映画(最近見た作品)

2017年11月14日 (火)

「セールスマン」:ショウ・マスト・ゴー・オン それでも芝居は続く

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監督:アスガー・ファルハディ
出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ
イラン・フランス2016年

『ある過去の行方』をフランスで撮った後、再びイランへ戻ったファルハディ監督、この新作はトランプ大統領の移民政策がらみで、アカデミー賞の外国語映画部門受賞の際にも話題になった。

冒頭、マンションの倒壊事件が起こってその住民だった夫婦が、住居探しを始める。知り合いに紹介してもらったマンションの一室に入居するが……前の入居者の荷物が残っていたりなど、どうも不審さが漂う。

そんな時に妻のレイプ事件が起こる。夫はいきり立つが、妻は警察には行きたくないと言い張る。やり場のない怒りに彼は自分で犯人探しを始める。

夫婦の思惑は常に行き違いすれ違い、修復不可能なほどの亀裂が生じる。二人は夜、所属する劇団でA・ミラーの『セールスマン』でやはり夫婦役を演じているが、劇の顛末が二人の関係を暗示しているのだろうか。

見てて、息苦しい((+_+))つらい(>_<)倒れそう_(:3」∠)_
唯一の息抜きは、女優の子どもと子猫(カワユイheart01)が登場する場面ぐらいだろう。

とはいえ、教師の夫の授業風景、乗合タクシーでの会話、冒頭の倒壊場面と終盤が重ねあわされていること(これは他の人の指摘で気付いた。ボーッとしております(^^;ゞ)など、脚本も担当のファルハディ監督は用意周到に亀裂を浮かび上がらせていく。

ネットの感想で「夫の怒りは妻を思っているのではない。彼自身の尊厳が傷つけられたからだ」という意見があって、これは大いに納得だった。

サスペンス場面の描写もなかなかにコワイ(ドアが開くところとか)。チラシに使われている場面も、緊張を醸し出す画面の分割具合が完璧である。ヒロイン役のタラネ・アリドゥスティが「監督は完全主義でキビシイ」と語っていたが、なんとなく分かるような。
ただ、唯一の問題は犯人像である。冷静に考えればとても犯行を実行できるとは思えないんだが……。

さて、妻が警察沙汰を断固拒否したのは、イスラム社会の厳格さが原因だという意見を幾つも見かけた。しかし、本当にそうだろうか?
--ということで、この手の犯罪対処に関して「先進国」でありそうな米国の事例を見てみよう。
『ミズーラ』(ジョン・クラカワー)によると、性暴力にあって警察に届け出る人の割合は20%だという。つまり残りの80%は届け出ていないのである。なお、この本は大学町でフットボールのスター選手によって起こされたレイプ事件を扱っている。もちろん周囲からは非難轟々であった……訴えた女性の方が。こんなんではとても訴える気にはならないだろう。

一方、日本ではとある統計によると被害にあって他人に相談する人は半数以下。さらに警察に届けるのは4.3%だという。
全くもって、この映画は他人事ではないのであるdanger
そういや、大昔に友人が「レイプにあっても絶対警察には行かないng」と断言していた。その時理由は聞かなかったけど。(警察への不信か)

イラン国内問題としては、むしろ劇団の内部事情の描写の方が厳しい。検閲官が来るとか、シャワーを借りてたという設定の隣人女性役のセリフが見た目とかけ離れていたりとか、辛辣である。
(この文章を書いてて気づいたんだが、「シャワー」の部分も事件と芝居を重ね合わせてるのかね?)

トランプ騒動の余波で賞が取れたなどという意見もちらほらあるが、いずれにしろファルハディは次作も要チェックな監督であるのは間違いない。


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2017年10月 9日 (月)

「ワンダーウーマン」:ファイト・アンド・ラブ 戦闘美女参上

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監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット
米国2017年

ワンダーウーマンと言われてもアメコミ関係は無知な私ゆえ、名前聞いたことあるぐらいの状態で見に行った。。
霧に隠れた海の中の王国、そこは女だけの国だった(!o!)--となると、当然疑問なのはどうやって生殖活動を行うのかということである。アマゾネスのように外界へ出て男を見つけるのかと思いきや、ギリシャ神話の人物である島民は大人ばかり、唯一の子どもがヒロインのお姫さまダイアナなのであった。

