映画(最近見た作品)

2022年8月 6日 (土)

「FLEE フリー」:真実からの逃走

監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フランス2021年

アフガニスタンで生まれ育った少年が政変を逃れ、共産主義体制が崩壊したばかりのロシアに家族と共に亡命する。そんな過酷な半生を語るドキュメンタリーである。
その手法が全編アニメーションで描くというものだ(実写は当時のニュース映像が時折入るぐらい)。過去に起こった出来事は後から撮影はできないからアニメで再現するのは「あり」だが、現在の生活やインタビューの姿も恐らく一度実写で撮影したものを描きなおしている。
個人を守るためにそのような形にしたのだという。

カブールでの子ども時代、父は不在でも楽しかったけどすぐに終わりを告げる。逃亡先のロシアでの生活も恐怖と一体だ。
苦難の末、結局彼は家族と離れたった一人で異国の地に立つことになる。危険なので自分のこと家族のことの真実は話せない。虚偽で固めた「自分」を守るしかない。

あまりにつらい話が続くので見ているだけでも段々とへこんでくる気分だ。
そのような体験は大人になった彼の精神の中に暗く影を落としているのが、段々と明らかになっていくのだった。
さらに自分がゲイであることが分かったら、唯一のよりどころである家族からさえも拒否されるのではないか--この煩悶は苦しい。ウウウ(=_=)

鬱屈を抱える彼へ、最後の最後に救いが出現する。俄かにこの場面こそドキュメンタリー+アニメという手法が最も有効な瞬間となる。
いざ、過去の影より抜け出て明るい日々へ--✨


なお、誰でも鑑賞後に「おにーちゃん、疑ってすまなかった。あんたはエエ人や」m(__)mガバッと土下座したくなるのは確実であろう。

それにしても、モスクワのマクドナルド第一号店開店のお祝い騒ぎの横であんなことが行われていたとは(>y<;)

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2022年7月12日 (火)

「ドンバス」:不道徳かつ不健全な真実

220712 監督:セルゲイ・ロズニツァ
出演:タマラ・ヤツェンコ
ドイツ・ウクライナ・フランス・オランダ・ルーマニア・ポーランド2018年

今見ずしていつ見るか👀というテーマのロズニツァ監督作品、登場である。
ドキュメンタリー「群衆」三部作は面白いんだか面白くないんだか判然としないままに全作つい見てしまったのだが、彼が作る劇映画というのはどういうものなのか、一度見てみたいと思っていた。
それがロシアによるウクライナ侵攻によって急遽、緊急公開となったらしい(もっとも、そもそもはドキュメンタリー『マイダン』をやるつもりだったとか)。

内容はオムニバス形式で13のエピソードを円環状につないだもので、一部の人物が次のエピソードに登場したりするがほぼ相互関係なく続いていく。舞台は2014年から親ロシア派が支配するウクライナ東部ドンバス地方である。
いずれも実際に起こった出来事を元にしたというが、少し前だったら正直バカバカしすぎて「こんなんあるか👊」と信じがたい不条理な内容ばかりだ。でも最近のウクライナのニュース映像を見た後だと、ほとんどそのまんまなのである(゜o゜)

地下シェルターで暮らす人々、検問所、破壊されたバス、捕虜をいたぶる市民、フェイクニュース、突然襲う砲撃(音響がすごい)←特にこれは少し前に見た香港のジャーナリストが砲撃受ける映像が、ほぼ同じような感じだった。コワ過ぎである。

しかしながら、それらの出来事はブラックユーモアを混ぜて突き放して描かれていて、そこには社会性とかヒューマニズムとか感動の類いは何もない。そういうものを期待してはイカンのである。
結婚式の場面に至ってはただただ醜悪でバカらしい。しかも、新郎新婦役を演じているのが本物の夫婦だという……💨

一番イヤ~ッ(>O<)と思ったのは、取材に来たドイツ人ジャーナリストが兵士たちから「ファシストファシスト」と呼ばれた挙句「お前はファシストじゃなくても、お前のじーさんはファシストだったろ」と詰められる場面。
日本人も所と場合によっては似たようなことを言われそうかも(?_?;

