールドやヴィゴ・モーテンセンと比べて図抜けているというわけでもない。
むしろ、甥役のルーカス・ヘッジズ(やはり助演男優書にノミネート)がよかった。若いんで今後の注目株であろう。
お懐かしやマシュー・ブロデリックが出演。見てた時は分からなかったですよdash

音楽はヘンデルやパーセルなど、なぜかバロック音楽が使われているが、使い方が唐突でしかも音量がデカい。なんなんだろうsign02


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2017年8月 6日 (日)

「ハクソー・リッジ」:サイレンス・ソルジャー 独立愚連衛生兵

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監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド
オーストラリア・米国2016年

『沈黙』に続き、再びガーフィールドがいぢめられる役に(>y<;) 思えば『アメイジング・スパイダーマン』でも、いじめられっ子の高校生役だったからその手の役が似合うヤツなのであろうか。

主人公は第二次大戦で兵役を志願するも、宗教上の信念から戦闘行為は拒否。軍法会議もはねのけて念願の衛生兵になる。そして向かった先は激戦地の「ハクソー・リッジ」……。
これが実は沖縄の前田高地だというのを、日本公開に際し隠して宣伝していたということが話題になった。隠しても、実際見に行ったら分かっちゃうのであまり意味はないと思うけど、事前に公開反対運動が起こったりすると困るということか。

それはともかく、戦闘シーンは相当な迫力。『プライベート・ライアン』の冒頭部分が延々と続く感じで、もういつ弾丸飛んできて当たってもおかしくない気分になる。おまけに人の手脚が容赦なくimpact吹っ飛ぶんで、その手の場面が苦手な人は避けた方が吉であろう。

約140分という長さも含めてメル・ギブソンの監督としての力技発揮というところか。激しい戦闘にさらされた兵士が陥るパニック症状で、死の淵をのぞいたような眼になってしまうというのを、映像で初めて見た。

役者は父役のヒューゴ・ウィーヴィングに注目だろう。ヴィンス・ヴォーンの鬼軍曹は、過去の同様な映画に比べるとどうしても「鬼」度に欠けるようで。

なお、私の父はまさに衛生兵だったが、それは体格が貧弱だったからだそうだ。日本軍では衛生兵とはそういう者がなったらしい。

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映画短評5~6月期

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★「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(字幕版)

監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット
米国2017年

前作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をあんまり気に入らなかったのに、今度こそは面白いかな~と思って見に行ってしまった。
で、やっぱり気に入らなかった(>_<) なんたることよspa

どうも冒頭の、他のメンバーが闘う脇でグルートが踊ってる場面からして、まずノレない。その後は大宇宙規模の話が「家族」の絆と同じレベルで展開する。
色んなものがテンコモリ過ぎて、最後は泣かせるけど消化不良になりそうだ。

カート・ラッセルがこちらでは大物中の大物を演じている。こういう役が回ってくる風格あるベテラン役者の域に達したのかと思うと、感慨深いものがあるのう。

フリートウッド・マックの『ザ・チェイン』が肝心な場面でここぞと多用されているけど、あれって男女間のドロドロした妄執の歌なんでは……(~_~;)

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★「スプリット」(2017)

監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカヴォイ
米国2017年

シャマラン監督、久々の復調up 予告も面白そうだヽ(^o^)丿 23重人格の男が女子高生を誘拐だって!