さて、ある日そこに流れ着きた~る男ひとり~ぃnotes 時は第一次大戦の真っ最中、スパイ任務中の男の言葉を信じて、悪(ドイツ軍)と闘うために彼女は外へ出ていく。
ここで「ちょっと、これってオボコ娘を悪い男が騙す手口じゃないの?大丈夫かしらん」と、突如おばさんモードになって心配になっちゃう。

ロンドン経由で欧州前線へ。ムサイ男たちがゴロゴロいる過酷な戦場に、強い美女一人……って、どこかで見たような気が(?_?) と思ったらマンガの『キングダム』じゃありませんか。
その後は大音響とCGバリバリのアクションが連続して行け行けドンドンon 退屈している暇もなく、約2時間20分アレヨアレヨと進行する。特に前線の村での大活躍は爽快の一言だ。思わず「やった(^o^)丿」ポーズをとりたくなる。

しかし、「戦う女」というよりは「お嬢さん、大暴れpunch」といった風情で今一つ「軽い」のはどうしたことよ。そういや、『スパイダーマン:ホームカミング』も軽かったのを思い出した。軽いのが当世風なのか。
おまけにラスボスが意外な人物--ではあるがあまりに意外過ぎて迫力がないような?「ええ、そうなんだ、ふーん(゜_゜)」てな感想しか出てこない。
「人間こそが悪」と言ったって、根本的な悪の描写はないから、なんだかお題目だけな気がしてしまうのも困ったもんだ。

一番の問題は、主人公カップル以外パッとしたに美男美女がいないこと。いや、別に娯楽映画で中心キャラクターが美男美女なのは当然なんだけど、美しくなくとも、思わず目を引くカッコエエ奴とか個性が強い人とかロクでもないが憎めないキャラとか--印象に残る人物がいないのだ。過去の様々な人気シリーズなど思い返せば、そのような味のある脇役が必ずいるんだけど、この映画にはいない。その点は非常につまらないと思う。

主役のガル・ガドットは美人で長身、プロポーションも申し分なく、どこから見ても映える。しかも美しいというだけでなく愛嬌のある顏だちなのがよい。これでイスラエルで兵役につき、パレスチナ問題で暴言を吐いたとはとても見えないが、愛国美女なんですかねえ。
おかげで相手役のクリス・パインはやや影が薄い。サービスショット(ファン向け?)が目に付いたくらいか。

さて、世評ではこれがフェミニズム作品として評価できるという意見が多数派のようだが、正直そうとは思えない。闘う強い女が登場したからといって、それだけで評価が上がるわけではない。「強い女」が登場する作品なら、それこそ『キングダム』や『ナウシカ』だってそうだろう。しかし、これらはフェミニズム批評の俎上に上がっても、作品自体が評価できるかは別である。

悪役の(女)科学者の描き方もかなり違和感あり。原作がそうなのかも知れないが、ちっこくて黒くてコソコソしてて小ネズミのようで、主人公とは正反対。おまけにドイツ軍の将軍になでられて、まんざらでもない顔をするのもどうか(他にも「男からの評価を気にする」という描写あり)。正統派リケジョ悪役なら「同情するなら研究費出せdollar」ぐらいに気を吐いてほしいもんである。


予告で「ジャスティス・リーグ」とマイティ・ソーの新作をやっていたが……なんかこれからは「団体戦」が流行なんですかね。


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2017年9月27日 (水)

「スパイダーマン:ホームカミング」:ソフト・ランディング クモの糸よりも軽く

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監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド
米国2017年

過去にトビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版、と見てきたスパイダーマン、今度は15歳という年齢にふさわしい童顔のトム・ホランドが主役である。
その前に彼は『シビル・ウォー』に登場していた。その流れで、アイアンマンことスタークも関わってくる。

そこでは、メイおばさんへニヤニヤと色目を使いながらスタークが接する場面があって、その方向で進むかと思いきや、どうもそうではないらしい。何せ冒頭からメイおばさんが「あの人どうも好きじゃないわ(-"-)」とクサすという次第。扮するマリサ・トメイのエロ気爆発kissmarkかと予想していたのも大ハズレとなった。

いかにスパイダーマンになったかというような説明はすっ飛ばして、主人公ピーターは日夜ご近所の自警団活動に邁進中。張り切り過ぎてご近所迷惑になっている。
学園生活は前の二つのシリーズと比べると、皆さん優しくてほとんど苦労なしという状態だ。
さすが現代のニューヨークだけはあって、生徒たちは多様な人種構成になっている。ピーターをいびる金持ち息子がインド系(IT長者か?)というのもご時勢であろう。
悪役がスタークに仕事を奪われた中小企業の経営者という設定も、何やら今どきの景気を反映しているようで今一つ意気が上がらない。