逆に言えば、今回の戦争がなかったら果たして日本公開されたかどうか分からないほどの取っつきの悪い内容である(そもそも紛争の背景とか地理関係とかほとんど理解できなかったかも)。
ここまで人間の醜悪さを見せる作品であるから観客を選ぶことは確かだろう。心してご覧くだせえ。


なお、ロズニツァ監督はベラルーシ生まれで、ウクライナ育ち。学校を出て当地で働いていたが、ソ連崩壊後にモスクワの映画学校に入ったという複雑な経歴である(現在の本拠地はドイツ)。しかも母語はロシア語で名前もロシア語読みだという。
ウクライナ侵攻が始まった時にヨーロッパ映画アカデミーのロシアへの対応がぬるいと批判して退会を表明。
一方、ウクライナ映画アカデミーがロシア映画ボイコットを呼び掛けた際に、自国政府を批判するロシア人監督の作品まで含めるのはおかしいと異議を唱えたところ、こちらは除名処分にあってしまった。

さらに今年の秋に日本公開予定のドキュメンタリーは内容的にかなり問題作だったもよう。
「私はこれまでの人生で、いかなる共同体、グループ、協会、または、「圏」を代表したことはありません」(プログラムより引用)
しばらくロズニツァから目が離せないようである。

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2022年7月 2日 (土)

映画落穂拾い2022年前半編その1

忘れた頃の落穂拾い、期せずしてアニメ特集となりました(^^ゞ

「ロン 僕のポンコツ・ボット」
監督:サラ・スミス、ジャン=フィリップ・ヴァイン
声の出演:ザック・ガリフィナーキス
米国2021年
TV放送視聴

孤独な少年にプレゼントされた、みんなが持ってる友達ロボット。ずっと買ってもらえずに自分一人だけが持ってなかったので、喜んだのはいいものの贈られたのは不良品だった💥--というCGアニメ。
SNS依存の代わりに、子どもたちはロボット依存が甚だしくて全生活を頼り切っている。いかにも現代のお子様向きのテーマかもしれないが、あと10分ぐらい短い方がよかったんじゃないのと思ってしまった。

主人公がトムホっぽかったんで、ついスパイダーマン連想したりして。
友達みんなのため、さらには世界の平安のために大切なものを失うのをあえて認めるというのも似通っている。これも大人へ向かう試練というやつか。
悪役がS・ジョブズに似ているのは何か恨みがあるのだろうか(^^?と思ったりして。

結局、「ロボットが不良品」という一点だけで突破を図ったような気がしなくもない。ロボットはカワイイけどな。

しかしこのロボット、子どもより独居老人向けなんじゃないのか。話相手になって、荷物を代わりに運んでくれたり、杖代わりになったり、「えーと、向こうから来る人誰だっけ?」という時に「前の町内会長ですよ」と教えてくれたりして……孫より大事に思っちゃうかも。


「ミラベルと魔法だらけの家」
監督:バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ
声の出演:ステファニー・ベアトリス
米国2021年
VOD視聴

こちらはディズニーアニメ。メガネのヒロインはチャーミング、家族のキャラクターも多様、音楽は良し、映像の色彩や動きは驚くほど(特にミュージカル部分の自在さ)……なんだけど、後半の展開についていけず肝心のテーマがよく理解できなかった。

バラバラになった家族が雨降って地固まるってことなのか(?_?)
家族の再生の話としても、どうにも複雑で回りくどく、遠くまで引っ張った挙句に元通りとは、納得いかない気分でモヤモヤする。
裏に何か意味があるんだろうとは思うものの、そこまで追求する元気も興味もないのであった。

結局ミラベルは「何者」なのか? 主人公は彼女じゃなくておばーさんの方だという説もあるし、ますます不明。音楽・映像に目が(耳が)くらみ脳ミソがついていかない。
というわけで前半9点、後半5点みたいな配分。分かる人だけに分かるミュージカル・アニメかな。
なお作中歌の「秘密のブルーノ」は大ヒット、再生回数で「アナ雪」を抜いてディズニー作品の中でトップになったとか。でも、アカデミー歌曲賞の候補になったのはこの曲ではなかったんだよね。


「アンネ・フランクと旅する日記」
監督:アリ・フォルマン
声の出演:ルビー・ストークス
ベルギー・フランス・ルクセンブルク・オランダ・イスラエル2021年

要するに「アンネの日記」のアニメ化ね--と思って興味が今一つ持てなかったが、そんな一言でまとめられるような単純なものではなかった。
さすがに『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン監督、というところか。