と大いに期待して行ったが、見事に裏切られたのだった。
前半はJ・マカヴォイの多重人格芸炸裂flair見事過ぎてあっけにとられるというか、ちょっと笑っちゃうけど面白かった。
後半はドタバタと展開し意外な方向へ--果たしてこれが私の見たかったものなのであろうか(?_?)なんて思っちゃった。

そして、ラストは過去作の『アンブレイカブル』へとつながる。なんとこれは三部作の2作目になるんだってdanger そんな話は聞いとらんぞ~(-"-) いやもうどうでもいいです。

ヒロインと共に誘拐される二人の娘っ子のうちの一人が、すごく演技が下手くそだった。なんとかしてくれと言いたくなるレベル。オーディションしたんだろうし、なんで採用したのか分からん。


★「オリーブの樹は呼んでいる」

監督:イシアル・ボジャイン
出演:アンナ・カスティーリョ
スペイン2016年

ケン・ローチ作品の名脚本家として知られるポール・ラヴァーティの脚本を彼の奥さんが監督した作品、ということで興味を持って行ったが、いや~久々にどうしようもなく詰まらない映画を見たbomb

もう、始まって10分ぐらいで「××でやってる○○○を見に行けばよかった」とか「△△で※※※もやってたっけ」などと思い浮かべては後悔する羽目になったannoy
どう詰まらなかったのか説明する気にもならないぐらいである。
今年のワースト映画決定。もし今年中にこれ以上詰まらないのを見たとしたら、豆腐の角に頭打ち付けたくなるだろう。


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2017年8月 1日 (火)

「バーニング・オーシャン」:デンジャラス 燃える水平線

監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ
米国2016年

2010年メキシコ湾原油流出事故の実録ドラマ。石油の掘削施設が破損して火災になった揚句、噴出&流出し、環境汚染もひどかった。
親企業と複数の下請け会社が同じ施設内にいて、事故の予兆があってもなかなか連携できない状況が描かれる。
あと不思議だったのは、事故がひどくなっても非常放送とか警報が入らないこと。冒頭の裁判の場面で言及あったっけ(?_?) 最初のトラブルで責任者に連絡もしないし……danger

安全をないがしろにして進行を早めたい親会社とか、後で責任を問われるとマズイので決定的な処置ができなかったり救難信号出せないとか、こういうのはいずこの国でも同じだなあと思った。

主人公の電気技師を始め、登場人物のほとんどは実在の平凡な市民なので、そちらの方面での盛り上げは無理(人間関係は丁寧に描かれている)。よって終盤の災害場面が最大の見ものとなる。
一旦事故が始まると画面炸裂impact何が起こっているのか見てて分からない。実際、その時現場にいた人もそうだったのだろう。
施設全体が燃え上がる場面はものすごい迫力で、思わず口アングリ(@O@)状態だった。

主役のマーク・ウォールバーグは事故を生き抜いた強さと共に弱さも見せる男を熱演。しかし、悪役を一人で担う親企業の上司ジョン・マルコヴィッチと、親方風威厳を見せるカート・ラッセルの二人に全てを持って行かれたようである。
ラッセルとケイト・ハドソンの親子共演も話題になりましたな)^o^(

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2017年7月17日 (月)

「ムーンライト」:テンダネス タフでなくては生きていけない

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監督:バリー・ジェンキンズ
出演:トレヴァンテ・ローズ
米国2016年

日本では果たして公開されるのか危ぶまれていたほどだったのが、アカデミー賞取り違え事件によって劇的なまでに盛り上がり、なんと「今ここで公開せずしていつやるかーっon」という勢いで前倒しで日本でも公開されたのだった。

広告の写真が3分割になっている通り、一人のアフリカ系でゲイの少年が成長していく過程を三つの時代に分けて描く(その度に呼び名も変わる)。その描写は地味で淡々としているが、映像は計算され尽くしていて色彩もその空気も美しい。
引き合いに出されていたのがウォン・カーワイで、監督も影響を認めている。しかし、私はカーワイ作品を見たことがないのだった。許して~_(_^_)_

アフリカ系少年、貧困地区、同性愛、ドラッグディーラー、毒母、いじめ、児童虐待……とある意味刺激的な要素が並ぶが、先に書いた通りにその描写は奇をてらうものでもなく、感動をあおるようなものでもない。非常に内省的であり、深夜に微かな虫の声に耳を澄ましているような印象だ。えー、言い換えればエンタメ感は全くない作品ということである。