彼は保護者監視付きのお子ちゃまなので、遠方で敵の陰謀があると判明しても行くのは簡単ではない。自分で車を駆って--というわけにも行かず、「そうだ、部活の大会をやる場所じゃないかっ(^o^)b」と部活のバスで突進だ~bus
悩みはヒーロー蜘蛛男としてなかなか認めてもらえないことと、気になる女の子がいることぐらいか。誠にお気楽な調子で、「デッドプール童貞版」と評されても致し方あるまいよ。

しかも、意中の彼女であるリズ嬢がどうしてピーターを気に入るのか不明。同じ部活をいきなりやめちゃったり復活したり、部員が危機に陥ってる時にいなかったり、さらに大事な学校行事のパーティに誘ったのに途中で姿をくらますという大失態ng ビンタ10回くらっても文句は言えません。
こんなどうしようもない主人公を許す彼女は寛容だのう(・o・) というより、そんな女子がいるんかねbomb 甚だしく疑問である。

もちろん、意外な展開があったり、怒涛のアクションシーンもあるし、感動の友情場面やスタークとのゴタゴタなどテンコ盛りであるが、やはり軽量級の印象はぬぐえない。

一番ガッカリしたのは、クモの糸で飛び回るスパイダーマンならではの躍動感を味あわせてくれるシーンがなかったこと。これまでのシリーズにはあったのにね。それとも、こちらが慣れちゃったのかしらん。
加えて、蜘蛛男が出没するのは当然夜が多いのだが、画面が暗くって何が起こっているのか見にくいことが結構あった。何とかしてくれい。

ところで、キャプテン・アメリカがお尋ね者なのに州の方針で(?)学校で見せる教育ビデオに出てるってのはどういうこったいsign02 州知事がファンなのか(^^?)


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2017年9月10日 (日)

「人生タクシー」:ノー・ストップ 赤信号は完全無視

監督・出演:ジャファル・パナヒ
イラン2015年

国から監督禁止命令を受けたイランの映画監督が「失業中につきタクシー運転手」という設定で、自ら主演した疑似ドキュメンタリー風作品である。
すべて映像はタクシーの車中カメラか、途中で乗ってくる姪っ子が持ってるカメラ(あるいはスマホ映像も)からのものになっている。

当然色んな人が乗ってきて、様々なことを喋る。見てて驚いたのはイランのタクシーというのは乗合になっていて、座席が空いてればどんどん途中で客を乗せてしまうのだ。で、その客同士が討論始めたり、怪しいDVD(といってもハリウッド映画だが)密売始めたり……。交通事故で瀕死の重傷の人間を病院まで運んだりもする。

それらの会話の中に監督の過去の話や、映画製作の規制(かなりバカらしいものが多い)や、国への批判がチラチラと出てくる。特に小学生の姪っ子が怖いものなしでキビシイことを言いたい放題なのが笑える。
こんなこと言って大丈夫なのか(?_?)と思ったら、やはりイラン国内では上映できないとのこと。

ドキュメンタリー仕立てではあるが、冒頭が強盗の話から始まりそれを最後まで引っ張っていってちゃんと落ちがあるので、きちんとしたシナリオによって撮っているのが分かる。お見事m(__)m

冒頭に日本のドキュメンタリー作家とアーティスト(?)による数分間のコント風な映像が上映されたが、正直「日本、平和だなspa」という感想しか浮かばなかった(-"-)

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2017年9月 9日 (土)

「LOGAN/ローガン」:ローンウルフ 子連れ狼、国境の北

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監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン
米国2017年

「ローガンが老眼」……誰でも思い浮かぶギャグ通りの設定である。往年の「X-メン」は今いずこ。ウルヴァリンことローガンはプロフェッサーXと町はずれに隠れ住み、ショボくれた運転手として日銭を稼ぐ毎日である。というのも教授は痴呆症で、薬がないと卓越した超能力者だけに非常なご近所迷惑になってしまうからだ。
老々介護みたいな話で暗いですなあ(ーー;)

さらに、研究所から逃げ出してきた少女が自分と同じ能力を(!o!) もしかして自分の「娘」かsign02
迫る追手に彼らはカナダ(多分)国境にあるという「約束の地」を目指す。
元々人種差別問題と重ねて語られてきたこのシリーズゆえ、この設定がトランプ以後を予言していたということでも評判になったっけ。
行く先々で不幸と暴力をまき散らす(結果的に)一行、ますます暗い展開だ。