現在、観光スポットと化しているアムステルダムの博物館、そこに保存されている事物のアンネの日記から少女が突然現れ、そして街中を歩き回る。

彼女は日記内に描かれるアンネの空想上の友達だった。しかし、彼女はアンネがその後どうなったか知らない。当然だ、日記はそこまで書かれる前に終わってしまっているのだから。

周囲の観光名所の数々に名が付けられ、象徴となってしまった「アンネ」現象に向ける視線は辛辣である。まるで本人に代わって批判しているようだ。

迫害から逃れ屋根裏に隠れ潜むユダヤ人と、警察の取り締まりを避け廃屋に集まり住む現代の難民や不法移民を重ね合わせるのは、まさに「今」にアンネを立ち現わせる試みと言えるだろう。
難民を迎えに来たバスがウクライナを連想させてウツウツとなってしまった。

結構クセのある作風なので、見る人を選ぶかもしれない。
ドイツ軍と戦う神話の軍団が「アベンジャーズ」みたいなのでちょっと笑ってしまった。

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2022年6月23日 (木)

「スティルウォーター」:全てを得て、全てを失う

監督:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン
米国2021年

「見ると聞くとは大違い」というのをまざまざと実感した一作である。
実際に見る前の、目にした予告や宣伝の印象だけだとこんなストーリーに違いないと思った。
《フランスに留学中の一人娘が殺人の嫌疑を受けて獄中に💥 米国オクラホマの田舎町に住む父親は怒り心頭に発し急遽フランスに渡り、言葉も通じぬ中で真犯人を探し回る。
ひょんなことから知り合ったシングルマザーの女性と衝突しながらも協力し、米国とは異なる制度の中で弁護士に食い下がり、マルセイユで不良と渡り合い、執念の調査を続ける中で遂に真実への糸口をつかむのであった--。》

こりゃ、よくある星条旗を背負ったアメリカ人が他国フランスに殴り込みかけて暴れるというパターンではないか。しかも主役がマット・デイモン(ジェイソン・ボーンを想起せよ)とあってはなおさらである。見る気な~し<(`^´)>
--と決め込んでいたら「そういう話じゃない」という感想を幾つか読んだ。そして考えを変えて見ることにしたのだった。

主人公は建築現場で働いているが不況で仕事は少ない。そんな中でも彼は定期的にフランスへ出かけては、数年前から収監されている娘と面会する。差し入れをして洗濯物を受け取り、弁護士に事件調査の進展状況を聞く。
娘を救おうとする地道な繰り返しに男の性格がうかがえる。食前には必ず祈り、他人との会話では丁寧に「サー」と「マム」を付ける。

しかし一方でフランス語をあまり覚えようとはせず、アメフトがスポーツの頂点でありサッカーなど児戯に等しいと考えている。平均的な保守派白人男性であり、選挙では当然トランプに投票する。
娘はそもそもそのような父親に反発して、フランス留学に行ってしまったらしいのだ。

長くフランスにとどまるうちに彼は異文化と接さざるを得ない。
応援するチームが勝ったにもかかわらずサポーターが暴れて火をつけるサッカー場。移民が多く、恐ろしい暴力と敵意に満ちた港町マルセイユ👊こわっ(>y<;)
知り合ったシングルマザーの女性にしても、マイナー劇団の女優であり排外主義を憎むリベラルな人物である。米国にいたら接点は全くない人物だろう。

やがて物語は驚く展開を遂げる。男の意外な真の姿も露わになってくる--いや、意外なことはないのだ。それは事前に全てあらかじめ告げられていたことなのだから。

あらすじを思い返せば確かに紆余曲折波乱万丈なのだが、淡々と話が進んでいくので全くそういう印象はない。だから余計にしみる。
すべての原因が結局主人公に帰していくのは見ててつらい。結末の後に思い返すと目がショボショボしてしまう。
指折り数えて人生で得たものより失ったものの方が多くなったような年齢の人間には、さらに心に刺さるものがあるだろう。静かなる力作と言える。