ヤク中の毒母一人子一人暮らしで、いじめられっ子で繊細な少年が生きていくにはこの世界はハード過ぎる。結局、親切にしてくれたドラッグ・ディーラーの男を仮の父親のようにして、自らも同じマッチョな道を歩む。他に身近なロールモデルがいないから。
しかし、身体はいくら鍛えられても魂はそうはいかない。強固な肉体と身振りの内側はまだ柔らかい少年のままなのである。
そして「初恋の男」との再会……。

あまりに繊細shineロマンティックheart02
これ以上行ったら陳腐になってしまうのではないかというギリギリのところで成立しているように思えた。
監督も舞台になっているのと同じ地区の出身だそうだ。自分の過去の状況も投影されているのだろうか。

オスカー作品賞で勢いを得たついでか?新聞の夕刊に8ページに渡る全面広告が載っていたのには驚いてしまった(!o!) 全面広告って高いのに採算取れるんかいsign02--なんて余計な心配をしてしまったですよ。

助演男優賞の獲得のマハーシャラ・アリは出演時間は短いものの、さすがに渋~い味を出して引きつける。TVシリーズ『ハウス・オブ・カード』でも曲者ぞろいの役者の中で目立っていただけはある……といっても、元々いい役なんだけど。
M・アリつながりで、ぜひ彼も出演している『ヒドゥン・フィギュアズ』の公開を願うと祈って(^人^)いたら、公開決定でメデタイこってす。(邦題問題が炎上したが)


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2017年7月 8日 (土)

「午後8時の訪問者」:エマージェンシー 堕ちた女医、真夜中の往診

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監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:アデル・エネル
ベルギー・フランス2016年

ケン・ローチと同様にカンヌの常連、ダルデンヌ兄弟。その新作は珍しくサスペンスthunder そんな触れ込みで宣伝や予告もその線だったが……やっぱり違ったですよ(^^;)

町の小さな診療所で臨時の医師を務める女性医師。診療時間が過ぎた後にドアのベルが鳴った時、彼女は応対に出ず、若い研修医に対しても引き止める。しかし、それが翌日死体となって発見された若い娘だったことが判明する。
自責の念に駆られ、せめて娘の身元をハッキリさせて葬りたいと調べて回ることになる。

一体殺人なのか、殺人としたら誰が犯人なのか……作品の主眼はそこにはない。
彼女が娘の知り合いを探して街を歩き回るうちに様々なもの、そして人が浮かび上がってくるという次第だ。そういう点では前作の『サンドラの週末』と似ている。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』と同じような社会問題を扱っていても、タッチは全く正反対。こちらは暗くて地味だし、話が進むにつれて人間の卑小さ、弱さがジンワリと滲み出してくるようだ。思わず机に突っ伏して泣きたくなっちゃう。
でもやっぱりケン・ローチよりこっちの方が好きなんです(*^^)b

サスペンスといやあ、電話(スマホ)の呼出音と診療所の入り口ブザー。鳴るたびにギャッと飛び上がっちゃったimpact

それにしても、いつもダルデンヌ兄弟の作品を見ていて引き付けられるのは、ストーリーとはさほど関係ないような、主人公の身振りである。
『息子のまなざし』で大工である主人公がスタッと家具の上に飛び乗ってしまう描写、『ある子供』の「子供」が所在無げに池の水をかき回す場面、『少年と自転車』の美容師のハサミと手の動き、あるいは『サンドラの週末』でまぶしい陽射しの中を歩き回るサンドラ……。
他の監督の映画ではここまで役者の動作が気になることはない。不思議である。

今作では、ヒロインは顔は常に愛想のない仏頂面をしていて喋る時もぶっきらぼうなのに、一方診察する動作は極めて相手に対して親密なのだ。診察場面以外でも「ああ、若い娘さんがトレーラーの中で見知らぬ男とそんなに接近してはイカン(>O<)」とオバハン心をハラハラさせてしまう。