作中で『シェーン』が引用される通り、全体的に西部劇的雰囲気が濃厚。あるいは浪花節的とも言えようか。
まさに一匹狼として生きてきたウルヴァリンが「家族」を見出す過程は泣けるし、次世代に希望を託しつつ終わるラストは涙ものであるcrying
アクションシーンもテンコ盛り。そちら方面も文句な~し。

ヒュー・ジャックマンの一世一代の当たり役、有終の美を飾ったshineと言えるだろう。17年間ご苦労さんでした(T_T)/~~~ 願わくば、次はこれ以上の当たり役を見つけて欲しいところである。
パトさんことP・スチュワートは、まだらボケの超能力者という難しい役どころをガッチリ演じきっております。できればまたイアン・マッケランと美爺共演してくれんかのう(個人的願望)。
子役の少女は凶暴さをいかんなく発揮。セリフは少ないが「子狼」役として適役であった。

さて、少女が教授とホテルで映画の『シェーン』を一緒に見て、そこから正義を学ぶというくだりがある。
出たthunder定番「映画で正しいことを学ぶ」場面。よく見かけるが(古くは『グレムリン』とか)私はひねくれ者なんでホントかな~なんて思っちゃう。
映画から正義を学べるなら、悪事だって学べて実行できるのではないかね。
ホテルのテレビではたまたま『シェーン』をやってたからいいけど、これが別の映画だったらどうなるだろうか。

例えば『ブルー・ベルベット』→教授「親に隠れてこれを見に行って、あまりのヘンタイぶりにハアハア(^Q^;)したもんじゃよkissmarkウヒョヒョ」
あるいは『時計仕掛けのオレンジ』→教授「上映禁止運動が起こっておったが、友人たちと見に行ってコーフンして、帰りには通りがかりのジーサンを殴り倒したなあ。まあ若い頃はそんなもんじゃ」
おいおい(@_@;)違う物語になっちゃうよ。


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2017年8月16日 (水)

「メットガラ ドレスをまとった美術館」:ゴージャス 汗と涙と交渉と

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監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター
米国2016年

結論から言うと非常に面白いドキュメンタリー映画だった。ファッション界やアートに興味のある人は見て損はしないだろう。

タイトルのメットガラとは、米国はニューヨークのメトロポリタン美術館で年に一度開かれる服飾部門の資金集めイベント&パーティのことだそうだ。展覧会と連動して行われる。2016年には15億円集めたというからすごい。
ヴォーグ誌の編集長アナ・ウィンター(美術館理事)とそのスタッフが全面協力する。

映画で取り上げられた2015年の展覧会テーマは「鏡の中の中国」、ファッションにおける中国のイメージを取り上げるということで、まず事前の折衝を山のようにしなければならない。それらを全て仕切るのが服飾部門のチーフであるA・ボルトン、40代ちょっとでまだ若い人だ。

館内の中国部門の責任者は所蔵品が単なる背景の飾りとして使われないか心配で、イチャモンを付ける(でも、そもそも「イメージ」としての中国なんだから無理では……)。政治的に微妙なので中国政府にも直接談判、在米中国人会の了解も得る。色々あって大変だ。
オリエンタリズムに陥らないか、差別と言われないかという不安もある。
ここで企画に参加している映画監督のウォン・カーウァイの説得が、かなり功を奏していた。貫禄ですかねflair

前段で、そもそも服飾が美術であるかどうかという問題が取り上げられていた。中国部門から見れば、やってることは派手でも数千年もの歴史を持つ美術品と比べられてたまるかと思うだろう。

一方、パーティはステージの出演者や招待客の選定、そして席順決めも大変だ~。会場のデザインも難しい。アナ・ウィンターが決めては変えていく。
彼女は『プラダを着た悪魔』で有名になったが、見ていると実物はあのイメージとはかなり異なるようだ。(インタヴューでその話題も出る)

オープニング前夜(いや、当日早朝か)も会場のセッティングは終わらない。一人黙々と展示されたドレスの裾の位置をしつこいほどに修正するボルトンの姿を、カメラが延々ととらえる。その背中には誰も踏み込めない執念のようなものが見える。

果たして展示もパーティもうまく行くのかsign02 分かっていても、見ててドキドキしてしまう。信念を持ったプロフェッショナルの仕事を見せてもらったという気分だ。
とにかく見てて飽きることのない緊張感が続く。ドキュメンタリーとしてはナレーションを一切使わない形式で、密着取材と編集の技が発揮されているといえよう。