監督は『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー。私はこちらの方が気に入った。次作に期待である。
主役のマット・デイモンについては、実はこれほどうまい役者だとは思っていなかった(すいませんm(__)m)。普段言いなれない皮肉をシングルマザーに向かって言おうとする場面とか。
そのフランス女性を演じているのは『ハウス・オブ・グッチ』で「愛人」役だったカミーユ・コッタンである。あちらではパッとしなかったけど、ここでは溌溂と魅力的で別人のよう。
娘役のアビゲイル・ブレスリン、なんと『リトル・ミス・サンシャイン』のあの子役がすっかり大きくなって✨ 私も歳を取るはずだわなー(+o+)


感想書くのが遅れて、ドタバタしている間にソフトが出て配信にもなってしまった。反省である。

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2022年6月 9日 (木)

「シチリアを征服したクマ王国の物語」(字幕版):食われる前に騙れ

220609 監督:ロレンツォ・マトッティ
声の出演:レイラ・ベクティ
フランス・イタリア2019年

原作はイタリアの作家ブッツァーティの児童文学、フランス在住のイタリア人監督がアニメ化したものである(言語は仏語)。
見ればアッと驚くのはうけあい、とにかく物語も語り口も絵柄もぶっ飛んでいる。

町を回っては芝居を見せる旅芸人の老人と少女の二人組。一夜の寝床を求めて洞窟に入ると、巨大なクマが突如出現する。食われないために二人はクマが登場する持ちネタを必死で披露しようとする。
それは、クマの王の息子が人間にさらわれてしまい亡国の危機に陥る。そのため人間の支配するシチリアへと向かうという波乱万丈の物語だった。

独特の造形・色彩による自然描写に目を奪われる。全体のイメージもキリコのパロディあれば、戦争場面はロシア構成主義が元ネタだろうか。
雪玉を転がし幽霊と踊る。変なものが色々と登場し、イノシシ風船と化け猫には笑ってしまった。魔術師にシチリアの大公--人間も怪しいキャラに欠かない。
次々と起こる奇想天外⚡子どもが吹替版で見ればさぞ楽しいことだろう。

でも、お話の方は色々と含蓄がありそうで一筋縄ではいかぬ。語り手が変わると、当初予定されていた「本編」だけでは終わらない。語り方の巧みさが面白さを2割増ししているようだ。

後から知ったが、原作には少女(たち)は登場しないそうだ。また、後半の展開も映画のオリジナルらしい。どうりでなんとなく今どきのファンタジーぽい感じがした。
とはいえ、突飛な面白さは保証付き。82分という長さもちょうどよい。

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2022年5月19日 (木)

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」「ザ・バットマン」:歳をくっても青二才

220519a「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド
米国2021年

「ザ・バットマン」
監督:マット・リーヴス
出演:ロバート・パティンソン
米国2022年

最も能天気に始まった本『スパイダーマン』シリーズ、一年目は部活にパーティ、二年目は修学旅行、そして三年目は--一気に雰囲気チェンジ⚡ 能天気なお子ちゃまメンタルだった若者が、全てを手放し自己の確立と自立への道を歩むというシビアなものであった。

思いがけない邂逅と、全てを覚悟した最後の決断。ついにこれで学校も「卒業」だ。これまでのシリーズを知る人間には、涙と感動でスクリーンを見る眼が曇るのは必至だろう。

……とは思うものの、心の隅で「やり過ぎじゃないの?」とか「なんだかなあ」などと感じちゃったのも否定できぬ。そこまで畳みかけて感動させたいか??というのは言い過ぎかな。

やはりこれはスパイダーマンが本当に好きな人にこそふさわしい映画なのだろう。
私のように各シリーズを適当につまんで見ている人間には向いてないようだ。そもそも過去作復習するの面倒くさい、などと思っている段階で失格だ~。

それにしても豪華出演陣には目がくらむ✨ 一体これで採算がとれるのか(?_?)などと心配しちゃったが、公開するなり特大大大ヒットで、あっという間に取り戻せたらしい。
まあ、とりあえずウィレム・デフォーとアルフレッド・モリナのファンは見て損なしとだけは言っておこう。