そのような相反する人物像が導き出す結果は、やはり複雑で不条理で一つの面からは割り切れないものであった。

驚いたのは、診療所に医者一人しかいないこと。看護師も受付もいないのだ。医療事務なんかどうするの? ベルギーでは実際こうなのかねsign02
日本だったら、都市部にこんな診療所あったら待合室が常に満杯状態になりそうで、とてもやってられません。


余談だが、エンドクレジットやってる(客電ついてなくて暗い)時に、隣のオバサンがスマホ取り出して眺めててまぶしくてマイッタ。ダルデンヌ作品だから音楽も流れないし、画面見てないんだったら外に出ればいいじゃないの。他人には眩しいんだよannoy

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2017年6月18日 (日)

「わたしは、ダニエル・ブレイク」:ビリーブ いつか給付金を貰える日まで

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監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ
イギリス・フランス・ベルギー2016年

一旦、監督引退宣言をしながら世情に憤り復活し、ついでにこの作品でカンヌでパルムドールまで取っちゃったケン・ローチ。
見れば直球過ぎるほどの怒りの爆発annoyであった。

発端は、持病のため医者から労働を禁じられている主人公が、役所(の委託機関?)から就労可能と判断されて補助金を止められてしまったことだ。
電話で長時間待たされてイライラしていて、担当者と言い合いになってしまったことが原因だと思われる。しかし、結果として働けないのが分かっていながら失業保険を貰うために、手書きの履歴書(パソコン出来ないので)を配って歩いて偽りの就労活動しなければならない羽目になる。
一方、同じように役所に来ていた失業中のシングルマザーと知り合う。

意図的だろうが、ここには「善人」しか登場しない。普通だったら、主人公は短気なクレーマー親爺だろうし、シングルマザーは自堕落で時として育児放棄、二人の子どもは言うこと聞かずに勝手気まま、隣人の怪しい密売屋は迷惑かけ放題。パソコンカフェの若者だって、声かけたらそんな親切に教えてくれるとは思えん。

しかし、そのような要素はこの問題には関係ない!<`ヘ´>と全て切り落としているのである。さらには労働大臣の名前を出して批判punch 直球勝負たる所以だ。

もっとも主人公は不屈の頑固オヤジというわけでもない。落書き事件でハイになるも、とっ捕まって警察に説教されればショボンとなってしまうところなど、笑ってしまう。
でも、ラストの一言には涙が出る。

設定やストーリーは『ティエリー・トグルドーの憂鬱』や『幸せなひとりぼっち』(←見たけど遂に感想書けず)に似ていて、どこの国も同じような問題が存在するのだなとヒシと感じた。

ケン・ローチ、まだまだ活躍しなけりゃならないようである( -o-) sigh...

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2017年5月28日 (日)

「おとなの事情」:知らぬが仏、知れば鬼

監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
出演:ジュゼッペ・バッティストン
イタリア2016年

イタリア製喜劇。それもかなり黒~い笑いに満ちている。いや、それより笑うに笑えないというところか。

幼なじみの仲良し男四人組が、恒例の夕食会を行う。今宵も皆、奥さん同伴でメンバの一人の自宅マンションに集合。このマンションが低層でかつ広い!(うらやましい)
もっとも、バツイチのオタク系教員の男は恋人を連れてくると言いながら、病気で来れなくなったと一人でやって来たけど。

今では職業も家庭の事情も異なる彼ら、チクチクと不穏な会話が飛び交う。
そのうち、妻の一人が全員のスマホ・ケータイをオープンにしてやり取りを聞かせ合うゲームをしようと言い出した。全員、互いに秘密はないのだから、とok
そして食卓の上を電話とメールが入り乱れる。

結果は……恐ろしい秘密がボロボロと(ーー;) 明るみに出る不和annoyリアルタイムで広がる亀裂punch 見ているだけで冷汗が出てウギャーッ(>O<)となるのは間違いない。