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2017年8月13日 (日)

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」:カミング・ホーム 君は一人じゃな

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監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック
米国2016年

マンチェスター……イギリスの話なのかなあ、などとボンヤリ思ってたら大間違いng 「バイ・ザ・シー」も入れて一つの町名で、米国が舞台なのであったよ。

ボストンでしがない一人暮らしをする男、兄が急死して故郷の町に戻ると、高校生のおいっ子の保護者になるように求められる。しかし、彼にはこの町で暮らしたくないいきさつがあったのだ。
その「過去の事件」が回想をまじえつつ徐々に明らかになっていく。

そんな過程が、極めて淡々とゆっくりと美しい港の風景と共に描かれていく。あまりに淡々としている上に137分という長尺なので、途中で寝るヤツがいても不思議ではない。とにかく長いのである。
甥はバンドをやったりして高校生ライフを楽しみ友達も多い(父親が死んだばかりなのに鳴り物鳴らすというのはちょっと驚いた)。しかし、それは事件が起こるまでの主人公も同様だったのだ。そのような生活は彼にはもうない。

彼は立ち直れぬままであり、周囲の人間(兄の元奥さん、自分の元妻)も立ち直っているようで、実は立ち直っていないのが明らかになっていく。
私は枡野浩一の『くじけな』という詩を思い出した。

「くじけな/こころゆくまで/くじけな/せかいのまんなかで/くじけな」

他にも「二人でいると人生は二倍淋しい」とか「あしたがある/あしたがあるから困る」などと、読んでいると甚だしく落ち込みのスパイラルに陥る。そんな世界である。

他の人の映画評で、この作品に登場する「善意の隣人」について書いているのを読んだ。フィクションでは珍しくはないが、果たして現実にはそのような「隣人」が存在するか?というような趣旨だったが、そういえば『裁かれるは善人のみ』にもそのような隣人が登場する。もっとも、主人公が不幸な目にあう原因に、その隣人が一役買っているのだが……。

そう思い返してみると、主人公と隣人夫妻との関係、親を失った少年に対して彼らがラストで取る行動、頻繁に挿入される海の光景wave--など、『裁かれる~』とかなり似ていることに気付いた。テーマや作風は全く異なるけど。どこか影響受けているんだろうかね。

ケイシー・アフレックはこの演技でアカデミー賞の主演男優賞をゲットしたが、うーむ、どうだろうか(?_?; 悪くはないけど、同じくノミネートされたA・ガーフィールドやヴィゴ・モーテンセンと比べて図抜けているというわけでもない。
むしろ、甥役のルーカス・ヘッジズ(やはり助演男優書にノミネート)がよかった。若いんで今後の注目株であろう。
お懐かしやマシュー・ブロデリックが出演。見てた時は分からなかったですよdash

音楽はヘンデルやパーセルなど、なぜかバロック音楽が使われているが、使い方が唐突でしかも音量がデカい。なんなんだろうsign02


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2017年8月 6日 (日)

「ハクソー・リッジ」:サイレンス・ソルジャー 独立愚連衛生兵

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監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド
オーストラリア・米国2016年

『沈黙』に続き、再びガーフィールドがいぢめられる役に(>y<;) 思えば『アメイジング・スパイダーマン』でも、いじめられっ子の高校生役だったからその手の役が似合うヤツなのであろうか。

主人公は第二次大戦で兵役を志願するも、宗教上の信念から戦闘行為は拒否。軍法会議もはねのけて念願の衛生兵になる。そして向かった先は激戦地の「ハクソー・リッジ」……。
これが実は沖縄の前田高地だというのを、日本公開に際し隠して宣伝していたということが話題になった。隠しても、実際見に行ったら分かっちゃうのであまり意味はないと思うけど、事前に公開反対運動が起こったりすると困るということか。

それはともかく、戦闘シーンは相当な迫力。『プライベート・ライアン』の冒頭部分が延々と続く感じで、もういつ弾丸飛んできて当たってもおかしくない気分になる。おまけに人の手脚が容赦なくimpact吹っ飛ぶんで、その手の場面が苦手な人は避けた方が吉であろう。

約140分という長さも含めてメル・ギブソンの監督としての力技発揮というところか。激しい戦闘にさらされた兵士が陥るパニック症状で、死の淵をのぞいたような眼になってしまうというのを、映像で初めて見た。