ただ、クライマックス後の状態がどういうものなのか今一つよく分からなかった。少なくともIDは存在しているんだよね。そうじゃなきゃ不法入国者と同じになっちゃう。

それにしてもパラレルワールドにマルチバース💥両方揃ったらもはやなんでもありじゃないの、などと思ったりして。


220519b 続いて『ザ・バットマン』、SNS上の略号は「ザバ」だ。
これまでのバットマンは表の顔は推定年齢30代、富豪の軽薄なプレイボーイだった。しかし、この度のシリーズでは一転してバットマンなり立てホヤホヤのまだ2年。当人は、若くて資産があるのに暗い洞窟内で孤独に暮らすヒッキーの変人として市民に認知されている。
冒頭数分見ていると「あー、今度の主人公は鬱陶しいヤツだ」と悟れる仕組みだ。

出だしはサイコホラー風に始まるのだが、主人公の謎の解明方法は旧弊なハードボイルド式だ。つまり、怪しいと思われる関係者に突撃👊し、新たな方向を示唆する証言を得て、またその対象に突撃して新たな証言を--というのを繰り返していくのである。
これではいくらリドラーが謎を出しても甲斐がないだろう。

しかも相手がシリアルキラーだったのがいつの間にか社会に不満を持つテロリストになり、最後にはバットマンに個人的恨みを抱く●人になってしまう。一体お前は何がしたいんだ。
格差問題持ち込んで「持たざる者の不幸」と言っても、たくさん持ってる奴もやはり不幸で陰々滅滅とした顔をしてるのだからどうしたらいいのかね。

街は暗い割には普通にニューヨークにしか見えず、格闘シーンは妙にモサモサしている。これはわざとだろうか?

折角のパティンソンはマスクをかぶっている時は2割、かぶってない時も前髪のせいで5割ぐらいしか顔が見えない。困ったものよ(-_-メ) これでは『ライトハウス』の方がよほどたっぷりパティンソンを眺められるぞ。ヒゲはやしてるけどな。
リドラーやペンギンはほとんど顔が分からず、中身が誰でも変わらないのではとか思ってしまった(^^;

良かったのはゾーイ・クラヴィッツとジェフリー・ライトかな。
キャットウーマンのマスクは鼠小僧っぽかった。ネズミならぬ猫娘かっ=^_^=


以上の二作に描かれたような若いモンを生暖かく見守ってやれないというのは、自分がまだ未熟者だということであろう。猛省したい。

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2022年5月 9日 (月)

「愛すべき夫妻の秘密」:笑うべきドラマの笑えない事情

監督:アーロン・ソーキン
出演:ニコール・キッドマン
米国2011年
アマゾン・プライム視聴

アーロン・ソーキンの監督脚本最新作は日本では配信のみで劇場公開がなかった。米国では劇場でも上映されたが、賞レース参加のためだったようだ。
その甲斐あってか中心の3人が俳優賞にノミネートされた作品である。

個人的にはシットコム女優ルシル・ボールを主人公にした映画だというので是非とも見たかった。というのも、子どもの頃にTVで『ルーシー・ショー』は毎週やってて大好きだったのだ。また高橋和枝の吹き替えがピッタリ過ぎで、毎回欠かさず楽しみにして見ていた。もう懐かしさの極み✨だ。

しかし、アーロン・ソーキンであるがゆえにそう一筋縄ではいかない。
映画は彼女の主演ドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』のとある回が作られる一週間を舞台にしている。昔の時代なので、スタジオに客を入れてその前で演じて生放送する。脚本の検討から放送まで、それを一週間単位で繰り返していくのである。(過程が詳細に描かれていて面白い)

その問題の一週間に「危機」は訪れた。新聞が彼女に関するスキャンダルをすっぱ抜くのかもしれないのだ。それは「赤狩り」と「浮気」である。その二つに彼女とその夫(ドラマ内でも夫婦役を演じる)の過去の総てが凝縮されている。

才能あるが型破りで映画女優としては成功できなかったルシル、キューバ移民で苦労人だがモテ過ぎミュージシャンの夫。彼らは同じ家に暮らしながら完全すれ違い夫婦生活を送っていた。
その解決法が連続ドラマでの「夫婦共演」だった。彼女はそのために努力を尽くす。しかし、その関係が突然やって来た危機の下でどうなったのか、顛末を描くという次第である。

見始めて『アイ・ラブ・ルーシー』は夫婦出演なのに、どうして私が見てた『ルーシー・ショー』では「赤毛の未亡人」だったのかと最初疑問に思ったが、そういうことだったのかい(~o~)