しかし驚いたことに、ラストはそれまでの経緯を全てひっくり返すような意外なものになっているのだsign03 こりゃ、一体どういうこったい。

多くの人はこれを、登場人物が何もなかったことにしているのだと解釈してたが、そうじゃないだろう。この結末は、ある意味「並行世界」である。(SFじゃないけど)
作り手はハッキリと具体的に「異なる世界」だと示している。獣医妻の口紅とか、弁護士の妻が出て行った時間差とか、イヤリングの件とか。

パンフレットでは、監督が結末の方が実際に起こったことだと明言しているそうだ(私はパンフを買わなかったので詳細不明)。
虚偽と破滅、一体どちらがいいのかと観客に問うているようである。もっとも、いくら隠してても早晩バレそうな秘密もチラホラsweat01 いずれにしても安泰ではいられない奴もいるのは確か。

舞台はほとんどマンションの一室に限られている。しかも、ほとんど食卓に輪になって座って喋っている場面ばかり。しかし、セリフや編集が巧みで飽きさせることがない。
現場の撮影方法など疎くて知らないけど、1人がテーブルで喋ってる場面を切り返して反対側から撮ったら、向かい側のカメラが入っちゃわないのか? うまく隠しているのか、それとも同じ場面を繰り返して撮影しているの?(とてもそうは思えないが)
もちろん、役者の皆さんもリアリティのあり過ぎな演技で感心の一言である。

原題をそのまま英訳すると”PERFECT STRANGERS”となるらしい。意訳すれば「夫婦は他人の始まり」ってとこか。
まことに濃ゆい大人向けの皮肉なコメディである。さすがイタリアだね~。

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2017年5月21日 (日)

「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」:異なる世界の片隅に

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監督:ジャンフランコ・ロージ
イタリア・フランス2016年

ベルリン映画祭で受賞したということでも話題になったドキュメンタリー。
イタリアの端っこののどかな島の生活と、小型船に定員の十倍も乗り、地中海を渡ってきてその近海に流れ着くアフリカ・中東の難民たちの姿を捉える。

難民は直接島に漂着するわけではないから、島民とは接触することはない。唯一の例外が島の医師で、彼はかなりの数の難民の検死を行なうそうである。

島の生活はまるで昭和の日本のよう。島民は漁で生計を立て、ラジオからはイタリア歌謡としか形容しようがない音楽が流れる。一人の少年の日常に密着するが、ネットもゲーム機もなし。廃墟となった家に潜り込み、木の枝を削ってパチンコを作り、戦争ごっこに興ずる。
一体いつの時代だ~(@_@;)

一方、救助を求める難民船に入ったカメラは船の最下層に積み重なる数々の死体をとらえる。生き延びた人々も茫然としパニック症状で震えが止まらなかったり、泣きだしたりする。
こちらの方の映像は極めて衝撃的だ。見ていて冷汗が出る。
しかし、カメラはあくまでも淡々と、決して交わらぬ島民と難民の姿を並行して撮っていくだけだ。同じ時、同じ場所に、両極端に異なる世界が互いに接することなく存在する不思議。

難点は島民の描写に明らかに演出が入っていること。そうすると、この平穏さも作為的に強調されたもんじゃないの?などと疑わしく思ってしまう。
さらに延々と日常生活を撮っているもんだから(スパゲティ食べてるところとか)、退屈過ぎて映画館内を眠気虫が跋扈し、文字通り「沈没」してしまうのであった。
こういう対比が「わざとらしくてイヤng」という意見が出てきても致し方ない。

個人的にはもう少し島の場面を削って短くしてほしかった(上映時間は2時間弱)。ただ、この「退屈さ」こそが監督の意図したところかもしれないが。

第2次大戦中に島の沖を軍艦が通った話が出てきたが、それを考えるとこの島は歴史的に海上交通の要衝にあるのかも知れない。
そういう部分ももう少し知りたかった。


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