役者は父役のヒューゴ・ウィーヴィングに注目だろう。ヴィンス・ヴォーンの鬼軍曹は、過去の同様な映画に比べるとどうしても「鬼」度に欠けるようで。

なお、私の父はまさに衛生兵だったが、それは体格が貧弱だったからだそうだ。日本軍では衛生兵とはそういう者がなったらしい。

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映画短評5~6月期

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★「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(字幕版)

監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット
米国2017年

前作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をあんまり気に入らなかったのに、今度こそは面白いかな~と思って見に行ってしまった。
で、やっぱり気に入らなかった(>_<) なんたることよspa

どうも冒頭の、他のメンバーが闘う脇でグルートが踊ってる場面からして、まずノレない。その後は大宇宙規模の話が「家族」の絆と同じレベルで展開する。
色んなものがテンコモリ過ぎて、最後は泣かせるけど消化不良になりそうだ。

カート・ラッセルがこちらでは大物中の大物を演じている。こういう役が回ってくる風格あるベテラン役者の域に達したのかと思うと、感慨深いものがあるのう。

フリートウッド・マックの『ザ・チェイン』が肝心な場面でここぞと多用されているけど、あれって男女間のドロドロした妄執の歌なんでは……(~_~;)

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★「スプリット」(2017)

監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカヴォイ
米国2017年

シャマラン監督、久々の復調up 予告も面白そうだヽ(^o^)丿 23重人格の男が女子高生を誘拐だって!

と大いに期待して行ったが、見事に裏切られたのだった。
前半はJ・マカヴォイの多重人格芸炸裂flair見事過ぎてあっけにとられるというか、ちょっと笑っちゃうけど面白かった。
後半はドタバタと展開し意外な方向へ--果たしてこれが私の見たかったものなのであろうか(?_?)なんて思っちゃった。

そして、ラストは過去作の『アンブレイカブル』へとつながる。なんとこれは三部作の2作目になるんだってdanger そんな話は聞いとらんぞ~(-"-) いやもうどうでもいいです。

ヒロインと共に誘拐される二人の娘っ子のうちの一人が、すごく演技が下手くそだった。なんとかしてくれと言いたくなるレベル。オーディションしたんだろうし、なんで採用したのか分からん。


★「オリーブの樹は呼んでいる」

監督:イシアル・ボジャイン
出演:アンナ・カスティーリョ
スペイン2016年

ケン・ローチ作品の名脚本家として知られるポール・ラヴァーティの脚本を彼の奥さんが監督した作品、ということで興味を持って行ったが、いや~久々にどうしようもなく詰まらない映画を見たbomb

もう、始まって10分ぐらいで「××でやってる○○○を見に行けばよかった」とか「△△で※※※もやってたっけ」などと思い浮かべては後悔する羽目になったannoy
どう詰まらなかったのか説明する気にもならないぐらいである。
今年のワースト映画決定。もし今年中にこれ以上詰まらないのを見たとしたら、豆腐の角に頭打ち付けたくなるだろう。


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2017年8月 1日 (火)

「バーニング・オーシャン」:デンジャラス 燃える水平線

監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ
米国2016年

2010年メキシコ湾原油流出事故の実録ドラマ。石油の掘削施設が破損して火災になった揚句、噴出&流出し、環境汚染もひどかった。
親企業と複数の下請け会社が同じ施設内にいて、事故の予兆があってもなかなか連携できない状況が描かれる。
あと不思議だったのは、事故がひどくなっても非常放送とか警報が入らないこと。冒頭の裁判の場面で言及あったっけ(?_?) 最初のトラブルで責任者に連絡もしないし……danger

安全をないがしろにして進行を早めたい親会社とか、後で責任を問われるとマズイので決定的な処置ができなかったり救難信号出せないとか、こういうのはいずこの国でも同じだなあと思った。

主人公の電気技師を始め、登場人物のほとんどは実在の平凡な市民なので、そちらの方面での盛り上げは無理(人間関係は丁寧に描かれている)。よって終盤の災害場面が最大の見ものとなる。
一旦事故が始まると画面炸裂impact何が起こっているのか見てて分からない。実際、その時現場にいた人もそうだったのだろう。
施設全体が燃え上がる場面はものすごい迫力で、思わず口アングリ(@O@)状態だった。

主役のマーク・ウォールバーグは事故を生き抜いた強さと共に弱さも見せる男を熱演。しかし、悪役を一人で担う親企業の上司ジョン・マルコヴィッチと、親方風威厳を見せるカート・ラッセルの二人に全てを持って行かれたようである。
ラッセルとケイト・ハドソンの親子共演も話題になりましたな)^o^(

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