迫りくる新聞発表のタイムリミット、脚本と演技の細部にわたってこだわりぬいた変更に次ぐ変更。そしておなじみ喋りまくるソーキン節の登場人物たち(字幕読むのが追い付かねえ~💦)。
加えて当時のTV業界が今では考えられないようなタブーを抱えていたのにもビックリだ。「妊娠」「出産」という設定は禁止、妊婦は登場人物になれない。「年下の夫」も「キューバ人」もダメ。
それらをぶち破ったのがルシルなのである。知らなかった(!o!)
キャサリン・ヘップバーン風な常にパンツルック、恐れを知らず妥協もしない。

ドラマに登場する「ルーシー」を演じるニコール・キッドマンはあまりにそっくりなので衝撃を感じたほどだった。ウン十年も前に見たTVの印象が脳内にまざまざと蘇ってくる。特にイタリアでブドウを踏むというネタで笑いを取る場面、ああいう感じである。
他に夫役バルデム、共演者役シモンズも好演。ソーキンより完全に役者の映画だ。

加えて、疑似回想ドキュメンタリー風の語りを入れる手法はかなり疑問だった。当人たちはとっくに亡くなっていて、役者が演じているのだからなんだかなあ。
邦題は見てみると「そういう意味で付けたのか」と理解はできるが、やっぱり訳わかんないタイトルである。なんとかしてくれ💢

それにしても米国でも若いもんは彼女のこと知らないだろう。やはり映画賞の投票者の大部分を占める高い年齢層向けか。

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2022年4月28日 (木)

「レイジング・ファイア」:香港アクションは不滅です!

監督:ベニー・チャン
出演:ドニー・イェン、ニコラス・ツェー
香港2021年

最近ではクライム・アクション、サスペンスの類いも香港より韓国映画の方が勢いが出てきていて、もはや完全に優勢になってきたのではと思っていた。
しかし間違いであった。お見それしましたっm(__)m

警部と元部下の対立、その原因となった過去の事件を背景に、ありとあらゆる種類のアクションてんこ盛りだ。ショッピングビルから狭い室内まで各種銃撃戦、スラム街の乱戦、下水道チェイス、さらに派手なカーアクション。
派手な爆弾事案があれば「ヒート」ばりの市街戦。これでクライマックスだ~っ--と思ったらまだまだ続くよ格闘肉弾戦。一年分のアクションをこれ一作で堪能した気分ですっかり満腹気分である。ごちそうさまです( ̄ーA ̄)フキフキ

さらに警察内部の不正&忖度がからむ。組織の大義名分と個人の正義との相克をどうするか、答えはあるようで無い。
そこに今の香港の状況への作り手たちの思いが浮かび上がってくるようだ。

ドニー・イェンのお肌がニコール・キッドマン並みにツヤツヤしているので、思わずスクリーンをガン見してしまった(^^;
ニコラス・ツェーの大胆にして神経質な悪役はお見事であった。
なお監督はこれが遺作とのことである。
爆音上映でもないのに、映画館の音が大きすぎてマイッタ。デカけりゃいいってもんじゃないのよ💢

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2022年4月17日 (日)

「フリー・ガイ」:黒メガネの目覚め

監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ
米国2020年
*TV視聴

正直あまり期待していなかったので、ロードショー時には見ないでWOWOWかツ●ヤに出てくるまで待つことにしていた一作。
ゲームネタの話らしいが、そもそも私はゲームをやらん人間だしなー。

そんなわけで期待値ゼロで見始めたのだが……

なんだよ、面白いじゃねえか~っ(>O<)

オンライン・ゲーム内で銀行員という平凡なキャラクターの男、いつも簡単に殺される日常を繰り返していたが、ひょんなことから自分がゲームのキャラクターだと自覚する。そして虚構と現実の双方で「危機」が起こりつつあることも知るのだった。

ゲームをやってる人なら色々と小ネタが分かるんだろうけど、全くゲームしない人間でも単純に楽しめた。
粗暴で巨悪なキャラクターを現実で操っている人間が全くかけ離れているのが笑える。特にチャニング・テイタム扮する強面傭兵集団ボスの実像が情けなさ過ぎ(;・∀・)

そもそもなぜ男が真実に目覚めたのかという謎解きがなるほどと納得し、発生した「恋」の行く末をどうするんだと思ったら、そういう風に解決するのかと感心した。アクションとドタバタ展開だけじゃなくて、隠しメッセージもあって鑑賞後感はスッキリ&ポジティヴだった。
終盤の目まぐるしいゲーム世界の映像も鮮やか。
平凡さを出したレイノルズは好感度高い主人公。ジョディ・カマーはゲームキャラとリアル人間の差をよく表していた。

原作のないオリジナル作品で大ヒットになるのは最近では珍しいそうである。よく出来ている。
ところで疑問が一つあり。ゲーム内の展開は毎日クリアされるが主人公の記憶だけ残っているという展開だよね。
ということは、彼は毎朝誰かをぶん殴って黒メガネを入手しているのかな(^^?
それからジョン・カーペンターの回顧上映の予告を見ててふと思ったのだが、「黒メガネをかけると真実が見える👀」というのは『ゼイリブ』が元ネタなのだろうか。

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2022年4月 5日 (火)

「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」「皮膚を売った男」:アート界の一寸先は金

220405a「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」
監督:アントワーヌ・ヴィトキーヌ
フランス2021年

「皮膚を売った男」
監督:カウテール・ベン・ハニア
出演:ヤヤ・マヘイニ
チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビア2020年

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』はカネにまみれた美術市場を題材にした仰天のドキュメンタリーである。

突如、出現したレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ」。
なぜか米国の民家の廊下に飾られていたのが「発見」され、2005年にニューヨークの美術商が13万円で購入。「修復」して鑑定を行ったものの結果は曖昧なまま真作として公に英国の「ダヴィンチ展」で展示される。

そのまま様々な国の色んな人物が絡んで値段がどんどん上がっていく。
怪しいと判断してサザビーズが扱わなかったものを、クリスティーズが現代アート路線のような派手な宣伝をして競売にかける。
裏付けもなく確実ではないものに大金を出す。最後の落札額はなんと510億円💴
証言するのは、美術商、研究者、ジャーナリスト、オークション会社、学芸員、匿名の(モザイク入り)フランス政府関係者などなど。もはや虚像でしかない価値に振り回される様相を、ドキュメンタリーとして確実に洗い出していくのであった。

うさん臭い人物が次から次へと登場するのがたまらない( ̄▽ ̄)
『テネット』にそっくりなロシアの実業家(まさにこれが「オリガルヒ」というヤツであろう💥)も一時の所有者となる。自由港を所有してそこの倉庫に美術の収集品を保管してあるって、そのまんまじゃないですか。モデルにしたのかしらん。

結局、今あの絵がどこにあるのかは判然としないそうだ。
名作も一寸先は闇。アートの世界は奇々怪々⚡転がる絵画に苔は付かない……けどマネーは増える。もうバカバカしくて面白い。

ところで、過去に紹介した『アートのお値段』というドキュメンタリーで最後に登場するのが実はこの「サルバトール・ムンディ」だった。
これを見た時に投機の対象となる現代作品をなぎ倒して最高額を得たのがこの「古典」作品だったというオチで驚いたのだが、実は現代アート売買の手法を取っていたというのならさもあらん、である。

220405b
さて同じ現代アートつながりの『皮膚を売った男』、こちらは劇映画だ。

シリアで迫害を受け難民となってレバノンに逃亡した男が、なんとか恋人のいるベルギーに行こうとする。その時、アーティストから奇抜な申し出を受ける。背中にアート作品としてのタトゥーをして、自ら「美術品」となってビザを取得するというのである。
もちろん、美術展で「展示」される義務など負わなければならない。

人間ならダメだけど芸術作品なら移動できるとはどういうことだろうか。現代アートと難民と自由の問題に鋭く迫る着想だ。

……ではあるが、発端は辛辣でもその後の展開はなんだかパンチに欠けている。見てて消化不良な気分になった。コメディタッチで世界の矛盾を皮肉る作品と解釈すればいいのかね。

実際に存在する(人間の背中にタトゥー)作品によって着想したらしい。その作者自身も端役で出演している。従って、現代アートの在り方にかなり親和的である。
アーティストの大半は詐欺師同然などと思っている人間にとってはやや肩透かしな内容だ。

ただ美術館のシーンなどは撮影の工夫が凝らされ非常に美しい。モニカ・ベルッチが特出。
アートの未来を躊躇なく信じられる人向け。

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